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第57話 2頭のサイクロプス

 サイクロプスの一頭が大きく腕を振り上げるとセシリアに向けてその拳を振った。

 サイクロプスの攻撃は大振りだった為、セシリアは自身の身体能力を活かして華麗に避けると、その柱のような腕に乗り、サイクロプスの体を駆け上がっていく。

 サイクロプスの弱点は目、それをセシリアは知っていた。

 烈風と雷光を抜き、サイクロプスの一つ目へと斬りかかろうとした時、もう1頭のサイクロプスの手がセシリアの視界に入って来た。勿論、それに気がついたセシリアは掴まれる寸前でサイクロプスの身体から降りて、距離を取った。


「セシリア! 無理するな!」


「分かってるーー! くぅ! あとちょっとだったのにぃ‼︎」


 こう見えてもサイクロプスはB級モンスター、知能が低いが力が強く、気を抜いてしまえばあの大きな拳の餌食にされてしまう。サイクロプスに知能を加えた"エルダーサイクロプス"と言う上位種がいるが、そうなるとA級となり難易度が大きく跳ね上がる。2頭もいるのでサイクロプスで本当に運が良かったかもしれない。


「私が一頭を惹きつけます!」


 ルミナが走り出し、1頭のサイクロプスの方へと向かい盾を強く叩いて"挑発"を試みた。案の定、知能の低いサイクロプスはルミナの挑発に釣られて、ルミナへとヘイトを向けた。ルミナに向けてサイクロプスが大きく振りかぶって拳を叩きつけてくる。

 ルミナは大盾で上手く攻撃を受け流している。流石盾士(シールダー)だ、俺も見惚れている場合ではない。


「ルミナ! "EX治癒"!」


 ルミナにEX治癒を施し、ルミナはパワーアップする。敵の攻撃を受け流していただけだったルミナの動きは変わり、攻撃に合わせて、相手の攻撃を弾き返す"盾パリィ"を上手く使っていた。それによって体勢をよろけたサイクロプスが倒れる。


「やった! 今です!」


「了解です! 捉えました……」


 ソレーヌの魔導弓によってロックオンされたサイクロプスの至る箇所に魔法陣が浮かび上がる。


「行きます! "拡散追魔弾(スプレッドアロウ)"」


 ソレーヌの放った光の矢が分裂し、倒れたサイクロプスの身体の至る部位を貫く。サイクロプスは苦しんだ様子で大きな雄叫びをあげる。


「これならもう一体もいける!」


 セシリアはもう一方のサイクロプスに向かって走り出す。

 今度はサイクロプスが攻撃を仕掛ける前にサイクロプスの身体に乗り込み、駆け上がっていく。今度は邪魔が入らない。頭部の目に近づいた時、セシリアは二刀の刀を構える。


「行くわよ! たあぁああああああ!」


 セシリアの攻撃がサイクロプスの目に突き刺さり、サイクロプスは叫び声をあげ、大きく体勢を崩した。こうして、2体のサイクロプスが倒れた。


「やったぁ!」


「凄い……」


 アルとイルが喜んでいるのも束の間、サイクロプスの様子がおかしい。サイクロプスの傷がまるで霧でかき消されるように消えると2頭のサイクロプスが再度立ち上がった。


「まだ、立つの⁉ なら、何度だって切るだけよ!」


 そう言って、セシリアがサイクロプスの足に斬撃を喰らわせる。確かにサイクロプスの足が切られ、傷ができた。しかし、さっきと同じように霧がかかったように傷が消えて、元通りとなった。

 ただのサイクロプスでここまでの再生力はあり得ない。無論、エルダーサイクロプスでさえも再生する能力など聞いた事が無かった。


「セシリア! ルミナ! ここは下がれ! 様子がおかしい!」


「了解です!」


「しょーーがないわね!」


 セシリアとルミナがこちらに戻ってくると、サイクロプス達は怒り狂った様にその場で暴れ出す。

 ダメージを与えられないサイクロプスなんて……明らかに可笑しい。魔法攻撃も考えたが、結果はソレーヌの攻撃で証明されている。

 どうすれば良い……


(マスター、ここは私にお任せを)


「シルフさん、お願いします」


 俺は胸のペンダントに魔力を込めると、地面に緑色の魔法陣が生まれ、そこからシルフが登場する。


("大気圧縮刃(エアリアルブレード)")


 音速で飛んでいく無数の風の刃が2頭のサイクロプスを襲う。その切れ味は絶大で一気にサイクロプスの四肢を切り落とす。しかし、切り落とされた腕や足から白い煙のようなものが出ており、その煙が腕の形となって再生する。

 やはり、シルフでも無理があるのか……しかし、シルフは今の攻撃で相手の正体を掴むことができていたのである。


(マスター、あの煙……恐らく幻術体(ミラージュ)の類ですわ。何者かが恐らく幻術体を操っているのかもしれません)


「幻術体?」


(幻術体は精霊体とは違い、攻撃をしても倒すことはできません。幻術体を操っている幻術師(イリュージョニスト)を倒さなくてはなりません)


 そう言われても、幻術師と思われる人間はいなかった。この場にいないのか……もしくは隠れているのか……それは分からないが倒せないとなると困ったものだ。倒せない……その言葉が出た時、俺はあるアイデアを思いついた。


「シルフさん、幻術体に魔法は有効か?」


(はい。むしろ、魔法でなければ殆ど効果を発揮しません。状態異常なども魔法なら通じることでしょう)


 なるほどな……なら、いける!


「ありがとうシルフさん!」


 俺は2本の杖を構えた。目標は2頭のサイクロプス……倒せないなら、無力化すれば良いのだ。


「"睡魔(スリープ)"!」


 俺が叫ぶと、2頭のサイクロプスに淡い青色のオーラが纏われた。そして、まるで魔法に掛からんと苦しそうに悶えた。本来のサイクロプスなら状態異常魔法に対する耐性が低いのだが、このサイクロプス達は相当魔法耐性が高い……俺の魔法を耐えているのか……なら、これならどうだ!

 俺は睡魔にかける魔力の量をさらに増やし、最大威力の睡魔を喰らわせてやった。

 すると、魔法に抵抗しきれなかったのかサイクロプスはゆっくりと倒れる。そして、大きないびきをかいて眠り状態へと入った。

 これで一時的になんとか抑えたようだな。


「フール! 凄い!」


「かっこいい……」


 アルとイルが俺に輝きの眼差しを向けていた。


「結局、フールが良いとこ持って行っちゃうんだから」

(さすが私のフール♡)


「流石ですね♪」 


「す、凄いです! やっぱり……」


(まぁまぁ、マスターたら。皆さんから褒められて素敵ですわ♪)


 全員から褒められて悪くない気持ちになっていたが、気を抜く余裕は無いようだ。


「……ふむ、儂ら仲間の幻術を止めおったか……」


 部屋中に響く、渋い老人のような声。

 それに驚いて、正面を見ると奥に何かがいる。


「どうやら……お前達は他の人間達とはちょいと違う様じゃ」


 現れたのは、大きな亀のような甲羅を背負った四つ這いである巨大な魔物……いや、ただの魔物ではない……長い首が2つに分かれ、その先には恐ろしい形相をした竜の頭がついた双頭……正しく、バール王の言っていた"知神"玄武だった。


最後までお読みくださりありがとうございます!


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