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第121話 セシリアの脱獄大作戦

 フールたちが地下水道に入る頃、セシリアはマルルクとの戦闘に敗れ、バルバドス城内の地下にある広大な牢獄の一角、冷たくごつごつした石の床の上に橋たわっていた。

 除々にセシリアの意識が覚醒していく。ゆっくりと目を開けると目線の先には鉄格子があり、周りは土で固められた壁で囲まれている。幸い防具はそのままだが武器である烈風は取り上げられてしまった。


「あれ? ここは? そうか、私、あのマルルクとか言う魔人に負けて……えーーっと」


 思い出そうとするがここまでどう来たのか覚えがないのは当然だ。ずっと気絶していたのだから。


 考えるのを止めて、鉄格子へ近づいて引っ張って見たり、押したりしてみるが開くことはない。どこかにこじ開けられる隙間や叩いたら壊れるほど老化した部分が無いか調べても、脱獄にうまく使えるような場所はない。


「うーーん! だめかぁ……」


「暴れまわってうるさいぞ!」


 鉄格子の奥にある廊下を歩く音と共に槍を持った兵士がやってきた。


「ちょっと! ここから出しなさいよ!!」


「うるせい! おとなしくしていろぅ!! ひっくっ!!」


 よく見るとこの兵士、面は赤く火照っている様子だった。

 しかも、大分酒臭い。


「ちょっと!? 酒臭いわよ!? 業務中じゃない!!」


 セシリアは捕まっているのに思わず突っ込みを入れる。


「うるせぇ!! 俺はひ兵士を毎日、毎日こき使いやがっへぇ!! 飲まねぇとやってらんねぇんだよ!!」


 そう言いながら、兵士は懐から瓶を取り出すとコルクを外してごくごくと飲み始めた。


「くうぅーー!! この為に生きてんだよんぁ! 近くの酒蔵から盗んで飲む酒はうんめぇ!!」


「そんなことして、脱獄者でも出たら大目玉食らうんじゃないのーー?」


「大丈夫だもんねーー!! ここで酒飲んでてもこの牢獄から脱出何てできやしねぇよ! 俺様の持ってる鍵がなきゃ開かねぇんだからよぉ!! 見回り何て退屈だし、人の出入りもすくねぇんだ! 楽な仕事だぜ」


「ふーーん」


 その時、セシリアに電流走る。

 セシリアは何かを思いついたのか目を光らせてにししと笑う。良い悪だくみを考えて、思わず尻尾を振っていた。早速、実行することにした。


「けほっ! けほっ!」


 セシリアは大きく派手に咳き込み倒れる。


「ああん!? 急にどうした?」


「ねぇお兄様、私、急に具合が悪くて……体が熱くなってきちゃった♡」


 そう言いながら、防具の衣から見える胸の谷間を()()()()強調するように衣をはだけ始めた。

 そう、これはセシリアの「酔っ払いに()()()()お色気作戦」である。

 ルミナには胸の大きさは怠るものの、美少女の誘惑に男が惹かれないはずが無い。ましてや、べろんべろんに酔っぱらった男ならなおさらだ。てか、引っ掛かってもらわないと自信無くす。

 案の定、男は目にハートが付いたようにセシリアの谷間に釘ずけになっていた。安心した。


「なにい!? それは大変だなぁぐへへぇ……実は俺様は医術の心得もあってらな!」


 そう言いながら鍵を取り出してセシリアを閉じ込めていた檻の錠を開けてしまった。何とも間抜けで滑稽である。


「どこが悪いんだぁお嬢ちゃぁん♡見せてみなさい♡」


「あん♡鼻息荒い♡こーーこ♡もっとよく見て♡」


「うひょーー♡」


 男が胸に釘付けになっているその隙を利用して、セシリアの足が男の急所にダイレクトアタックした。

 その強烈な一撃に男は泡を吹いて倒れ、白目をむいてしまった。

 セシリアははだけさせた服を元に戻して立ち上がる。


「え!? うまくいきすぎじゃない!? ちょろすぎてびっくりなんだけど!?」


 セシリアは気絶した男から鍵を奪い、男をセシリアのいた檻に閉じ込めた。


「ふん! 誰が触らせてやるもんですか!! ベぇーー!!」


 セシリアは男に舌を出して煽った後、走り始める。

 とりあえず牢獄を抜け出すことができたので、地下から出ることが次なる目的だ。

 地下の中は暗いものの、道は松明の火で照らされている。←

 セシリアは回廊を走っていると正面から人の気配を感じ、咄嗟に物陰に隠れた。現れたのは先ほどの酔っ払いの兵士とは違い、セシリアよりも何倍も大きい巨漢な兵士が現れた。金属鎧を身に纏い、片手には大きな大鉈を持っている。大男は舐め回すように辺りを見ながら徘徊している。おそらく、こいつも見回りに来たのだろう。


「見つからないもんねぇ〜〜」


 セシリアがその男が居ない方向へタイミングを見計らやって歩こうと振り向いた時、セシリアは何か硬いものにぶつかって尻もちをついた。


「痛っ! ちょっと、なに?」 


 セシリアが目線を上げると、そこには徘徊していた大男がもう1人いたのだ。


「嘘でしょ」


 大男はセシリアに向けて、大きく振りかぶってその鉈を振ってきた。

 しかし、動きが遅いのでセシリアは難なく避け、大男の横を通って走り出す。

 もう一人の大男もセシリアの存在に気が付き、追跡を始めた。


「ちょっと!! 何でよ!! 見つかるの早すぎよぉ!! 出口はどこなのよぉ!!」


 後ろから金属鎧の擦れる音が聞こえ、恐ろしくて仕方がなかった。次はセシリアの鬼ごっこ編へ突入することになるようだ。

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