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第5話 ヒーラー、ケモ耳少女とパーティを組む

 リザードマンを倒した二人はひとまずダンジョンから脱出し、外へと出る。空は夕日の光で赤く焼かれており、薄暗くなってきた。俺は鞄から野宿道具の一つである火打石を取り出す。

 幸いここは森の中なので地面には自然の発火材が只で手に入る。俺はそれらを拾い集めると火打石で種火を作り、正しい手順で火を生み出した。そして、鞄から小さい鍋と水筒を取り出し、鍋に水を少し入れて火にかけた。そう、スープを作ろうと考えている。具材はさっき倒したリザードマンの肉をはぎ取って来たのでそれを使うことにする。調味料は雑用係の特権で使うことができたギルドの調理場から少しくすねた物を使う。つまり、何から何まで全て只であるフール特製リザードマンスープができると言うわけだ。

 早速、沸騰した鍋に肉をぶち込んで、調味料を味見しながら入れていく。そして、見事完成した。

 野宿道具の中から木製の小鉢を2つ取り出し、スープを少女の分までよそって渡す。


「結構うまいぞ? 食べるか?」


「うん、ありがと」


 そう言って彼女はスープを受け取り、ふぅふぅと冷ましてから一啜りする。


「……美味しいわね」


「よかった。ところで君の名前は? 俺はフール。一応、回復術士」


「あ、まだ名乗ってなかったわね。私はセシリアよ、ご覧の通り獣人族で一応戦士(ファイター)をやってるの……」


 獣人族とは人族のように人と獣が足されたような種族で主に外見は人間寄りである。人間と違うところはその特徴的な耳と尻尾、あとは動物の名残からか人間よりも力が強いってところかな。


「セシリアはどうして、ダンジョンに一人でいたんだ?」


「そ、それは……」


 俺の質問に対してセシリアはどこかもじもじとしている。やはり何か訳ありなのだろう。


「もしよかったら、俺に教えてくれないか?」


「いや、別に……そんな大したことじゃないのよ……そう……大したことじゃない……」


 セシリアは強がっている素振りを見せているが悲しい表情が隠し切れていない。尻尾も耳も垂れ下がってしまっている。うーーん、ここはやはり俺から話をして警戒を解いてもらおう。


「実は俺……ここの近くにあるバールの国でギルドやってたんだけど、戦力外だって解雇されちゃったんだ。あははーー」


 俺の話を聞くと、セシリアの耳が少しピンと張ったように見えた。どうやら驚いてくれてようだ。その時、俺も強がって笑ったが彼女には見抜かれているかもしれない、俺の悲しさを。

 その悲しさに同情されたのか、セシリアが重い口を開いた。


「実は私も仲間外れにされたんです。私は”アガレスの国”からやってきました。私もそこでギルドに所属してたんです。だけど、周りのギルドメンバーから良い目で見られず、馬鹿にされたりしてクエストにすら連れていってもらえなかった。だから、近くに新しいダンジョンができたと報告があったから1人で乗り込んでボスの首を差し出せば私も認めてもらえるかなって……でも、結局リザードマンにすら敵わなくて死にかけちゃった。そしたら、そこにあなたが来てくれて……私嬉しかった、初めて自分でモンスターを討伐できたし、私みたいな奴に手を差し伸べてくれる人もいるんだなって」


 セシリアも俺と同じくギルドから半追放って感じだ。それでギルドに認められようと努力するために一人でB級ダンジョンに挑むその行動力……この時点で俺はこの子よりも気持ちの強さは下である。


「それにしても、凄いわね魔力無限だなんて。初めて聞いたわよ。でも、どうしてそんな能力を持っているのにギルドを解雇されちゃったの?」


「俺の性格上あまりギルド内で目立ちたくなかった。それにクエストにも連れて行ってもらえないんだから使用する機会もなかったしね」


「そうだったんだ……つまり、実質、フールの能力を知るのは私が初めてってこと?」


「まぁ、そうなるな」


「ふーーん……」


 セシリアはスープを一啜りする。彼女はどこか少し顔が赤くなっており、動きも少しもじもじしていた。頭の耳が緩やかにぴくぴくと動いている。


「ね、ねえフール、一つ提案があるんだけどさ……私と組まない? ほら、あなた回復術士で戦闘に向かないでしょ⁉ それに私もフールの話聞いたらギルドなんてもうどうでも良いかなって! 私が前衛であなたが後衛、お互い何の目的も当てもないなら良いんじゃないかな……って……」


 確かにセシリアの言う通り、俺は戦うことはできない。例えできたとしても攻撃力など前衛職と比べれば雀の涙でしかないのだ。そう考えるとセシリアと冒険できるのはとても助かる。ぶっちゃけ、一人旅も寂しいと思うし……


「セシリアが良いならその提案に乗るよ。旅の仲間が増えれば俺も助かるし」


「ほ、本当⁉ 本当の本当に⁉」


 セシリアは尻尾を激しく振り回し、瞳を光らせて俺に顔を近づけてくる。


「お、おう」


「やったやった♪ じゃあ私たちもうパーティね! 今後ともよろしくねフール♪」


「ああ、よろしくなセシリア」


 こうして俺はセシリアと初めてのパーティを組むことになった。そう……共に冒険し、解散することのないパーティが。


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