第2話 ログインからの再会
続いて更新!!
やっぱVRMMOといったら協力プレイだよね。
視界が暗転してから、一瞬の覚醒。
ボクは、いつの間にか広場の噴水の前に立っていた。
周りには多くのプレイヤーらしき人達(顔面偏差値がNPCとは雲泥の差なのですぐわかる)がおり、人混みを作っていた。
「ログインできたのか……」
「随分遅かったのね、参謀閣下」
声がしたので、振り返ると、そこには人混みを掻き分けてこちらに来る少女の姿。
ある程度こちらに近づくと止まり、ボクに視線を向けてくる彼女は、【魔王軍】の第二の四天王にして、社会人の多かった魔王軍では珍しい学生であり、ボクと同じ学校の同級生(ちなみにクラスは別)である『舞頼DOL』さんだ。
前作では巨体の狼の種族だったが、今は人間のアバターのようで、当然だし予想していたが、序盤で種族転生はできないようだ。
「舞頼DOLさんだけ?……他の人は?」
「さぁ? 何分自由な人達の集まりだったし、案外貴方が見つけない限りずっと合流しないかもね」
「それは勘弁して欲しいけど……ありそうだなぁ」
【魔王軍】はロールプレイヤーの集まりであるが、当然その構成員も常にクランに常駐している訳ではない。なので、クラン戦争やイベント以外でも、普通にロールプレイして楽しんでいた。というか、そういうロールプレイヤーを檻氷愛さんが集めてできたのが、【魔王軍】である。そんな彼らが、未知の世界とそれに蔓延るプレイヤー達を見て滾らない筈がないのだ。
きっと今でも納得の行く設定を考えるために世界観の把握とビルドの調整をしていると思われる。流石に既に星屑の鍵使ってるバカはいないだろうが。
そんな事を考えてると、舞頼DOLさんが、こちらを見て一言零す。
「やっぱりズボン、似合わないわね……」
「うっ」
「そういえば、学校で、新入生が男子トイレに女子が居る!って騒いでたけど、あれアナタよね?」
「…………」
ボクは黙秘を貫いた。
実はボク、かなりの女顔であり、髪を伸ばしてるのもあって、未だに初対面には女子に間違えられる事もある。俗にいう男の娘というヤツ、なのだが………お父さんもそんな感じだったらしいので、遺伝なのかもしれない。
実際、お父さん、30過ぎてるのにかなりかわいい顔しているのだ。お母さんはふわふわした美女って感じなので、ボクも入れて近所で癒やし家族と噂されている。
何が辛いって、初対面の男子が「合法的……」と呟いてかなりの時間葛藤するのが恐怖でしかない。アレほんとになんなの……。
「ま、そんな事はどうでもいいわね。ちょっと体験した感じ前作とは仕様がかなり違う所があるからレクチャーしてあげる」
「それは、ありがとうございます、舞頼DOLさん」
切り替えるように話しだした舞頼DOLさんの提案に乗っかる形でボクも続く。
まず初期スキル取得画面を開いてみて、と言われたので開いてみた。
そこには多くのスキルが一覧として載っており、その中から3つ取得できるのが前作だったのだが……。
「あれ、取得可能数2つ……?」
「気づいたようね。そうよ、前作とは初期スキルの取得数が減ってるの」
「それはまたなんで……」
「『ラージ』曰く、世界観重視の改変らしいわ。なんでも、ここは前作の200年後らしいから」
舞頼DOLさんが言うには、このゲームは前作より200年の時が経った世界であり、そこの住人は長い時間を神同士の戦いに巻き込まれている。それを悲しんだ神がおり、その神が箱庭に人類の一部を逃したという設定があるらしい。そして、プレイヤーはその箱庭の住人の末裔であり、箱庭の外の神への信仰心から、外の世界……つまりこの世界に帰ってきた、という設定らしい。
そして、長い間戦いの無い箱庭で暮らしていた住人は、かつての強さを失っていたという感じだろう、と。
ちなみに『ラージ』とは、【魔王軍】所属の下っ端だが、情報収集が上手いせいで四天王達のロールプレイの精度を上げる為の世界観把握の為に、よく使い走られる不憫な人だ。新情報が出ると真っ先に知らされる為、本人はノリノリだったが。
「その設定だと、他にも成長の仕方が変わってる所がありそうだね」
「実際その通りよ。ステータスがスキル制コマンドバトルから、熟練度制アクションバトルに変わってるわ」
「VR故致し方なし……」
「他にもアイテムボックスが廃止されたし」
「ポーチはあるよね?」
「スキルも近接、遠隔、特殊、耐性、心得、技能、異能、誓約と細分化されてるわね」
「熟練度制なのに、そんなに増やして大丈夫か?」
「恩恵の効果も変わってるみたいだから、確認必須よ」
「………………」
「前作の画面の前でポチポチしてたのが、懐かしく感じるわね」
舞頼DOLさんの言う事もわかる。なんか、フルダイブ対応したから仕方ない部分もあるんだろうが、色々と変わりすぎて前作がちょっと恋しくなりそうだ。
とりあえず、ボクらはボクらの悲願の為に邁進するとしよう。
とりあえずは、現地の邪神勢力との合流からやるべきだろうか。
舞頼DOLさんという頼もしい人もいるし、聞いてみるか。
「とりあえず、邪神勢力の窓口ってどこなの?」
「聞いてくれると思ってたわ。なんと______地下水道よ」
………………邪神勢力、衰退し過ぎでは?