プロローグ
筆休めに、頭に降りたアイデアのまま書いてみた。
どうしても、ルートエデンではプレイヤーとして純粋に楽しむ事はないので、この作品では、そういうプレイヤーしかできない事をする感じで。
なんとなく、自分は『かませ』なんじゃないかと思い始めてきた。
コンタクト・ファンタジー。
VR技術が普及してから随分経ったが、このゲームはシンプルながら自由度の高いゲームとして人気を博していた。
そんなゲームでかねてより憧れだった魔法使いスタートをしたボクだが、魔法の使い方が悪い、MP管理が苦手、脳筋過ぎてとりあえず威力の高い魔法使えばいいと思ってる、といった理由からパーティよりハブられていた。
だが、そんなボクに光明が現れる。
当時、名前負けしていると噂で、掲示板では専ら弄られてた、魔物キャラ専用クラン【魔王軍】。
そのリーダーである『檻氷愛』さんがクランに是非と、勧誘してくれたのだ。
当時、人間キャラだったというのに勧誘してくれた檻氷愛さんの期待に応えるため、キャラを魔物種族にわざわざ転生させるくらい、ボクは嬉しかった。
そんな【魔王軍】だが、初期メンバーはそこまで多くなかった。
今でこそ、一桁ランキングにも乗る程の勢いと規模があるが、最初は本当に知名度があるだけの弱小クランだったのだ。
そんな【魔王軍】の転機といえば、やはり勇者の登場だろう。
元々悪役ロールプレイを望んでいたが、PKはちょっと……と言う様な中途半端な人達の集まりだったが、ゲーム内で勇者と呼ばれるプレイヤーが現れてからは、驚くぐらいに規模や練度を拡大させて行った。
或いは、これは彼らが華々しく悪役として活躍し、最後には英雄に敗れるという、傍迷惑な願望の持ち主達だったからかもしれない。
明確な英雄の出現は、彼らの魂に火をつけた。
そこから【魔王軍】は革新の勢いで衰退と繁栄を繰り返し、やがてランキング上位に名前が乗る頃には、ラスボスよりラスボスしてるとまで言われる程になった。
そんな感じで魔王軍ロールを満喫していた彼らだが、当然魔王軍というからには役職の名前が他のクランとは独特だった。
わざわざカスタムして『団長』を『魔王』に、『副団長』を『四天王1』に、『攻撃隊長』を『四天王2』に、『支援隊長』を『四天王3』に、『財務担当』を『四天王4』に、それぞれ役職名を変えていたのだ。
ちなみにボクの役職は『参謀』改め『魔軍参謀』である。あんまり変わってない気がするが、彼らにとっては重要な所だったようだ。
だが、ここまでランキングが上がると、やはりガチ勢や廃人といったプレイヤーと当たるもので、所詮ロールプレイヤー集団に過ぎない【魔王軍】は敗北する事も少なくなかった。
そんな【魔王軍】に挑戦する、ガチ勢や廃人ではないロールプレイヤーの事を俗に『勇者』と呼ぶ風潮も出たほどである。
そんな彼らを歓迎するため、ボクらも工夫をこらしたクラン戦争を考えていた。
まず、下っ端の魔王軍配下の軍勢が激突し、それを乗り越えボクらの城に到達したプレイヤーは、まずホールにいる四天王4を倒す。すると鍵が手に入り、途轍もなく回り道ではあるが、階段が上がって通れない2階に行けるようになる。
その2階で、四天王3を倒すと城のギミックが開放され、謎解きやパズル、迷路などを行き来して玉座の間を目指す。
そして、玉座の間の扉の前にいる、四天王1と四天王2を倒すと、これまでの回り道が嘘のように出入り口から玉座の間まで一直線のルートが開放されるのだ。
門番の四天王達を倒し、玉座の間に入ると、とうとうボクの出番であり、ボクは魔王として名乗りを上げ、プレイヤー達を相手にする。
そして、ボクを倒すと、なんとボクが魔王では無いという真実と共に、やっと真の魔王である我らがクランリーダー檻氷愛さんが相手になるという、コッテコテの昔懐かしRPGダンジョン仕様の魔王城である。
だがこれ、いくら自由度の高いゲームといえど、ロールプレイヤー以外には不評だった。
簡単に理由を上げると、迷路がウザい、真剣に実力を競い合う場で本丸の戦力が6人だけとか巫山戯てんのか、というかプレイヤーの断末魔が長い(必死に口上を述べるボクらを見て断末魔と表現するのは如何なものか)。
そして、極めつけは、あのバラ○スポジションのヤツが毎回魔王を名乗るの見ててイタい、である。
これ、ボクの事か?と一瞬信じられなかったが、これが冒頭の台詞に繋がる。
___もしかして、ボクって『かませ』なんじゃないか、と。
ゲーマーは人の心がわからない。バ○モスも一応魔王だし、という反論もあったが、そもそもバラモ○ポジションとか言われるとなんか、かなりジワジワ来て地味にダメージデカい。
だからボクは、このコンタクト・ファンタジー・オンラインがサービス終了し、続編としてフルダイブ化すると聞いてから、決めたのだ。
続編こそは、○ラモスポジションとか言われないくらいになってやる、と。
___みんなの心に残る、魔王になってやろう、と。
既に続編のカセットは入手した。第一陣として直ぐにでも参加できる。
【魔王軍】のみんなに確認を取ったが、彼らは続編でも懲りずに悪役ロールを貫くらしいので、安心である。
下っ端の人たちは、いくらか脱退した人も流石にいるが、【魔王軍】が立ち行かなくなる程ではない。
続編では、かつての仲間たちを探しながら、新天地を巡り、イベントで上位を狙う予定である。
我ら【魔王軍】は続編でも不滅!
そんな思いで、ボクはVRギアを被ったのだった。
「ログイン、【コンタクト・ファンタジー・オンライン2】!」
……………ちなみに我らが魔王様たる檻氷愛さんだが。
『檻氷愛さん、続編来るんです?』
『華檻がやるならやる』
と、相変わらずのシスコンだった。
檻氷愛さんが続編に来るかは、今の所不明である。