第136話 アビスブリッジの死闘①
ウォルターたちの到着によって本当の戦争がはじまった。
後ろからの支援によって一方的だった相手の攻撃が落ち着き始めたことによって俺達が進行できる隙が生まれる。
大地巨竜の突進によって、奈落ノ石橋付近にいた者達を一掃することに成功した。
奈落ノ石橋は大地巨竜の身体が大き過ぎる為、石橋に入ることができない。ここからは一度大地巨竜から降りて奈落ノ石橋を渡らなくてはならなかった。
勿論、何の用意もなしにここに来たわけではない。あらかじめ作戦を立ててからこの戦場に来ている事は念頭に置いておけ。
更に、ここからはチームを分ける。全員で石橋を渡って奈落ノ深淵に迎えるほど、相手の力は甘くない。
「ルミナ! ソレーヌ! 準備しろ!!」
「わかった!」
「了解です!」
「オイラもいくぞ!!」
「シュリン! アルとイルの事を頼む!」
「子守りはこれっきりにしなさいよ!」
「アル! イル! 無理しちゃダメだぞ!」
「「うん! わかった!!」」
よし、指示は全て伝えた。後は行動するのみだ。
☆☆☆☆☆
フール達の後方では騎士の進軍に合わせて、ウォルター達による騎馬隊も走り始めた。
馬は士官級以上の者達が乗っており、その中にはウォルターは勿論、アイギス、クラリス、そしてパウロの姿もあった。
ウォルター達のすべきことの最優先事項はフール達を奈落ノ深淵へと辿り着かせることだ。一刻も早くフール達の元へと駆け寄るために馬をひたすらに走らせる。
ウォルターの騎士や徴収兵達とバルバドス軍の兵士と冒険者達が荒々しく戦うその戦場を例え敵が道を防ごうとしても、疾風の如きその速さで道を無理矢理にでも切り開いていく。周りの騎乗兵が1人、また1人とやられ、道を止められたとしても、ウォルター達は振り返ることなく進んだ。
「くそっ!! ウォルター!! 突き進むだけなんて無茶だぜ!」
「今は進め! フールの元へ向かうまでは恐るな! 振り返るな!!」
「パウロ、喋ってる暇あるんだったら、少しでも馬の速度を上げたらどうかしら」
「い、行きましょう! 皆さんで!!」
馬を走らせて、いよいよウォルター達はフールの乗る大地巨竜の後ろ脚まで辿り着いていた。
竜の横を通り、フールの様子を見る。どうやらここから降りるみたいだ。
今のうちに俺達が先に向かって……と思っていたその時だった。ウォルター達の目の前に突然黒騎士が現れた。そいつは玄武のダンジョンで出会った魔人エリゴースである。
「あなた!? あの時の魔人!!」
エリゴースは鉄仮面から白い煙を吐き出しながら、グレートソードを背中から抜くとウォルターに向かって振り下ろす。
「隊長!!」
「ああ糞ったれぇぇ!!!!」
パウロは背中の槍を抜き、自身の馬の身体を横を走っていたウォルターの馬にぶつかる。ウォルターの居た位置にパウロが入り込み、グレートソードの刃を槍で受け止めた。
パウロは押しつぶされそうな力で殴るエリゴースの攻撃を歯を食いしばって必死に耐える。
「たぁあああああ!!!!」
そこへ、隙だらけのエリゴースの腹部へ向けてアイギスがメイスを振るう。メイスが鎧に当たる鈍い音が響くがエリゴースはびくともしなかった。
「パウロ!! アイギス!! 大丈夫か!!」
「パウロさん! アイギスさん!!」
「こいつは俺たちが引き留める!! だから隊長達は先に進め!!」
「ここは私たちに任せてフールを!!」
「くっ……すまない、進むぞクラリス!!」
「えっ!? は、はい!! 2人ともご無事でいてください!!」
辛くとも離脱していく仲間を振り返ってはいけない。ウォルターとアイギスは自身の使命の為に走り出す。
☆☆☆☆☆
フールは合図を出したと同時にルミナとソレーヌ、そしてパトラが竜の背から降りた。
「さあ出てこい!!」
フールも飛び出すと同時に、腰に付けていたバッグを広げ逆さにする。すると、バッグの小さい口から魔方陣が浮き出るとフールたちが乗っていた荷馬車が飛び出し、地面へと召喚される。
そう、これはフールの杖の入れ替えの際に利用していた空間収納と物体転移の魔法を使った応用だった。
物体転移を使って空間収納の魔法をかけた鞄へ荷馬車を転移させたのだ。すると鞄の中に荷馬車を持ち運ぶことができるようになる。あとは、物体転移で呼び出せばいいと言う話だ。
大地巨竜の足元に召喚された荷馬車に4人は無事に着地し、俺とパトラはすぐに馬を操り走らせた。大地巨竜のおかげもあって奈落ノ石橋への道を進むことができるだろう。
「みんなしっかり捕まってろ!! 飛ばすぞ!!」
「よーーし! 出発だぞ!!」
俺とパトラは息を合わせて2頭の馬を走らせた。戦場の中を荷馬車が駆け走る。運が良いことに奈落ノ石橋への道が開け、そのまま石橋へと突入する。しかし、バルバドス軍もそう簡単には進ませようとはしてくれない。
「フールが石橋へ入った!! 石橋付近の者たちは進行を阻止しなさい!!」
フールが石橋へ入ったことがロノウェーザに知られ、全体に指示が入る。フールが後ろを見ると、多くの騎兵が群れを成してフールを捕まえようと猛進してきていた。
「ぐぇーー!! 来たんだぞぉ!!」
「パトラ! 落ち着いて速度を上げるんだ!!」
俺たちも馬を操り速度を上げる。しかし、こちらは4人も乗った大型の馬車だ。重量を考えたら個々で走らせている騎馬の方が軽量であり、その速度が出る。
段々と距離を詰められ、大ピンチになっていたその時、バルバドスの騎馬隊の更に後ろの方が何やら騒がしい様子だった。遠くを見ると2人の騎馬が騎馬隊の後方をなぎ倒している。
乗っているのは見慣れた騎士だった。
「フール! 走れ!!」
「フールさん! 私たちが助太刀します!!」
ウォルターとクラリスが駆けつけてくれたのだ。2人の戦闘力はバルバドスの騎馬隊を数体を簡単に倒すほどの実力だった。
後ろは安心して大丈夫だろう。そう落ち着こうとしたがそうすることはできなかった。
「ぎゃーー!! フールフール!! 前前!!」
パトラが何やら騒いでいた。俺が正面を向くと馬に乗った一人の女性が橋の中央で待機しているのが見えた。
「戦場の方はゼーブたんに任せてるし、ここは私の出番かな♪」
白いペガサスの様な美しい馬に跨っているのはエメラルド色のツインテールをなびかせた四大天の1人、レヴィ―アだった。
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