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第63話 ヒーラー、高級住宅区へ

前回投稿から日が空いてしまって申し訳ございません……(/ _ ; )

やっぱリアルと執筆の両立は大変ですね……

 食事を終えた俺たちは一度宿屋へと戻った。今から高級住宅区へ向かうので、アルとイルを宿屋で留守番をして貰うことにする。宿にはカリンとカナとパトラがいるので心配は無いだろう。


「じゃあ、俺たちは行くからな?」


「う……うん」


「……」


 宿の玄関でアルとイルが心配そうに俺のことを見つめていた。


「大丈夫よ2人とも。フールお兄さんなら絶対大丈夫だから」


 カリンが後ろからアルとイルの頭を優しく撫でながら2人の心配を解こうとするが2人の顔は不安感を抱いて悩んでいる顔をしている。


「大丈夫よ2人とも♪ セシリアお姉さんに任せて! だから……」


 するとセシリアが2人の頬を優しく掴んで、無理矢理笑顔を作らせた。


「笑顔よ♪ どんなときも!」


「「!!」」


 その時、2人はセシリアのその言葉を聞いた瞬間、セシリアの姿と母親の姿が重なった。それはいつも辛いときも笑顔を見せ、2人が悲しかったり、辛かったりして不安な顔を見せたときに無理矢理作り笑いをさせていた。いつも言っていた台詞がある。それは……


「大丈夫よ2人とも! どんなときも笑顔よ」


 だった。2人は一瞬、口を開けたまま放心状態だったが2人は顔を見合わせ、そして笑顔になった。


「「うん!!」」


「あはっ♪ 乙女はそうこなくっちゃ!」


 毎度思うが、セシリアの子供を手なずける能力は一種の才能ではないのだろうか? はたまた、何か不思議な力でも働いているのだろうか? ともかく、2人の不安そうな顔が消えたので早速高級住宅区へと向かうことにした。


 高級住宅区はこの都市の上方に位置する場所にある。商店区の北側を進んでいくと高級住宅区の入り口である大きなアーチがあった。それを通るとそこからはもう別世界と言って良い。通る馬車は皆キラキラと輝く宝石や装飾品で飾られ、男性はスーツ、女性はドレスと言う如何にも金持ちと言える服装に身に纏った人々ばかりだった。勿論、俺たちのような庶民的な服装の人間などいるわけがない。そのせいで、この区で俺たちは目立ってしまっていた。外を散歩している貴族からは冷ややかな目で見られ、ひそひそと陰口をたたいているのが嫌でも見えた。わざと俺たちに見えるようにやっているのかも知れない。しかし、そんな他人の目など見向きもしない者達が3名……


「うわぁ!! 見て見てフール!! あの家、超大きいんだけど!!」


 セシリアが興奮して俺の服をグイグイッと引っ張る。尻尾は激しく揺れ、耳もぴょこぴょこと動いている。セシリアが本当に楽しんでいる時の状態だ。


「はぁ~~♡ あんな素敵な馬車に私も乗ってみたい♪」


 その後ろでうっとりとしながら、道行く馬車を眺めるルミナ。


「皆さん浮かれ過ぎですよぉ! ほら、私達凄く目立っちゃってますし……あ、すごい……綺麗なお花……」


 唯一正論を述べたソレーヌでさえも、大きな家の敷地内にある庭に咲いた花畑を食い入るように見ている。

 お前たちには危機感という物がないのだろうか? ……まぁ肩の力の抜き方が上手いと言えば上手いのだが。

 そんな風に歩いていると、後ろから声をかけられた。


「ちょっとそこのあーーた達! 少しよろしくて⁉︎」


 俺たちが声の方へと振り返るとそこにいたのは白い肌によって赤い口紅が大分強調された3人の婦人だった。3人のうちの一人が俺の方へと歩み寄ってくると、体中を嘗め回すかのように目を動かす。5本の指には宝石の付いた指輪をジャラジャラと見せびらかし、胸元には毛並みが良い茶色い子犬を抱えている。


「な……何か用ですか?」


「なんで庶民が私共のいる高貴な場所にいるざますか!! しかも、そんな小汚い服装で!!」


 後ろではこの婦人の友人だろう人たちが俺たちを馬鹿にしているかのようにこそこそと何か陰口を言い合っているのが見えた。確かに、こんな金持ちだけがいる場所に俺たちみたいな庶民が居たら確かに変だ。でも、わざわざ話しかけて言う事なのだろうか。めんどくさい人に引っかかってしまったと後悔するが、ここは敢えてスルーするのが吉だろう。


「す……すいません。この先の聖騎士協会の人に用事がありまして……用事が済んだらすぐに立ち去る予定ですから……あはは……」


 俺は作り笑いをしながらぺこぺこと腰を低くした。


「聖騎士協会……はっ!! まぁ、よろしいざます。聖騎士も所詮庶民と同様ざます! ここに拠点を置くのもおかしい話ざますがおいてしまっている以上しょうがないざます……しかし、あーーたのその隣にいる小娘……獣人ではございません?」


 婦人はそう言ってセシリアとルミナを顎で指す。


「そうですが?」


「人間の姿をしても所詮汚らしい畜生ざます!! 人間の庶民なら私の寛容な心で百歩譲って許しても獣人だけは許せないざます!! まーーだうちのミルクちゃんの方が綺麗でかわいいざます!! ねーーミルクちゅわん♪」


 婦人はそう言いながら腕に抱えていた犬をすりすりと撫でまわす。その言葉を聞いた瞬間、俺はプツンっと俺の中で紐のような何かが切れた感覚がした。そして俺は気が付くと作り笑いができなくなっていた。


「そ、そんな酷いこと……」


「な……なによ!! さっきから言いたい放題言って……ってフール?」


 セシリアが婦人に向けて怒りの言葉をかけようとしたとき、俺はそっと腕を前に出してセシリアを静止させた。ルミナが悲しみ、セシリアが怒りを露わにしてしまう気持ちは酷く分かる。婦人が言った言葉はセシリアとルミナ含め、全ての獣人たちを貶した言葉だ。しかし、俺が許せなかったのは特に俺の仲間を貶したことが許せなかった。


「……ご婦人」


「何ざましょ?」


「確かに、私たちのような庶民がこの区域に足を運んでしまったの事は謝ります。しかし……」


 そして俺は婦人の元へと迫り、怒りの眼差しを向けながら顔を近づけた。


「俺の仲間を侮辱した発言を、今すぐここで謝罪しろ」


 俺がそう言うと、夫人は驚いた表情で抱いていた犬を落とすと尻もちをついた。


「ななななな何ざますかその目は⁉ わ、私のような貴族に向かってそのようなことを!!」


「貴族だから他者を侮辱する発言をしてもいいと思うのか? 小汚い庶民である俺ならいくら好きなことを言ってもいい。だけど、この2人はどの人間よりも綺麗で俺の仲間だ!! こいつらを馬鹿にするのは俺が許さない!!」


「フ……フール」


「フールさん……」


 セシリアとルミナのきらきらと光る瞳をフールへ向けている。

 怒りを露わにしている俺を見て、後ろにいた仲間の婦人2人が逃げるようにその場から離れていった。残った婦人は俺に対してビビり散らしてしまっている。


「ひ……ひいぃ!! だ、誰か!! 誰か助けるざます!!」


 さっきまでの小馬鹿にしていた態度は消え、怯え切った表情で誰かに助けを求めるなんとも情けない姿に俺はだんだんと呆れてくる。

 と、その時だった。


「待ちなさい!! あ、あなた達!! その方に何をしているのですか!!」


 女性の声でその言葉が聞こえると、遠くの方で光を反射して輝く鎧を着た女性がこちらへと近づいてくる。胸に付けた十字の紋章、おそらく聖騎士協会の人間だろう。誰かに通報されたのか、はたまた偶然通りかかったのか、俺たちの方へと頭のポニーテールを揺らしながら走り寄ってくる。そして、婦人の方へと近づくと婦人の手を取り、話を聞き始めた。


「ご婦人、どうかなさりましたか?」


「こ、この……この者たちが私に向かって無礼なことを!!」


「いや、違う誤解だ!」


 俺の言葉を聞くよりも先に鎧を着た女性は婦人を丁寧に立たせる。


「分かりました。事情は私たちで聞きますのでご婦人は急いでおかえりください」


 女性にそう言われた婦人はその場で丸くなっていた犬を抱えると逃げるようにこの場から速足で退場する。そして、女騎士は婦人が離れて行ったのを確認すると俺の方へと振り向く。女性は俺たちを睨み見ている。まるで今から尋問が始まるのではないかと不安になる。


「ち、違うんですよ!! 私たちは巻き込まれたのよ!!」


「そうですそうです!!」


「私たちはあのよくわからない人に絡まれたんですから!!」


 誤解を解こうとおもっているのか、セシリアとルミナとソレーヌの言いくるめトリオとなっていた。

 しかし、その女性は俺たちを咎めるどころかまるで重い荷物から解放されたかのように大きなため息をついた。


「はぁ……大事にならなくて良かったぁ……ここら辺の貴族は色々とめんどくさいんですよぉ……で、何してたんですか? 見るからにここに住んでる服装には見えないけど……」


「……え?」


「大丈夫ですよ。貴族の方々の大概が一般人とのもめ合いですのでそこまで怯えなくても捕まえたりしませんから!」


 こういうことが頻繁に起こっているのか? それはそれで確かに面倒な話だ。このような対応ができると言う事は、きっと今までこのような場面に出くわしてきたのだろう。とりあえず誤解はとっくに晴れていると言う事なら本題の話ができるかもしれない。


「あの、もしかして聖騎士協会の人ですか?」


「ええ、そうですけど……なにか?」


「実は俺たち、聖騎士協会に用があって来たんだけど」


「私たちですか?」


「この都市で起こってる地盤変動の噂について……」


「地盤変動の噂ですかぁあああああ!!??」


 女性は食い気味で俺の言葉に反応し、俺に顔を近づける。俺は驚いて咄嗟に離れるが女性は俺の腕を掴んで逃がそうとしない。


「もしかして、その件について詳しく知ってる人ですか!?」


 女性は輝かせた期待の眼差しを向けてくる。


「いや、まぁその……」


「宜しければ今すぐご同行願います!!」


 それ怪しい人を捕まえる時に言う台詞では? しかし、ここまで反応が良かったのは驚きだがすぐに話が出来そうだ。


「分かりました」


「では私たちの本部へご案内します!!」


 こうして、俺たちは貴族とのハプニングに駆け付けた女騎士に協会の本部へと案内してもらうことになった。



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― 新着の感想 ―
[一言] セシリアに関してはキラキラした目を通り越して目がハートになってそうw 無理せずリアル優先で頑張って下さい_:(´ཀ`」 ∠):
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