表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

Zの不誠実

犯罪者がなんで生まれるのかガキの頃から疑問だった。その疑問は主に貧富の差や憎しみ、羨ましさなどにあると知識として知っていた。戦争が起きるのは民族同士のナワバリ争いや国同士の不仲、相手を騙して自分の利益を増やすため。でもガキの俺には全く理解出来なかった。周りの人間はみんな優しいと思っていた。親も先生も友達も、道理に逆らった動きさえしなければ優しい生き物だと思っていた。

 高校に入ってから違和感を感じた。みんな不誠実になった。全体的に関係の強度が下がって脆くなっているような感じがした。小中ではずっとそこにいた友達。特に別れる時を考えないで接していた友達。好きになった、付き合った、振られた、明日からどんな顔すればいいの?みんなの人間関係が複雑になって、そのかわりに関係が崩れやすくなった。

 みんなそれに気づいてか気づかずか、自分を守る壁が強くなっていくような、気にしないフリを頑張っているようになったような。それが肯定される世界になっていく。相手を気にしない代わりに情け程度の親切さも見せない人もちらほら現れて、自己中心的に変わっていく。

 俺はその傾向が嫌いだったが立場を守るために模倣する。すると途端に人生がいい方向へ進む。この傾向が強い人間ほど上に立っているようだ。たしかにはなから何も気にせず生きている人種もいるだろうが、殆どははそんな彼らに傷つきながら自衛を学んだ人間だろう。だからか知らないが、気にしない人間は俺の周りではかっこいいやつだと思われていた。俺からするといい加減に生きている人間にしか見えなかった。

 ある時自分の友人たちを俯瞰してみると、何となくうっすら軽蔑が香っている。愛想笑いでヘラヘラして気持ち悪かった。本気で楽しんでいる人もいたとは思うが、少なくとも俺は楽しくなかった。

 これはまずいと思って色んな人に声を掛けた。たくさんの人に触れて、誠実さのかけている人間と距離を置くようになった。

 新しい友人たちは強烈な人間たちだった。既読は早いし恩は返すし、何よりずっと笑っていた。一番印象に残っていたのは、彼等は誠実さの無い人間らを眼中に入れていなかった。彼らの世界は彼らの中で完結していて、かつそれぞれが外に枝を伸ばす。誰も無下にしないタフな姿勢が印象的だった。この違いはなんなのだろうか。


 ある日、親と喧嘩をした。誠実さが足りないと怒っていた。驚くほどその声は俺に響かなかった。誠実さと言っても、親から与えられているものが分からないから何を返せばいいのか分からなかった。あるいは返さなくて良いのか、それとも返し方が分からないのか。

 その時初めて、俺が不誠実に染まっていると気付いた。本来感謝しないといけないものを当たり前だと思ってしまった。


 犯罪者もこんなふうに少しずつ堕ちて行くのだろうか。気づかないうちに深く、不誠実に、愛を忘れてしまうのだろうか。


 その日は親に深く頭を下げて散歩しに行った。凍てつく空気の中、途中で買った肉まんの暖かさがいつも以上に身に染みた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ