一番忘れたい昔話
昔話です。それ以上でもそれ以下でもありません。なので「オチ」はありませんのでご注意を。
(一応実体験に基ずいた「ノンフィクション」ですが証明のしようがないので「フィクション」で構いません)
今から二十年程前。寒さが身に染みるとある日曜日。
残業を終え、仲の良い同僚と遅めの夕食と取ることに。
何を食べるか? で話題に上がったのが焼肉。
ちょっと値が張ったがその分満足した。
食事を終え店を出たのは日が変わる少し前。
駐車場で別れてそれぞれの車で帰路に就く。
真夜中で道路はガラガラ。
昼間なら渋滞でタップリ三十分は掛かるところを十分程度で通り過ぎ、走り慣れた道に着くころに日が変わる。
程なく自宅から二km程まで戻ってきた。
今走行している道路は緩やかな右カーブ。
片側一車線で両側には歩道があり進行方向左側には川が流れる長閑な市道。
周りには視界を遮る民家や障害物も無く、外灯も整備されており見晴らし良好。
対向車すら来ない静かな夜の道を、制限速度を僅かに超えた速度で走り抜けてゆく。
右カーブが終わると信号があるT字の交差点が見えてきた。そこを過ぎれば三百m程の直線に変わる。
信号は丁度『青』
ヘッドライトを「High」にして、右からの合流と交差点内に人がいないのを確かめてから通過する。
何事も無く交差点を通過……したのだが数秒後にふと「後ろ」が気になりルームミラーを覗いたところ何かが見えた。
前方に戻した視線を再度ルームミラーへ。
すると通り過ぎた交差点の中央に、茶色の作業服を着た男性が合流する道の方に体を向けて立っているのが見えた。
へ? 今、誰もいなかったよね? ……ああまたか……
『昔から見慣れたモノ』
再び視線を前方に戻しながらそう割り切る。
いつもならそこで終わり。いつもの事なので数時間後には記憶に埋もれ、見たことすら忘れるだろう。
だが……
……何か違和感が……
いつもと同じくやり過ごせば良かったものを、普段は感じない違和感のせいで再度目を向けてしまった為に「あるモノ」を見てしまう。
見ればその男は体は横に向けたまま、不自然なくらいに首をキッチリ九十度こちらに向け口元を緩ました。
その口からは上着を赤く染める程の血を流し、私の目を見据えているのが百m近く離れていたにも拘らず、クッキリと見て取れた。
それが分かって全身が凍り付く。
アレから離れたい衝動に駆られ無我夢中で逃げた。
駐車場に着き車庫入れをする際に普段と変わらぬドアミラーを見て、やっと我に返れた。
だが後部座席を見る勇気は無かった。なので鍵をかけたら一目散に家へと走る。
家族を無理やり起して念入りに体に「塩」を振り撒いて貰い、そのまま車にも「清めの塩」を念入りに撒いた。
あれからかなりの時が過ぎたが、今でもあの顔が脳裏に焼き付いて離れない。
*週末・・当時の勤め先は月曜日が定休日で私達にとっては日曜日が終末
この手の昔話は体質のせいか結構あります。
例えば畳の上で(布団を引いて)寝ていたら突然目が覚め「鼻から上だけの顔/お婆さん?」が「(多分だけど)布団に沿って」畳の上を瞬きせずに数周徘徊していのを見てしまったとか。
(寝ていた場所は上階。翌日に思ったのは『首から下の部分はどうなっていたのだろう。もしかしたら下階の天井から(下半身が)出ていたのでは?』と。そこそこ慣れており、今まで実害は無かったので大抵は笑い話で済ませれます)
遭遇の大半は外で屋内は滅多にありませんが、どれこもれも悲しいことに前触れなく見えてしまう。そのくせ「近寄りたくない!」と感じたところでは何も見えない。
アレって言うまでもなく出会いたくないんだけど、クッキリ見えるヤツに限って目が離せないんですね。でそういう時は「私と貴方は無関係!私を頼っても何もしてあげれない!」と母から伝授された決まり文句でその場を凌いでます。
今後も「条件」が合えば、覚えている範囲で公開するかも。




