第48話 暗躍する影
第3章スタートです!
俺たちがアモンの村で身体を休ませていた頃、バールの国のバール王は複数の護衛を連れてあるところへと向かうために場内の長い回廊を歩いていた。バール王たちは回廊の一番隅にある厚い鉄で出来た扉の前までたどり着くと、袖から鍵を取り出し、その扉のカギ穴へと入れる。解錠した音が鳴ると扉は高い音を響かせてゆっくりと開いていく。扉の奥には地下へとつながる螺旋階段があった。護衛がランタンの火をバール王の足元に注意して照らしながら階段を下りていく。下に向かうにつれて気温が下がって肌寒く、そしてじめじめとした様子が居心地の悪さを表している。
しばらくして、階段を降り切ると鉄格子の扉がいくつも並んだ薄暗い空間へと出た。壁には申し訳程度の松明の火がくべられており、不気味さをが醸し出ている。
バール王たちはさらに部屋の隅へと向かい、その鉄格子の扉の前まで来た。奥には布切れで陰部を隠し、ガリガリの体に髭まみれの顔の男が壁につながれた鎖に両手を繋げられている。
「気分はどうだね? アーカム」
「……」
そう、目の前に居るのは国王に向けての不正によって捕らえられた元ギルドマスターのアーカムだった。初老の顔は更に老け、見るも無残な姿だった。
捉えられてから何日もここに監禁され、食事も最低限度のものを1日1食しか与えられず、拷問を受ける日々を送っていたのである。声をかけられたアーカムは返事をせず、うつろな目でバール王の顔を見ていた。
「……まぁよい、アーカムよ……お前の死刑執行日が決まった。明日だ」
「な……に……?」
「お前の決行を早めたのには理由がある。四神たちの動きが活発となっているという情報が有志の冒険者たち、そして各国が声を挙げ始めたのだ。そちらに目を向けるためにもお前とはすぐにも決着を付けようと思ったのだ」
「……フヒヒ……フヒヒヒヒ……ヒャハハハハハハハ……」
命乞いするかと思ったアーカムだったが、気がめいったのか顔を地に向け、急に笑い始めた。そして、ニタニタと笑いながらバール王の方を見る。
「良いんですかねぇバール王……私を……殺してしまって……」
「何?」
「私……知ってるんですよ……この四神災害を復活させた者を……」
アーカムの一言で護衛がざわつきだす。勿論、バール王も初めて耳にする情報だった。バール王は慌てる護衛を右手を挙げてなだめると再度、アーカムに問う。
「アーカム、そんな話は拷問官からも聞いてはおらんぞ」
「言うわけないではありませんか……なんでも、極秘情報なのですから。再度聞くが王よ……明日、本当に私を殺してしまうのですか?」
アーカムの言葉に少し考えた後、バール王は口を開いた。
「貴様は何を望む?」
「お話が早いですよ……バール王、私が望むこと……それはここで私を匿い、食事を与え続けることだ」
「そのようなことで良いのか?」
思いもしなかったアーカムの要求に意外さがあり、思わず聞き返してしまう。
「ええ……私などもはや、ギルドからは解雇されたようなもの……私を殺そうと思えば私の命を奪うことも容易いだろう。ならば、ここに居る他ない……私には、居場所がない……」
「……よかろう。お前の死刑の期日を見送りにしてやる。ただし……貴様が質問に応じず協力する見込みがないと判断したのならばすぐにでも、貴様の首を飛ばすだろう」
「ええ……わかりまし……うぐっ⁉」
その時、アーカムは突然苦しみ出し、目の動きが激しくなる。顔は赤くなり、額から血管が浮き出てきていた。
「な、何事だ⁉ どうしたアーカムよ⁉」
「うぐぅううう⁉ おの……れグランドマスター……私に……呪いおぉ……ぬぐぅう!!」
アーカムが苦しんでいると、みるみるとアーカムの胸元が膨張し膨らんでいく。胸には鳥を模した刻印が浮かび上がり、それが光を発していた。
「な……何が起こっておるのだ?」
「はぁはぁ……王よ……残念だが死刑は今日だ!! くそくそくそぉおお!! まさか本当にやりやがるなんてよぉ!!!! ひゃはぁ!! 鬼だ……鬼だぜ畜生!! 良いかよく聞けバール王!! この世界の深層には”アビスフォール”と呼ばれる場所がある!! そこに四神の謎が有るとされているんだ!! ああ、言ったぜ! 言ってやったぜ俺はぁあああああ!! ざまぁみろ!! 入り口も言うぜぇ⁉︎ 今から言うからな‼︎ 入り口は我らのボスであるバルバ……」
話の途中だったアーカムだが、胸の膨張が限界に達し、大きな破裂音と共に上半身全体が吹き飛んだ。牢獄内にはアーカムの肉片が飛び散り、残った下半身だけがばたりと倒れた。体の切れ目から流れるように赤い血が流れ出て、バール王の足元まで流れてくる。思わぬ事態にバール王の額から汗が垂れる。
「アビスフォール……まさか、それが真なら……」
バール王が珍しく焦りを感じている様子を見て、護衛達にも不安感が走る。
そして、バール王が口を開く。
「……フールだ……この話を明日にもフールに知らせるのだ!!」
「「「「「はっ!」」」」」
こうして、バール王たちとアーカムの面会が終わった。突然のアーカムの死によって、この世界の裏で何かが行われていることが明るみにされた日となった。
「ふっふっふ……馬鹿な男だ。私からは逃げられんと言うのに……」
その頃、とある一室で街の明かりを眺めながらワインをゆっくりと味わっている男が笑っていたことなど誰も知る由もない。
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