第55話 アルとイル、服を貰う
ウッサゴに来てからアルとイルを保護したその夜は、明日にも迅速に行動する為にカリンとカナの宿屋で早めに就寝することにした。
そして、次の日……
「おっはよーーフール!! 今日も朝から頑張るわよ……って」
セシリアが元気よくモーニングコールの為にフールのいる部屋へと入る。そして、セシリアは部屋の様子を見て声を抑えた。ベッドの上で俺の横でアルとイルが一緒に寝ているのを見だからだ。
3人が寝ているベッドへ、セシリアは物音を立てないようにゆっくりと歩み寄って3人の寝顔を眺めた。
「ふふ♡ フール、まるで2人のお兄ちゃんみたいね♪ アルもイルも可愛いけど、寝てるフールも可愛い♡ ふへへ~~♪」
セシリアは顔がとろけたようなにやけ顔をかましていると、イルがぎゅっとフールの腕を急に強く掴んだのが見えた。
「行かないで……ママ……」
寝言でそう呟いたイルの言葉を聞いて、セシリアははっとした。きっと、夢でも見ているのだろう……夢の中では母親に出会えているのに……
セシリアはイルの目頭に溜まった涙を優しく拭ってやると、頭を撫でた。
そして、イルに腕を掴まれたことによって俺は覚醒し、ゆっくりと目を開いた。横にはセシリアが居て、暖かいまなざしでイルの頭を優しく撫でているのが見えた。
「おはよう、セシリア」
「えっ⁉ あ、フール⁉ おはよう、起きてたの?」
「いや、今起きたんだ……アルとイルの寝るところがないから俺の部屋で寝かせてたんだが、どうやらちゃんと眠れたみたいでよかった」
「……ねぇフール」
「ん?」
「この子たちのお母さん、見つかるかな?」
「……どんな形であろうと必ず見つけ出すさ。だから、俺たちが前向きでいないと子たちをもっと不安にさせてしまうからな」
「……うん、分かった。頑張ろ!」
「おう」
俺たちがそう話していると、アルとイルが目を覚ます。
「むにゃ……もうあさぁ……?」
「むぅ……」
アルは大きな欠伸をして、イルは両目を擦りながら寝ぼけ眼で周りを見ている。さて、2人が起きたのでアルとイルの着替えや身支度はセシリアたちに任せることにする。
セシリアが寝起きの2人を連れて、部屋から出ていくと俺はすぐに服を着替えた。因みに今回の装備は回復術士として回復性能が向上する祝福ノ杖と護身用に妖精ノ杖を所持している。
火球ノ杖は性能的に危ないので荷馬車に置いてきた。妖精の杖の方ができることが多そうだし、シルフもいるので何とかなるだろう。
着替えを済ませて、ロビーへ向かうとパトラとソレーヌがが椅子に座って待っていた。
「おはよう2人とも」
「フールさん、おはようございます!」
「おう! おはようだぞ♪」
「セシリアたちはまだか?」
「今、アルちゃんとイルちゃんの服をカリンさんたちと決めてるみたいです。もう少しで来ると思うんですけど」
すると、受付の奥の暖簾からセシリアとルミナが現れる。
「ごめんなさい、遅くなったわね」
「2人に似合う服をカリンさんと探してました」
そして、さらに暖簾の奥からカリンさんがアルとイルを連れてやってくる。
「娘のカナのお古だけど、これなら奴隷だって分からないわよね」
2人はフリフリとした上は小さなリボンを胸につけて白いワイシャツ、下はフリフリの黒いミニスカートだ。スカートのウエストが少し大きいのを補うために肩にかけたサスペンダー付けていた。スカートからはみ出ている尻尾がとても可愛らしい。
昨日までのボロボロの服から想像もできない、可愛らしい双子の女の子にしか見えない。これなら街でも普通に歩く事ができるだろう。
「はわぁーー♪ この服可愛い‼︎」
「うん……可愛い……♪」
アルが服を見せびらかすようにくるっと体を回し、イルも自分の服を眺めてとても嬉しそうだった。
「でも……貰っても良いの? こんな良い服?」
「ええ♪ カナが小さい時に着てた服だったからもう着れないし、貴方達にとってもお似合いだから譲ってあげるわ♪」
「やったぁーー‼︎ ありがとうお姉ちゃん♪」
「ありがとう……」
「まぁ! お姉ちゃんなんてお上手ね♪」
「よかったな、2人とも」
「「うん!」」
こうして、アルとイルが外に出られるような服をもらう事ができた。さて、少し早いが井戸に向かうことにしよう。
「みんな準備できてるか?」
「バッチリよ!」
「今日も頑張りますです♪」
「私も大丈夫です!」
「お留守番はまかせろなんだぞ!」
よし、いつもの確認ok! あとは……
「2人も大丈夫か?」
「大丈夫! 案内は任せて!」
「うんうん……!」
アルとイルも準備ができてるようだ。
よし、なら行動開始だ。
「カリンさん、パトラのことよろしくお願いします」
「ええ、気をつけて行ってらっしゃい。アルちゃんとイルちゃんの事、守ってあげてね」
「ええ! 勿論よ!」
横からセシリアが割り込んでくる。セシリアのこう言うところな頼りになるんだよなぁ……
「それじゃ、行ってきます」
こうして、俺たちはアルとイルの案内に従って貧困区を目指した。
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