第138話 “魔鎧ノ王”エリゴース戦①
クラリスがレヴィーアを足止めしてくれたお陰で、俺はウォルターに連れられ石橋を走る。
そして、颯爽と入口に到着した。入口では荷馬車から仲間達が降りており、俺の帰りを心配そうに見つめていた。
「フールさん!! 大丈夫だった!?」
「ああルミナ、何とかな。ウォルターが居なかったら俺は確実にやられていたよ」
俺はウォルターの馬から降りてウォルターに礼を言う。
「ありがとうウォルター」
「俺たちの仕事はお前達をここへ連れていくサポートだ。例など要らぬ。早く行け、頼んだぞフール」
「わかった。外は頼んだぜ」
「行ってこい、奴を倒してくれ」
俺達は遂に奈落ノ石橋を抜けて奈落ノ深淵の入口向かう大穴へとたどり着いた。ここを降れば奈落ノ深淵に入る事ができる。
「みんな準備はいいか?」
「私はオッケーよ!」
「わ、私もです! 最後までフールさんにお供します!」
「さぁ最後の冒険へレッツゴーなんだぞ!!」
皆の覚悟を確認し、俺達は奈落ノ深淵へと向かっていた。
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一方、奈落ノ石橋付近の戦場で暴れる竜の足元にて静かな、そして小さくも大きな戦いが起ころうとしていた。
騎士のパウロとアイギス、そして魔人エリゴースが睨み合っていた。この2人は一度ビフロンス湿地のダンジョンにて戦いエリゴースに敗北していた。
パウロ、アイギスは馬から降りる。パウロは長槍、アイギスはメイスを取り出しゆっくりと構えた。それに合わせてエリゴースも大剣を2人に向けて構える。今、あの時の勝利を取り戻す為の戦いが始まろうとしていた。
2人は同時に勢いよく飛びだす。長槍は腹に向けてメイスはエリゴースの兜に向けて振り下ろされる。同時に向けられた攻撃はエリゴースでさえも避けきれないと思った。だから、エリゴースは避けようとはしなかった。
エリゴースは構えた大剣を下から切り上げるように振る。パウロの長槍、アイギスのメイスの順番に弾かれ、2人はまたしても攻撃を弾かれた。
「うぉおおおおーー!!」
「はぁああああーー!!」
2人は声を出し、気合を入れ交互に攻撃を出し合った。2人の息はぴったりで息も吐かせぬ連撃でエリゴースを押している。
そして、等々パウロの攻撃によってふらつきを見せたエリゴースの顔面にアイギスのメイスが叩かれ、鈍い音を響かせる。
その攻撃でエリゴースの動きが止まる。
「パウロ! 今よ!」
「よっしゃぁああああ!!!!」
パウロは長槍を勢いよくエリゴースの胸元を突いた。エリゴースは衝撃によって吹き飛ばされるが、倒れ無いように大剣を地面に刺して踏みとどまる。
「こいつ、ロノウェーザがいねぇと大した事ねえな。アイギス! このまま一気に」
「待って! 何か様子がおかしいわ」
アイギスが攻撃を畳み掛けようとしてたパウロを制止する。
エリゴースは兜の口から煙を出しながら、呼吸をする。大剣を地面にさし唸るような声を出すと、鎧の周りに紫色のオーラが生み出された。
「世界的特異能力が来るわよ。あの紫色のオーラは一時的に自身の筋力を最大限に向上させ痛覚無視を与える能力“獅子奮迅”正に暴れる獅子の如くね」
エリゴースの体全てに紫色のオーラが纏われる。エリゴースは再び大剣を抜くと構えをとった。エリゴースは地面が陥没するほどの蹴りをすると、瞬時に2人の元へと近づいた。
「この速さ! あの時と同じか!!」
エリゴースのは大剣を薙ぎ払う。2人はそれを即座に回避するが、風圧によって吹き飛ばされた。
体制を崩したパウロに今度はエリゴースが攻撃を畳み掛けてくる。エリゴースはパウロへ大剣を振り下ろす。
「くぅ!! 何のこれしきぃ!!」
パウロは長槍で受け止めるが、大剣とエリゴースの重みによって足がガクガクと震えている。
「パウロ!!」
「アイギス!! こいつが俺を止めている間に後ろからやれ!!」
パウロの言葉を聞いてアイギスはメイスを持ってすぐに立ち上がり、メイスに魔力を込めながらエリゴースの後ろへと駆け走った。
そして、エリゴースの背中へ向けてメイスを振るう。
「“魔力撃”!!」
メイスがエリゴースの背中に触れると、メイスに込められた魔力が破裂し衝撃波生まれる。本来この攻撃を受けると金属鎧は粉々になるはずなのだが……
「嘘……でしょ」
エリゴースには傷1つ付いている様子はなかった。今のこうげきにエリゴースは怒りの雄叫びを上げるとアイギスの魔力撃以上の衝撃が生まれ、パウロとアイギスはまたしても吹き飛ばされた。
「くっ……くっそ……」
「くっ!」
2人はもうボロボロになっており、立ちあがろうとしてもうまく力が入らない。
エリゴースは2人へ止めを刺そうとにじり寄ってくる。
やはり私たちでは勝てないのか……
2人は絶望的な状況に為す術なく、このまま死を覚悟した。
その時だった。
「“火球”!!」
突如、上から大きな火の玉がエリゴースの体に直撃し、エリゴースの体が吹き飛ばされる。
「随分調子に乗ってるじゃない」
エリゴースと2人の間に入ったのは黒髪の美女シュリンだった。
「あ、貴女……フールの仲間の」
「あいつに用があるのは貴女達だけじゃないわ。散々私の前に現れては邪魔をして来たわよね?」
目線はエリゴースへ向けられる。エリゴースは口から出る煙の量が増え、更なる怒りを露わにしていた。
「上から見てたけど、大分苦戦してるみたいじゃない? ここは私がやるから、今は休んでなさい」
「駄目よ! 私達が此処で倒れたらまたあいつに負けてしまうわ。だから……」
「じゃあ、此処で私があいつに勝ったら一緒に勝利したってことにしないかしら?」
「で、でも相手は世界的特異能力を使えるのよ!! 1人で勝てるとでも言うの」
「勝てる、いや、勝たなきゃ行けない。フールばかりじゃなくても私もいいとこ見せないと。何でも“元”S級冒険者なんだから」
シュリンの言葉を聞いてアイギスは何も言わなかった。ただ後ろで静かにシュリンを見届け、気を失った。
「さぁ! 始めるわよ!! 私と貴方の最後の戦いを!!」
シュリンは周囲に火の玉を作り、戦闘体制に入った。
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