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第2話 森の中の少女

命を代償に強くなる力を手に入れても、

それをどう使うかは、本人次第。


これは、『異世界来たけど俺の能力は死なないと強化されない件』


“生き延びた”少年が初めて出会う、他者の存在と、その冷たい現実の物語。

蓮は、森を歩いていた。


さっきまでの震えは、もう止まっていた。


あの死の感覚は、まだ手足に残っている。骨に染みついたような痛みは、もう消えそうにない。


だけど、それでも前に進むしかない。


どこかに村があるかもしれない。人がいれば、情報が手に入る。地図も、食料も。


そして――この「スキル」の意味も、わかるかもしれない。


蓮「……っ」


茂みを抜けたとき、ふと違和感を覚えた。


風が止まった。音が、消えた。


空気が、ぴたりと張り詰める。


その中心に、いた。


ひとりの少女。


銀の髪。血のように赤い瞳。真っ白な服が、森の中で異様に浮いていた。


その手には、弓。


そして、矢は――蓮の眉間を、正確に狙っていた。


蓮「……お、おい……っ」


少女「動かないで」


その声は、冷たく乾いていた。


少女「ここは立入禁止区域。あなた、何者?」


蓮「……転生者、だ。たぶん、そうだと思う。目が覚めたら、この森で……」


少女は微動だにしなかった。


矢の先が、かすかに震える。


それは警戒か、それとも――


少女「“また”来たのね。外からの者が」


蓮「“また”? ……君、俺みたいな人間を知ってるのか?」


返事はなかった。


だが、少女はゆっくりと弓を下ろした。


少女「名前は?」


蓮「蓮。蓮って書いて、れん」


少女「……私はアイリス。案内するわ。村へ」


蓮「本当に……助けてくれるのか?」


アイリス「勘違いしないで。あなたが“ここで死なないように”動いているだけ。余計な混乱は困るの」


そう言って、彼女は歩き出した。


その背中は、何もかも悟っているようで、どこか“壊れそう”にも見えた。


蓮(……この世界で、初めて出会った人間が彼女だったこと。果たして、それは幸運なのか、あるいは――)


言葉にできない不安を押し殺し、蓮はその背中を追った。

蓮は、アイリスの背中を見つめながら、森の道を歩いていた。


無言のまま、しばらくが経った。


アイリスからは、何も話しかけてこない。


それでも、彼女が持つ独特の雰囲気が、ただの無口とは違うと悟らせる。


蓮「……あの、さ」


アイリス「喋らないで」


ピシャリと断ち切るような声。


蓮は口を閉じた。


そしてようやく、木々の間から建物の影が見え始めた。


森の奥に、ひっそりと存在する村――いや、集落と言った方が近いかもしれない。石造りの小さな家々。干された洗濯物。歩く子どもたち。


ごく普通の光景。けれど、どこか張り詰めた空気が漂っていた。


アイリス「ここが“アウロ村”。あなたのような転移者が通される最初の場所」


蓮「転移者……って、やっぱり俺みたいなのが他にも?」


アイリス「年に一人か二人。大抵は、ここに来る前に死ぬけど」


その言葉に、蓮の足が止まった。


アイリスは振り返らない。


アイリス「森の中には、“外から来た者”を狙う魔物が多いの。最初から狩るつもりで動いてる。……あなたは、運が良かったわ」


蓮(違う……俺は、運が良かったんじゃない。死んだから、生き残っただけだ)


アイリス「紹介する必要がある。村の長に」


蓮「あの、ちょっと待て。俺、武器も何もないし、金も――」


アイリス「関係ない。死ぬよりマシでしょ?」


言葉に、棘があった。どこか刺すような冷たさ。


けれど、それ以上に、ほんの少し“哀しさ”が混じっていた。


蓮は、何も言えず、その背中についていくしかなかった。


村の広場を通ると、人々の視線が突き刺さる。驚き、警戒、不信――。


子どもでさえも、蓮を見る目は恐怖を滲ませていた。


蓮(……俺は、そんなに異質なんだろうか)


門のような建物の前で、アイリスが立ち止まった。


アイリス「ここが集会所。長が中にいる。……私は入らない」


蓮「え?」


アイリス「私は、“転移者の世話役”じゃない。連れてきただけ」


そう言い残して、彼女は踵を返した。


その背中を、今度は蓮が見送る番だった。


一瞬、振り返ったアイリスの目。どこか遠くを見るような瞳。


あれは――優しさじゃない。


あれは、覚悟を決めた人間の目だ。


蓮(この世界……やっぱり、甘くはない)


ゆっくりと、扉に手をかける。


冷たい金属の感触が、現実に引き戻してくる。


その先に、何が待っているのか。


それはまだ、蓮にはわからなかった。


第2話を読んでくれてありがとう。


今回は、物語のキーパーソンとなる少女・アイリスが登場しました。

彼女の態度には棘がありましたが、その言葉の裏にあるものは、きっと物語の中で明らかになっていきます。


そして蓮は、はじめて“人のいる場所”に足を踏み入れました。

ただし、そこに待つのは救いではなく――また別の現実かもしれません。


次回、蓮が村で知る“死の記録”とは。


引き続き、お楽しみに。






この作品はAIの協力の元作成されています

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