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第7話 ヒーラー、ダンジョン攻略を始める

 俺たちは最初に見つけダンジョンをキャンプ地に決め、そこで初めての一夜を過ごした。幸いにも魔物に襲われることがなかったので安全性は多少あるみたいだ。

 俺は眠りから覚め、ゆっくりと目を開くと目線の先にはセシリアの顔が見えた。


「目覚めましたか! おはようフール!」


 なんだか後頭部がいつもより柔らかい感触だ。俺は起き上がり、自分の後頭部があった場所を確認するとそこにはセシリアの艶のある白いきれいな肌をした太腿があった。


「おはようセシリア。ええっと……」


「私が起きたときフールが凄く寝づらそうにしてたから、膝枕をしてあげました! どうでしょう?」


 確かに、こんな硬い石の上で寝ることなんてなかったから凄い首が痛かったけど途中から心地よく眠れていたのはセシリアのおかげだったみたいだ。


「ありがとうセシリア、それにしても早起きだね」


 俺はセシリアへ純粋にお礼の言葉を告げるとセシリアは顔を赤くして後ろの尻尾を前に出し、口元を隠す。


「ど、どういたしまして……」


(本当はフールの顔を観察したくて早起きしただけなのよ……)


 俺は眠気を覚ますためにダンジョンの階段を上り、外の空気を吸いに行く。外は明るくなっており、朝の陽ざしが体に当たって気持ちがいい。深呼吸をして、軽いストレッチをしたらダンジョン内へと戻る。セシリアは服の上に自身の身を守るためのレザーアーマーと戦闘に欠かせないロングソードを身に着けて、ダンジョン攻略への準備を整えていた。それにしても、セシリアのその華奢な細い腕であるにもかかわらず、大人が使うようなロングソードを扱えるのが本当に凄いと感じる。それは、人間よりも力が強い獣人の特権かもしれない。だからセシリアは前衛として頼もしく感じる。

 俺もセシリアに負けてはいられない。鞄の上にのせておいたマントを羽織り、木の杖を持つ。


「フール、準備できた?」


「ああ、セシリアは行けるか?」


「私はいつでも行けるわよ! さぁダンジョン攻略に出発ね!」


 セシリアの掛け声とともにダンジョンの探索が始まった。一応、昨日の焚火で残っていた発火材を集めて松明を2人分作ったので火をつけて、足場の悪い道を照らしながら進むことにした。前はセシリア、後ろは俺という隊列で進んでいく。セシリアが前衛としてきょろきょろと周りを見ながら進んでいく。俺たちが進んでいるダンジョンはCランクのリザードマンが出現していることから一応、BまたはA級のダンジョンだと思われる。

 双方とも高難易度のダンジョンであるのは確かだがB級とA級は難易度で言うとかなり別物だ。B級は最低、C級とB級の冒険者で構成されたパーティで挑んでやっとクリアできるかどうか定かではない難易度、公式的にはB級冒険者4人以上が望ましいとされている。一方でA級はA級以上の冒険者が4人いてもクリアは厳しいとされている難易度だ。双方にしても俺たちの能力ではクリアすることはまず難しいだろう。B級ならまだチャンスは有るか無いかで言えば低い確率でクリアできるかもしれない。しかし、もしA級ダンジョンだった場合は……急いで逃げ戻ってくることにする。


 そう考えていると、道が2つに分岐された道へと突き当たった。


「フール、道が分かれてるよ! どっちに行く?」


 セシリアの前に出てなにか道の先の手掛かりとなる物を探すが特に何もなかったので行きたい方向はセシリアに任せることにする。


「うーーん、特に手掛かりもないから……セシリアが好きな方を選んでいいよ」


「え⁉ 私が決めていいの⁉ んーーじゃあ……」


 するとセシリアは道の先に向けてクンクンと臭いを嗅ぎ始める。


「何やってるんだ?」


「んーー私、結構鼻が利く方だから困ったらいい臭いがする道にしよっかなって。クンクン……」


 右の通路を嗅いだら、今度は左の通路の匂いを嗅ぐセシリア。左の通路を嗅いだ時、セシリアの耳がピンっと立つとその通路に向けて指を指す。


「フールこっちです! こっちに行きましょう!」


 セシリアは何かを察知したのか自信満々に左の通路の方向を指さしたので俺はそれに従うことにした。

 薄暗い通路をどんどん進んでいく。すると、奥の方で広い空間がある様子が見えるとその空間から人でも動物でもない鳴き声が聞こえてくる。


「フール……この先にリザードマンが2体いるわ。私、リザードマンと戦ったおかげで奴らの動きは見極めたつもりだからさっさと討伐しましょう。フールは回復魔法で援護をお願いね」


「セシリア、気をつけろよ」


 俺たちは勢いよくその部屋の中へと入る。セシリアの言った通り2体のリザードマンが佇んでおり、俺たちを見るや否や腰につけたショートソードを俺たちへと向けて威嚇してくる。


「”治癒ヒール”!」


 俺はすぐにセシリアに回復魔法を唱えると、セシリアもそれに合わせて腰のロングソードを抜いて、リザードマンの方へと向かって行く。


「自信が付いた私に敵うものですか!! たぁああああ!!」


 一瞬にして距離を詰めたセシリアはロングソードを一体のリザードマンへと突き立てる。リザードマンは少し戸惑った様子が見え、それが判断能力を鈍らせ、大きな隙ができる。そして、セシリアの刃がそのリザードマンの首に突き刺さり、一撃でリザードマンは絶命した。それを見たもう一体のリザードマンは仲間が殺されたことに怒り、セシリアに向けて剣を振り下ろす。セシリアはその攻撃を回避することができず、ショートソードがセシリアの腕を切り裂く。しかし、俺の回復魔法の持続詠唱によってその傷はみるみると回復していく。


「あなたたちは攻撃をすると次の行動が遅くなる……それが弱点よ!!」


 そう言ってセシリアはリザードマンの死体から剣を抜くとそのままもう一体のリザードマンの首を切り裂いた。切り裂かれたリザードマンは首を切られ、ばたりと倒れる。

 こうしてセシリアは見事Cランクモンスターのリザードマン2体の討伐に成功することができた。


「やったやった! また討伐できたよフール!」


「さすがだな。頼りになるよ」


「えへへ~~♪ このリザードマンたちのお肉、はぎ取って食料にして良い?」


「そうしようか」


 俺たちは2人でリザードマンの肉をはぎ取り、鞄の中へと入れた。これで食料もゲットだ。

 こんな感じで俺たちのダンジョン攻略はかなり順調な滑り出しである。


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