第3話 死を記す者
誰かに与えられた力。
その意味を知るとき、人は覚悟を試される。
これは、『異世界来たけど俺の能力は死なないと強化されない件』
“死を糧に成長する”少年が、はじめてその力の“由来”に触れる物語。
蓮は、扉に手をかけた。
冷たい金属の感触に、呼吸が浅くなる。
けれど、引き返す道はなかった。
ゆっくりと開いた扉の先――そこには、静かな空間があった。
天井の高い部屋。木造の壁。中央には、大きな長机。その向こうに座る、ひとりの老人。
白い髭を蓄えた、しわの深い顔。しかしその目は、曇りなく真っ直ぐだった。
「……君が、“転移者”か」
重々しい声。威圧感ではなく、ただ事実を確認するような音。
蓮「……ああ、たぶん。気づいたら森の中にいて……化け物に殺されて……」
老人の目がぴくりと動いた。
「……それで、今こうしてここにいる、と」
蓮「死んだ。けど、目が覚めた。スキルで……“死ぬと強くなる”ってやつがついてた」
老人は沈黙したまま、机の上の古びた本を開いた。
パラ……パラ……とページをめくる指が止まった。
「……いたよ。君と同じスキルを持った者が」
蓮「……え?」
「十年前。この村に現れた“転移者”だ」
ページをこちらに向けて見せる。そこには、歪んだ文字で記された記録。
『生死強化――死ぬことで成長する能力。過酷、危険、非人道的。だが、効果は絶大』
「そいつは、この村を守って……そして、死んだ」
蓮「……なんでそんなスキルがあるんだ? 誰がこんな……」
「神か、魔か、それすら誰にもわからん。ただ言えるのは――」
老人の声が少しだけ低くなった。
「“死なずに強くなる者”を、世界は必要としないってことだ」
蓮は言葉を失った。
「君は、何度でも死ねる。だが、それは“命を軽くしていい”って意味じゃない。蓮、君に覚悟はあるか?」
その名前を呼ばれたとき、心が揺れた。
なぜ、名前を知っている――?
老人「……アイリスから聞いた。彼女は口は悪いが、命を運ぶ者としては信用できる」
蓮「……アイリスは、何者なんだ?」
老人は答えなかった。ただ、静かに本を閉じた。
「君がこれから向かうのは、“死の記録庫”。この村に残された過去の転移者たちの記録だ」
「そこを読み、知り、それでも前に進めるなら――そのとき初めて、“この世界の住人”になれる」
蓮はゆっくりと息を吐いた。
死ぬことでしか強くなれない。
でも、それは自分だけの物語じゃない。
「……わかった。見せてくれ。その“記録”ってやつを」
老人は頷き、椅子から立ち上がった。
その背中に、蓮はひとつだけ問いかけた。
蓮「――俺と、同じスキルを持ってたやつ。そいつの名前は?」
老人「……レイ」
蓮「……っ」
なぜだろう。胸の奥が、妙に熱くなった。
それが運命の予感なのか、あるいは――
蓮は黙って、老人のあとをついていった。
第3話を読んでくれてありがとう。
今回は、蓮のスキル《生死強化》の過去の使用者、“レイ”の存在が明かされました。
死を通して成長する力が、果たして救いなのか、呪いなのか――物語は少しずつ、その真実に迫っていきます。
次回は、村に残された“死者の記録”を前に、蓮の心が大きく揺れ動きます。
ぜひ、続きも見届けてください。
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