第3話 四天王『舞頼DOL』
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舞頼DOLさんに連れられて来た場所は、当然の如く地下水道の扉。
そこは、鍵がかけられていたが、問題はない。ボクらはこの扉の開け方を知っているのだ。
「我らが意志は絶えず。
火種の如く常にあり。
焔の如き大いなる神よ
その猛々しき力を以て
種火達を救い給え」
舞頼DOLさんが独特の溜めをつくりながら発音した言葉。それを最後まで聞いた扉は、軋む音を立てて開き出す。
舞頼DOLさんが呟いた詠唱。それは、邪神勢力の暗号であり、窓口の前で呟くものは、等しく邪神勢力へ加入する意志があるという証明でもある。
「なんか詠唱、前作と違わない? 前は『火種の如く常にあり』、じゃなくて『火種の如く戦火にあり』じゃなかった?」
「そうね。ついでに言うと『我らに力を与え給え』が『種火達を救い給え』に変化してるわ」
「進退極まってる感あるなぁ……全力で邪神様に救いを求めてるじゃん……」
しかしそれは、前作とは微妙に違うものだった。
具体的に言うと、我らの居場所は常に戦ぞ!みたいな心意気的な詠唱だったのが、いつまでも一緒だから助けて、仲間でしょ?的な情けない言葉になっている。
なんだか、これだけでも邪神勢力の衰退ぶりがわかってくるというものだ。
「開いたわね。ここから先はダンジョンよ、私がいるから準備なんて必要ないけど、一応気合を入れておきなさい、参謀閣下」
そんな事を思っていると扉が開ききった。
眼の前には地下水道の暗闇が広がっている。舞頼DOLさんの言葉の後で、ボクらは、慎重に扉の先に進むのだった。
遺跡っぽい地下水道を進む道中。
黒く光る炎を揺らめかせるカンテラを見て、思わずボクは呟いてしまった。
「カンテラがちゃんとカンテラしてる……」
「『闇のカンテラ』だったかしら。狙い通り灯りとして役に立ったわね」
そうなのだ。ボクの信仰の恩恵である『闇のカンテラ』が灯りとして役に立っているのだ。
何がおかしいのかって? これが普通のカンテラならそうだろうが、これは『闇のカンテラ』という魔導書の要求レベルを緩和するアイテムなのだ。
前作では灯りとしての効果などない。というか、ただの装備品なので、ターン制だった前作で明かりとしても使えるとなると、戦闘でも育成でもダンジョンでも使える万能ツールになってしまう。そんなの恩恵ではなく加護とかそのレベルなので、前作ではそこまで万能じゃなかった。
それを見てプレイヤー達は、少なくとも灯りとしての形をしてるのに効果対象が魔導書とか色々と間違ってね?とか散々言われていたのだが……。
そこで、ボクは舞頼DOLさんの言葉に違和感を覚えた。
「そういえば、舞頼DOLさんは、なんで先にここに来てなかったんですか?」
「こんな暗い所に灯り無しで行けるわけ無いでしょう」
「つまりボクを待ってたと、狙い通りってそういう………」
「参謀閣下は絶対『ヘイルランプラー』を選ぶと思ったのよね。狙い通りじゃなくても道具屋に行けば松明くらいあるし、待つくらい苦ではなかったわ」
「ちなみに他の人は……?」
「さっさと松明持って先に行ったわ」
「………………」
なんだろう、この、いいように使われてる感。
役に立ったのは嬉しいんだけど、求めてた役に立つというのとはなんか違う。
………かませ魔王扱いされてた時に近い何かを感じる。
考えるのは、やめとこう。たぶん藪蛇だし。
そんな事を考えてると、奥から呻き声が聞こえてくる。
反射的に灯りを翳せば、そこにはゾンビらしき魔物がいた。
「うわ、臭……っ」
「え、舞頼DOLさん、五感ありにしてるの? 大丈夫?」
「最悪の気分だけど、とりあえず迎撃するわ」
「よろしく」
舞頼DOLさんは、ゾンビに突撃すると、右で頭を叩き落とし、左で顎を揺らし、もう一発右で顔面を吹っ飛ばす。この間、一秒も無い。
舞頼DOLさんはリアルチートというやつで、何か武術を習ってる訳ではないが、天性の直感と運動神経がヤバい。
今も、頭を無くして揺らめくゾンビの腕を抱えて背負い投げするとマウントをとって殴打し始めた。
…………傍から見るとまるでゴリ
「参謀閣下」
「すいません」
エスパーも持ってるらしい。リアルチートってすごいなー。
ゾンビのもげた腕を放り捨てながら返り血で全身を赤くして、こちらに微笑みかける舞頼DOLさんを見て、ボクは考えるのをやめた。
少しでも長生きするために。
「ここが、窓口かな」
「そうね。昇降機を降りた先よ」
「なるほど」
ここまでの道中、ひたすらにアンデッドと戦う事になったが、全部、鉄腕ぶらいどるさんが瞬殺してくれた。
本人曰く、経験値は始まりの平原より良いとのことで。
尚、ギミックは特になかった。邪神勢力としては、扉の詠唱を知ってるだけで、身内扱いなのだろう。最低限の戦闘力さえ示せばオールオッケーという訳だ。
そうしてたどり着いた場所にあったのは、昇降機。エレベーターと言ってもいいが、現代のそれとは違い、箱型ではない。
昔の炭鉱ダンジョンにありそうな、床だけの簡易的な昇降機だ。
昇降機に乗ると、↑と↓だけしかないボタンを押して下に向かう。
そこに見えたのは………
「ようこそ、邪神勢力の地下拠点へ」
綺羅びやかなカフェだった。
「なんで、カフェ」
「CFOだから」
「なんて?」