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第91話 SS級モンスター 死神ノ鎌戦②

 俺は死神ノ鎌を倒す為にみんなの戦っている後ろで、魔力を溜め続けていた。始めてみると思っていたよりも魔力が溜まっていく速度がかなり遅いように感じた。焦りからか、集中できていない証拠である。

 みんなが命懸けで頑張っている様子を見ながら、早く魔力を溜めたい、早くあいつを倒したいという感情がプレッシャーへと変わり、集中力が低下する。そして、また焦る、その繰り返しだ。


「くそ……くそ!! 早く……まだか……」


 まさかパーティの傷を癒す回復術士が後ろで、魔力を込めているだなんて……しかもこれで2回目か。それに、俺がここまで重要な役柄を背負うだなんて、俺が雑用係だったあの頃では想像なんて付かなかった。

 やるんだ、やるしかない。バールの国でエンシェントドラゴンを倒したあの火球を思い出すんだ!!

 だから、俺の魔力が溜まるまで誰も死なないでくれよ!

 そう心から願いながら、俺はまた集中するよう、意識を杖に向けた。


「たぁあああああああ!!!!」


 一方でセシリアが死神ノ鎌へと屈せずに攻撃を試みていた。朱雀戦で身に着けた職業能力【猛攻】によって、セシリアの身体能力はこれまでよりも格段と上昇しているため、セシリアの動きが機敏になっていた。攻撃をしては距離を取って敵の攻撃を回避することを繰り返す。

 セシリアの動きが変わったことによって死神ノ鎌に対して、器用にヒット&アウェイ攻撃を行えるようになっていた。

 しかし、相も変わらず攻撃を行えば身体を透化し、身を守る死神ノ鎌。

 攻撃が当たらなければ怖くない相手だが、こちらの攻撃も当たらなければ意味がない。


「もう! その身体が透けるやつズルいんだからやめてよね!!」


 セシリアが地団太を踏みながら言うも、死神ノ鎌は反応を一切示さなかった。


「騎士団長様はこの状況を打破できる策でもあるのかしら? それとも、噂の『奇跡』を見せてくれるのかしら」


「ははは、生憎だが私の仲間を守るために()()()()の奇跡を使ってしまってね。だが、私が奇跡を起こさなくとも、彼が俺たちに見せてくれるはずだ。本当の奇跡というものをな……だからこそ、『俺たちが彼の為全力でサポートする』これが最もこの状況を打破できる唯一の策なのだが」


「なら、やるしかないわけね」


「やるしかないじゃない。やるんだ」


「はいはい」


 ウォルターが剣を構え、隣でシュリンが大杖を構えた。


「シュリン、俺は横から回り込む。それまでに君の魔法で奴を誘導してくれ」


「わかったわ!」


「行くぞ!」


 ウォルターは掛け声とともに走り出す。前線で戦っていたセシリアの横を風が吹き抜けるかの如く通り、セシリアよりも前に出た。


「ウォ、ウォルターさん早い!」


 そして、駆け抜けるウォルターに合わせて、シュリンが死神ノ鎌へと狙いを定めた。


「フール、貴方ほどでは無いけど、私も使えるのよ」


 シュリンは大杖を立て、自分の魔力を込め始めると魔法詠唱を行い始める。シュリンの周囲には赤い魔法陣が複数展開される。


「炎の聖霊よ、我が瞳に写る対象をその真紅の玉で焼き尽くせ”火球(ファイアボール)”!!」


 シュリンが詠唱すると、1つの魔法陣からぐつぐつと煮えたぎった赤い溶岩のような大玉の火が死神ノ鎌に向けて射出される。

 しかし、死神ノ鎌はそれを透化を使ってシュリンの放った火球を回避する。

 しかし、シュリンは死神ノ鎌に対してこんな魔法攻撃が命中するなんて思っていない。これは囮の火球だ。

 透化で攻撃を回避することはシュリンにとって計算通りだった。

 火球を放った後、死神ノ鎌が透化を解除する隙をシュリンは待っていたかの如く、魔法を遅延詠唱していたのである。


「炎の聖霊よ、その誇り高き紅の炎をその怒りと共に発し続けることを許そう。その怒りが静まるまで……”連射豪火球(ファイアワークス)”!!」


 シュリンの周りに展開されていた魔法陣から一斉に大きな無数の火球が死神ノ鎌へと降り注ぐ。透化解除直後だった為、即時発動ができないと見た死神ノ鎌は

 今度はランタンを掲げるとまた眩い光を照らすとシュリンの生み出した火球をランタンの光の中へと吸収していく。


「くぅ……負けて……たまるものか!!」


 火球を吸収され続けても、シュリンは火球をさらに打ち出し続けた。さらにシュリンは魔力放出し、火球を放つ速度を上昇させる。それに合わせて死神ノ鎌も負けじとシュリンの魔法を吸収し続けていた。シュリンの魔法と死神ノ鎌のぶつかり合いはまさに持久戦だった。お互いが一歩も引かないその様子にセシリアもルミナも見とれてしまっていた。

 シュリンの魔法の威力が強すぎるのか、魔法を吸収する死神ノ鎌の身体が魔法の威力によってどんどん後方に押されていた。

 しかし、そろそろシュリンに限界が近づいてきている。


「ま……まずい、そろそろ魔力が……」


 魔法の持続詠唱によってシュリンの持つ魔力が底を着きそうになっていたのだ。そして、徐々に魔法の威力、速度も落ちてきている様子が見えた。

 その時、横から勢いよくとびかかってくる白いシルエットが見えた。

 白虎だ。

 白虎はシュリンの攻撃を受け止める死神ノ鎌の硬直したランタンを持つ片手に向かって飛び掛かる。白虎は牙を立て、死神ノ鎌の手に噛みつくと、死神ノ鎌の手が取れ、ランタンごと引きちぎったのである。そして、成す術が無くなった死神ノ鎌の胴体に吸収知れなかったシュリンの火球が命中する。

 2発、3発と火球が死神ノ鎌の実態に直撃し、大きく体勢を崩した。


「やった……」


 シュリンは魔力切れギリギリのところで何とか気を失わずに済んだが、魔力を大きく消費したためシュリンは膝をついた。

 そして、体勢を崩した死神ノ鎌の死角から回り込んでいたウォルターが現れ、剣を大きく振った。ウォルターの剣は見事、鎌を掴んでいた腕を切り落とし、要の武器すらも使用不可能にさせた。


「今だ!!」


 そして、セシリアはそのチャンスを逃すまいと走り出し、大きく飛び上がると死神ノ鎌の顔に向けて刀を突き立てる。


「これで終わりよ!!」


 セシリアの刃が死神ノ鎌の顔面を見事捕らえ、体が真っ二つに切り裂かれた。


「やったあ!! さすがセシリー!!」


「いや、まだだ!」


 ルミナの喜びを遮るようにウォルターが声を上げる。全員がもう一度死神ノ鎌の方を見る。

 すると、セシリアが切り裂いた体がゆっくりと閉じられていく。そして、切り目が合わさると接着し、切り目もまるでなかったかのように再生したのである。

 そして、切り落とした腕もまた新しく生え、死神ノ鎌は復活を遂げたのだ。


「嘘……元通りだなんて……」


 セシリアは肩を落とした。


「死神ノ鎌は一撃で葬ることができる威力の攻撃ではないと実態自体を消すことはできない……こいつを倒すのにどれほどの手間と武器と人員が必要か……だからSS級指定なのだ」


 全員の力を使っても復活する死神ノ鎌に仲間全員が絶望をしていた。

 そんな仲間へ追い打ちをかけるような事態が起こる。攻撃されたことによって死神ノ鎌は怒りを見せるかのように、この部屋中に響き渡るほどの雄たけびを上げる。そして、片手で持っていたランタンを投げ捨てると鎌を両手持ちに変えた。


「な、なに?」


 呆けているセシリアへ向けて死神ノ鎌は先ほどとは違う、目にもとまらぬ速さで距離を詰めた。それは移動したというよりも、その空間に現れたという表現の方が正しい。


「セシリー危ない!!」


「……え?」


 ルミナの言葉よりも先に鎌の刃がセシリアの首を捕らえていた。それはルミナのカバーリングも間に合わないほどの速度でセシリアも回避する体勢もない。

 成す術がないまま、セシリアの首へ吸い込まれていく鎌の刃がまさに触れようとした瞬間だった。


「”亜空間生成(ルームクリエイト)”!」


 セシリアが斬られる直前、背後の空間に大きな紫色の穴が生まれると白虎が現れた。そして、セシリアの襟に噛みつくとその穴の中へと引きずり込んだ。

 セシリアが取り込まれるとともにその穴は消え、死神ノ鎌の攻撃は空を切ることになった。

 少し離れたところから空中にまた穴が生まれると、セシリアを咥えた白虎が現れる。


「ありがとう、白虎」


「礼などいらぬ」


 セシリアへの攻撃が失敗したことによって更に死神ノ鎌の怒りが溜まり、再び大きく金切り声のような雄叫び声を上げた。


「奴は怒りで力が増している、気を抜くな」


「ええ、分かってるわよ。これは長期戦になりそうね」


 セシリアは立ち上がり再び、白虎と共に構えを取った。


最後までお読み頂きありがとうございます!

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それでは次回まで宜しくお願いします!

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