第23話 ヒーラー、ギルドを潰す
シュリンの登場によって場が一転している最中、セシリアが俺に耳打ちをしてくる。
「ねぇフール……あの人、貴方を馬鹿にしてたS級パーティの1人よね? 一体何を考えているのかしら?」
「私たちを助けてくれるんでしょうか?」
ルミナも横から耳打ちをしてきた。
シュリンと離れたあの後、もしかしたら俺たちの後ろをついてきていたのかもしれない。S級冒険者なら国御用達のパーティであるからふらっと城内に入る事など容易く可能である。もしかしたら何か企んでいるのだろうか?
しかし、この状況下で下手に動いてもしょうがない。ここは一つ様子を見てみる事にした。
「ふむ、では申してみよ」
王がそう言うとシュリンはゆっくりと話し始めた。
「私はこの国のS級冒険者としてアーカムとは良くお話しするのですがその中でフールの追放届けを記入しているのを確認いたしました。もしかするとギルド内にあるアーカムの部屋のデスクにその紙があると思うのです」
「なっ⁉︎」
シュリンの言葉にアーカムは後退り、足が震え始めた。
額には汗が噴き出て、何とも図星としか思えない表情だ。
「なるほど、それが本当なら大きな証拠となる」
「王よ、私が転移魔法を使い、その証拠をお見せしたいと思うのですがよろしいでしょうか?」
「おぉおおおいいい‼︎ 何を勝手な⁉︎ や、やめるのだ‼︎ おいシュリン‼︎」
アーカムがシュリンの方へと向かっていこうとするが、バール王は側近の兵達に合図を送ると兵士達はアーカムを囲い、拘束した。
「お前は大人しくしておれ……シュリン、行ってまいれ」
「有難き」
シュリンは立ち上がり、魔法を詠唱すると瞬く間にその場から消えた。そして数分が経つと消えた場所からシュリンが出現した。手には何か紙を丸めて持っていた。
「これが、フール追放の証拠です」
そう言ってシュリンはバール王へとその紙を開き見せる。
その紙にはフールを正式に解雇する事を認める文章と印鑑が押されていた。これは正真正銘、フール追放の最大の証拠である。
「き……貴様!! ギ、ギルドを裏切るとはどう言う事だ‼︎」
アーカムは拘束されながらもシュリンの方を睨みつけた。
「……」
しかし、シュリンは何も言わずその紙を王へと受け渡した。バール王はその紙の内容を隈なく読み、全てを読み終えた時、改めてバール王はアーカムの方を見た。
「アーカム、これはどう言う事だ?」
「何を言ってらっしゃる王‼︎ それは大分時間が経っている資料であります‼︎ フールはギルドに戻ってくる予定だったのですよ! 私はそれを受け入れる為に再び入団の紙を準備していた! ほらこれを見ろ‼︎」
そう言ってアーカムは、懐からくしゃくしゃになった紙を1枚取り出したのだ。恐らく、念のために急いで準備して来たに違いない。
「フール、お前に問う。お前はここのギルドに戻る意思があったのか?」
王は俺に向かってそう聞いてくる。
「フール‼︎ そうだろ⁉︎ 悪い事は言わない。お前には良い待遇を受ける権利を与えてやる‼︎ さぁ戻ってこいフール!」
まただ……ダレンの時と同じ……今更俺の事が必要になると直ぐに手の平を返したかのように態度が変わる。それは自分達の私利私欲を満たす目的のために俺を引き止めるのだ。この台詞を何度言わなければならないのか……まぁ馬鹿には言わないと分からんのだろう。
俺はその場に立ち上がると王へ真っ直ぐな視線を向ける。
「王よ。私はギルドで酷い仕打ちを受けて来ました。それはギルドメンバーをはじめ、この国の自慢であるはずのS級パーティ達からも馬鹿にされ、私は雑用係と成り下がっていました。その中でさらに私の素性も知らずにギルドは私の解雇を言い放った。そして、今になって私がギルドに大きく貢献できる存在だと知るとこのように王までも欺いて、報酬を得ようとする凶悪な団体なのです! 私はそんな団体に再入団するなど考えた事は一度もございません‼︎」
俺は大きな声で真っ直ぐに自分の思いを話した。この空間が一瞬、音が消えたかのように静かになる。そして、バール王はその場から立ち上がり、俺の元へとくると俺の両肩を掴んだ。
「フールよ、良くぞ言ってくれた。我にはっきりと自分の思いとことの経緯をしっかりと話せる者はそう多くはいない。褒めて遣わそう!」
バール王は俺にそう言葉を残し、今度はアーカムの方へと歩み寄ってくる。
「アーカム、貴様には期待しておったのだがな……このような素晴らしき青年の成長を妨げていたとは……それに貴様のところのギルドはどう教育がなされているのかね? 私はそんなところに援助金を出した覚えなどない。それに……我までも騙そうとするとは舐められたものよ」
「ま……待って下さい王よ……王よ‼︎」
「アーカム……私は非常に残念でならない。考えてみればこのような素晴らしき一般冒険者がいるのだ。わざわざギルドと言うものを作り、そこに金をかけなくても良いではないか……」
アーカムは王から顔を下げ、項垂れる。アーカムの顔は涙と鼻水でぐしょぐしょだった。
「我はこの国の民を大切にしておる。だからこそ、この国の英雄を邪険に扱っていた事が何よりも許せないのだ……アーカムよ、最後に言っておきたい事はあるか?」
アーカムは項垂れながら、首を横に振った。
「うむ……では、アーカムを地下牢に入れるが良い! よってギルドマスター不在によりバールの国ギルドを解散とする‼︎」
王のその言葉が部屋中に甲高く響く。アーカムは兵士たちに抱えられるように横の部屋から連行されていく。
静かになった謁見の間でバール王は一つ咳払いをした。
「シュリン、見事な計らいであった。しかし、お前もフールの追放に加担していた事を忘れるでないぞ」
「はっ! それでは……私はこれで失礼します」
シュリンが後ろを向いて、部屋から出て行こうとする。
「待て」
しかし、俺は一言でシュリンの歩みを止めさせる。
「何が目的だ?」
「……貸しをなすりつけただけ。別に貴方から何も取ろうだなんて思ってないわよ。ただ、私だけは他の奴らとは違うと思って欲しかっただけよ」
シュリンはそれだけを残し、そのまま謁見の間から出て行ってしまった。セシリアとルミナがよく分からないと言った表情で見ている。
「これって……解決で良いのよね?」
セシリアは首を傾げながらそ聞いてくる。
「ああ、そのようだ」
「よ……よかったですぅ……」
ルミナが安心したようにホッと息を吐いた。
もしかしたら、シュリンだけは元々本当にまともなS級冒険者だったのかもしれない。それが、アーカムやダレン、そしてギルドメンバーのように悪い仲間のいる環境下にいた為、良心が霞んでしまっていたのだろう。だから……最後に償いの気持ちを見せたと言ったところか……
本当に良く分からないものだ……S級というものは……
まぁこれでクソッタレどもの根源が取り除かれるのであれば俺は何も言わないさ。
「では、我が国を救ったお前達にはこれより褒美を授けよう‼︎」
王の言葉に3人はさらに深々と跪く。しかし、両サイドのルミナとセシリアの尻尾がフリフリと揺れ、嬉しさを隠しきれていない様子だった。
やれやれ、全く……可愛い奴らだ……
最後までお読みくださりありがとうございます!
【作者から皆様にお願いがあります】
「ギルドざまぁみやがれ!!」
「セシリアとルミナかわええ……」
「今後の展開はどうなる!?」
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