プロローグ
大学を卒業してすぐに勤めた会社。
仕事はとても楽しくて、気が付けばもう27歳になっていた。
仕事一筋! 恋愛なんて!
そう思っていたんだけど……仕事ができて、後輩の面倒見もいい同じ部署の松橋先輩。
気が付けば好きになっていた。
大きな契約を決めた後輩を祝うために開かれた会社の飲み会。
違う部署の友人たちも集まり、大勢が後輩を祝うという名目で大騒ぎした。
終わった後、
『次は二次会だ』
と同じ部署のお調子者が主役の肩を掴んだ。
『じゃあ、僕たちはここで』
世帯持ちの人たちが二次会を断っているなかで、彼がそう言った。
そして彼は二次会を断って帰っていった。私の友人の肩を抱きながら──。
二次会を断り、私は一人で行きつけの小さなバーへ入った。
カウンター席に座ると、すでに酔った私の姿にマスターが困惑気に眉を寄せた。
お酒に弱い私はここに来ても少しお酒を注文するだけで、マスターや店員さんたちと会話することが大半。
だからすでにお酒を飲んだ後にここに来るなんてしたことがない。
だけどその時は飲みたい気分だったの。
飲んで忘れたかったの……。
そう、ここまでは覚えている。
だけどこの後のことが全く思い出せないの。