第4話 ヒーラー、ケモ耳少女を助ける
周りを見るが彼女以外、誰も見当たらない。恐らく彼女はソロ攻略のためにここへ来たと考える。装備からしてA級には程遠い。高く見積もってC級の冒険者だろう。
俺は急いで彼女に回復呪文をかけようとするが、リザードマンが俺の回復を阻むかの様にその剣を俺に振り下ろす。
「あぶねっ!」
俺は咄嗟に彼女を持ちながら回避する。
「部外者は……引っ込んでて」
そう言って彼女は俺の手を振り払うとふらふらと歩き出し、リザードマンに剣を向ける。
「おい! 下がれ! そんな体で戦えないだろ⁉︎」
「じゃあ……貴方は戦えるの?」
彼女の言葉に俺は言葉が詰まった。俺は回復術士……回復呪文しか使えず、戦うことなどできない。俺は黙り込んでしまうが、彼女は果敢にリザードマンへと挑む、しかし、力の差は歴然でリザードマンの力に押し返され、体が吹き飛ばされる。それでも彼女は立ち上がる。小柄でありながらも大人が使うロングソードを握りしめて。
そんな彼女の姿を見て俺は思った。何であの時、ギルドメンバーに強く言えなかったのか……何であの時、優しくしていたのか……俺の心の中は後悔の念でいっぱいになった。
……しかし、俺には人を回復させることはできる!
あの化け物の様な力がバレてしまうが……やむを得ないか……
「癒しの風よその少女の傷を癒したまえ……"治癒"!」
俺が呪文を唱えると少女の傷がみるみると回復していく。
「貴方……回復術士だったのね」
彼女は自身の傷が全て塞がった事を確認し、俺に声をかける。
「ありがとう、もう良いわよ。助かった」
しかし、俺はその彼女の声を無視して、回復魔法の詠唱を続ける。彼女の体は治癒の上限まで回復しているがそんな事は気にしなかった。
「……もう詠唱は良いわよ?」
「お前が戦い終わるまで俺は"治癒"を持続詠唱し続ける」
「はぁ⁉︎ 何言ってるのよ‼︎ そんなことしたらあなた魔力切れで倒れちゃうわよ⁉︎」
しかし、その言葉を無視して俺は詠唱を続ける。
「俺は回復させる事しかできない。でも、君は戦えるんだろ? なら俺はお前を全力でサポートしてやる。だから、そいつを倒してくれ」
俺の目を見た彼女に、俺の本気さが伝わった様だった。
「長期戦になるわよ……倒れても知らないんだからね‼︎」
そう言って彼女はリザードマンと再び戦い始める。
彼女にリザードマンの攻撃が命中するも、持続回復されている彼女の体の傷は急速に癒えていく。そう、今少女の体は傷を負っても無限に回復し続けるのである。そして、彼女は何度挑んだリザードマンとの戦闘の中でリザードマンの動きの癖を学び始める。そして、一瞬の隙となる大振りの攻撃モーションをリザードマンが見せた時、少女は赤い目を光らせた。
「そこぉおおお‼︎」
少女のロングソードがリザードマンの胴体を貫き、長期戦となったリザードマンの戦いに終止符が打たれた。
「わ……私が自分で倒せた? 倒せた⁉ やったぁああああ!!」
少女は自身の手でモンスターを倒すことができたことに喜び、ぴょんぴょんと飛び跳ねた。頭の耳がぴくぴく動き、尻尾もブンブンと激しく振れている。
その様子を見て安心し、俺は詠唱をやっと中止する。戦闘が終わると、彼女は気が付いたかのように心配そうな顔で俺の方に歩み寄ってくる。
「やっと倒せたね、良かった良かった」
「あんた大丈夫⁉︎ ずっと詠唱してたけど⁉︎」
「ああーー、えーーと……俺さ実は魔法をいくら使用しても魔力が減らないんだよね……あはは……」
「……は?」
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