第35話 勝利の凱旋!
「マル!!」
レオンのパーティーが駆け寄ってくると俺は目を逸らした。
お姫様抱っこのままだからな、恥ずかしいんだよ。
「まさかマルが倒したのかい?」
「あーいやまあそうとも言うしそうでもないとも言える」
確かに俺は魔物のリーダーを倒した。
紛れもなく俺の命懸けの一撃が致命傷になった。
ま、その後ディーナさんの助けがなかったら本当に死んでたけど。
「マル!無事か!!」
「あ、サラスティさん。無事っすよ」
「馬鹿者が!なんださっきのは!!」
開幕早々ブチギレられた。
サラスティさんの剣幕に驚いたのかレオン達は黙ったままだ。
「あれはそのー、人間ミサイルみたいな?」
「みたいな?ではないわ!私の弟子が死んだかと思ったではないか!」
弟子?弟子になってたのか俺?
「心配かけさせよって……罰として明日から宿舎の掃除だ!」
「ええっ!?なんでなんすか!魔物の大群を追い払ったんですよ!?」
「魔物を追い払ったことには感謝している。しかし、命を粗末にすることは我が騎士団では教えていないぞ」
あーなるほど。理解したわ。
俺が命をなげうって魔物を倒しに行ったから怒ってるんだな。
なんだ、サラスティさん優しいじゃないか。
俺がヘラっと笑ったせいでサラスティさんの拳が俺の脳天を揺らした。
「いでぇ!」
「鉄仮面殿が駆けつけたから助かったものだぞ。あのまま天から墜落していたら肉片が辺りに散らばっていたところだ」
「へい……」
「鉄仮面殿、感謝する。我が弟子を――」
「マルは私の弟子だ」
お?なんだなんだ?
サラスティさんとディーナさんの間で見えない火花が散ったぞ。
まさか!
俺を取り合って……。
ディーナさんは俺をその場に降ろすとサラスティさんと言い合いを始めた。
「マルは私が最初に出会った。つまり、私の弟子だ」
「いや鉄仮面殿。私がいつも彼に稽古をつけている」
「それなら私もこないだ稽古をつけてやった」
「ほう?しかしマルのあの武器は私が贈った物だ」
「むっ……だが私と出会っていなければマルはスライムに殺されていた。つまり命の恩人だ」
「グッ……しかし今回大きな功績を残したのは私の贈った武器のお陰ともいえるのではないか?武器もないマルはただの雑魚だ」
ちょっと悪口出てきてんな。
このまま続けさせててもいいのか?
「確かに彼は雑魚の中の雑魚だ。幻惑の大草原で私と出会っていなければ今ここにマルはいなかっただろう」
「ふむ……だからこそ私と共にいる方が安全なのではないか?私ならマルが危機に陥っていても騎士団を動かせる。その点鉄仮面殿は冒険者であるが故に常にマルを見ていられないだろう」
「それはそうかも知れないが……私も本気を出せば国を動かせる」
「流石にそれは無理があるぞ鉄仮面殿。貴殿は白金級の冒険者だが、国を動かせるほどの権力はない」
雑魚雑魚言われすぎてげんなりしてきた。
そろそろ言い合いも終わってほしいなぁ。
「とにかく!弱すぎるマルは私が面倒を見る。貴殿は冒険者業が忙しいだろうからな」
「いや、それには及ばない。当分近隣の依頼しか受けるつもりはない」
「いやいや、白金級ともなれば指名依頼が舞い込んでくるだろう?その点騎士団長である私なら手が空いている事のほうが多い」
多分それサラスティさんが書類仕事サボってるだけだと思うけど。
「騎士団長ならばマルなんかより他に見てあげなくてはならない者が多いのでは?」
「問題ない。ロナルドがいる限り」
ロナルドさん可哀想に。
サラスティさんに仕事を押し付けられているんだな。
「まあまあお二人とも一旦落ち着きましょう。特にサラスティ殿。部下の方々も見ていますよ」
見るに見かねたレオンが二人に割って入るとようやく言い合いは止まった。
レオン流石だな。
割と二人とも気迫があったから俺だったら真似はできねぇよ。
落ち着いた二人とレオン達と共にパスィーユの街へと戻ると、大歓声に包まれた。
今回ばかりはいくら強力な冒険者や騎士団がいたとしても抑えきれないのではないか、そう思っている住民が多かったようで、騎士や冒険者の姿を見て手を振っていた。
「凄いですね……これだけの歓声、受けたことありませんよ」
「まあやり方は気に食わなかったが今回はマルの手柄が大きいからな。手を振り返しておけ」
サラスティさんに言われた通り手を少し振ると住民たちが同じように返してくれた。
気分がいいなこれ。
なんだか英雄の凱旋みたいで。
冒険者ギルドに戻った俺達を出迎えてくれたのはギルドの職員だ。
レオンを筆頭に扉を開けるとワッと歓声が沸いた。
「魔物の脅威は過ぎ去った!我々の勝利だ!」
「「「「「おぉぉおぉ!」」」」」
これが勝利の凱旋ってやつだろうな。
一丸になって問題を解決するってのは気持ちがいいぜ。
「魔物の群れが一気に引いていったのはなんだったんだ?」
冒険者の誰かがそう口にすると、ざわめきが広がる。
魔物のリーダーを倒せば群れが引くことはみんな理解しているが、数千もの魔物の群れを突破し一番奥にいるであろうリーダーを倒すのは簡単な話ではない。
「そういや、遠くで何かが降ってきたのを見たぞ」
「あっ!私もそれ見たわ!凄い速さで落ちてきてたわよね」
「人っぽかったけど何か持ってたようにも見えたな」
「確かに。槍?か何かだったと思う」
話題は俺へと移る。
ここでそれは俺だぜって言えたらかっこいいと思って口を開きかけたと同時に俺は口を閉ざした。
「でもその後見たか?鉄仮面にお姫様抱っこされてたぞ」
「私も遠くから見えた!男の人っぽかったけど」
「姫様抱っこ?なんだそれ、詳しく教えてくれよ」
口を閉ざしたのには理由があった。
あの恥ずかしい記憶が蘇ったからだ。
俺だぜ!って元気よく手を上げていようものなら、恥を晒すところだった。
結局誰が降ってきたかは分からないが、その誰かが魔物のリーダーを倒したと結論づけたのか、話題はまた変わる。
「レオンさんも凄かったぞ!」
「だよね!流石は英雄級!私たちみたいな一般冒険者とはわけが違うのよ!」
「一撃で魔物が数十体吹き飛んだよな!」
「いやいや!百体は超えてただろ!」
次の話題は一番目立っていたレオンに移った。
いやぁ、あれはかっこよかったからな。
俺もあんな派手な魔法とか使えたらなぁ。
「レオン、大人気じゃねぇか」
「割と派手に動いたからかな。今回一番活躍したのはマルなのに」
「おい、言うなよそれ。絶対だぞ。ディーナさんにお姫様抱っこされてたなんて恥ずかしすぎるだろ」
「アハハ!言わないよ。でもよくあんな作戦思いついたね。どうやったんだい?」
ううむ、レオンの問いに答えてやりたいがそうなると必然的にヘレンの話をしなければならなくなる。
それはちょっとリスキーだ。
なにせヘレンは魔族の娘だからな……。
「あーえっと……まあ成り行きってやつだ」
「成り行き?どうやったらあんな高い位置まで飛べるんだい?マルは魔法が使えないだろう?」
「ほら、シーソーとかあるだろ?」
「それでもあの高さは無理だと思うけど……」
疑ってるな……。
なんて言えば納得させられるんだ。
あれか、俺が転移魔法で……とか言ってしまうか?
でもすぐに嘘だとバレるしな。
「ま、深くは聞かないでおいてあげるよ。とにかく君が無事でよかった」
レオン、お前いいやつだな……。
俺が女だったら惚れてたぜ。
多分、レオンの口ぶりからして俺に協力者がいたであろうことは察しているだろう。
「レオンさん!かっこよかったです!」
また誰かから話しかけられ俺は彼との会話をきり上げる。
レオンは人気者だからな俺と違って。
その場を離れ隅の方に移動し、お茶を一口飲む。
この場にいる大半がエール呼ばれるお酒を飲んでいるが、俺は酒が飲めない。
というかあまり好きじゃない。
ホッと一息ついていると真横に気配を感じ首を動かす。
そこには俺に情報を提供してくれたリザリスがいた。
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