第141話 蒼炎の大魔導師
「ふ、ふん。何よそれで勝ったつもりかしら! 調子に乗らないでちょうだい!! さあ死になさい! 【黒連火球】!!」
ロノウェーザは狼狽えることなく、魔法を詠唱する。ロノウェーザの周囲に大量の黒火球が生まれると一斉にシュリンの方へと向かった。しかし、シュリンは避けようとはしなかった。ただ、まっすぐ殺気を向けるばかりだ。
「くっはははは!! 到頭、頭がおかしくなって避けようともしなくなったか!」
「【蒼炎ノ壁】」
シュリンが魔法を詠唱するとシュリンの周囲に青い炎の壁が立った。その壁に直撃した黒火球は音を立てずに蒸発する。
「何ですって? 私の黒火球が……喰われた?」
「そう、この炎は赤よりも熱い烈火の炎。正しく、怒りを超えたその先の完全燃焼の火。全ての火を呑み込み焼き尽くす、復讐の蒼炎よ」
「普遍的だが情熱の赤、冷徹で残酷な冷たい黒、そして怒り抱えた復讐の炎……蒼。最強の火の色を貴様が使えると言うのか!?」
ロノウェーザはそれでも火球をシュリンへと浴びせるがシュリンの蒼炎ノ壁の前では無力だった。今まで熱を吸収していた黒が逆に冷気を飲み込まれて行く。
「おのれ!! おのれぇえええええ!!!!」
無我夢中に黒火球を投げるロノウェーザを呆れた目で見るシュリン。シュリンは青い火の玉を作り怒り狂うロノウェーザへ向けて投げた。
「【蒼火球】」
ロノウェーザの投げる全ての黒火球を貫通し、そのままロノウェーザの肩に着弾した。
「ぐはぁあああああ!!」
肩に当たったことで、ロノウェーザが持っていた大杖が手放される。右肩が黒く焦げ、服の下から見える爬虫類特有の鱗がドロドロに溶けていた。
跪き、油汗を流すロノウェーザへシュリンは余裕の表情を浮かべていた。しかし、劣勢な状況でもロノウェーザは不敵な笑みを見せる。
「ふふふっ……まさかここまでやるとは思わなかったシュリン。だけどね、私も負けるわけには行かないのよ! あの方の為に例えこの身が滅びようとも!!」
ロノウェーザは上半身の着物を脱ぎ、唸るような声を出す。すると、爬虫類特有の鱗が身体全体の肌を覆う。ぶちぶちと肉が切れるをたてる音が聞こえる。ロノウェーザの身体が徐々に大きくなり、異形の存在になっていく。先ほどまでスレンダーで美形な姿をしていたロノウェーザは化け物姿へと変貌した。巨大な蜷局を巻き、顔は蛇の様な形相になっていた。
「私の真の力、世界的特異能力の力、【魔力暴走】で貴様を葬り去ってくれる!!」
ロノウェーザは巨大な手の上で黒火球を生み出すとシュリンへと投げる。シュリンの目の前にある蒼炎ノ壁に直撃したとき、いつもなら徐発していた火の玉が壁を貫通したのだ。
「何?」
シュリンは冷静にそれを避けるが紙一重であった。シュリンの左の頬が切れ、血が流れる。
「私の力は一時的に魔法の潜在能力を向上する力を持つ!! たとえ貴様が最強の炎を使おうと今の私の魔法は同等の力を得ているというわけだ!!」
「つまり、これで本当の力比べができるってわけね」
「な、なんだって」
シュリンは両手を使って魔力を溜め始める。
「この戦いに勝てば、能力を持つ貴様よりも私の方が正式に上と言う事を証明できる」
「な、な、生意気なぁあああああ!!!!」
両者が両手で魔力を溜めて構えた。シュリンは青い巨大な球が。ロノウェーザには黒い巨大な球が生まれている。今まさに、両者の火球がぶつかろうとしていた。
「死ねぇええええ!! 【超黒火球】!!」
「”蒼炎球”!!」
両者が魔法を解き放ち、2つの火球がぶつかり合う。両者の火球の衝突によって眩い閃光と激しい衝撃波が生まれた。
「ぐぅうううう!!」
「はぁああああ!!」
魔力の鍔迫り合いは少しだけ、ロノウェーザが押していた。単純な火球の大きさと質量によってシュリンの蒼炎球が押されている。
「はぁはははははは!!!!! やはりその程度よ人間の力と言うのはねぇ!!!!」
「くぅう!!」
どんどん、押されていくシュリンは力を込めて何とか踏ん張っている。やはり、どうすることもできないのか。そう思った時、背中に何か感触が伝わって来た。シュリンが振り向くと後ろにはアイギスがシュリンの背中に触れていた。
「あ、あなた!?」
「シュリン、手伝うわ」
「休んでなさいって言ったでしょ!!」
「あいつを私たちの代わりに倒してくれるんでしょ? 実らない愛がどれほど辛いものか私にはわかる。でも、その人を愛する力がどれほど乙女を強くさせる者なのかあいつに見せつけてやりな!!」
「アイギス……」
アイギスが手を通じて、シュリンに残りの魔力を流す。底を着き掛けていた魔力が回復していく。
「私は……負けない!!」
シュリンが力を込めるとロノウェーザの火球の3倍以上の大きさの蒼炎球へとなった。
「な、なんだ!? 急に力が!?」
押されていたシュリンの火球は一気にロノウェーザの黒火球を押し上げ始める。
「馬鹿な!! そんな馬鹿なことが!! 私の思いがあんな小娘に負けるなんて!?」
「貴様は、絶対に私には勝てない。なぜなら、お前は本当の怒りをしらないからよ」
「くっ、ぐあああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
蒼炎球は黒火球を押し、等々ロノウェーザの体は黒火球と蒼炎球に飲み込まれた。激しい閃光と共に大爆発し、茸雲が立つ。舞い散る煙が落ち着いていくとそこにはロノウェーザの姿は消えていた。
ダレンと同じく、身体が全てがこの世から浄化されたのだろう。全てが終わったシュリンは反動で、その場に倒れた。
「シュリン!?」
「私は、大丈夫よ」
アイギスはシュリンの手を肩に回し、運びながら歩き始める。
「やったわね。ありがとう、私たちの分まで」
「礼なんていいわ、それよりも私もフールの元へ行かなきゃ」
「駄目よ! そんな体で……」
「貴方もでしょ」
「そうだけど、とにかくパウロも起こして一度離れるわよ。フール達ならきっとやり遂げてくれるわ」
「……」
シュリンは首に巻いたペンダントを再び見る。それはダレンが肌身放さず持っていてくれた私の自画像が埋め込まれたロケットペンダント。
私が、伝えなくては。ダレンの代わりに、フールに。そう思った瞬間、耐えきれぬ疲労感によって闇の中へと入りこむようにシュリンは気絶してしまった。
こうして、シュリンとロノウェーザの戦いはシュリンに軍配が上がったのであった。
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