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第116話 地下水道の聖女

 マーフォークの襲撃を退け、"炎の精霊"サラマンダーを仲間に、俺たちは再び地下水道を歩きだした。

 結局、サラマンダーは石から出てきており、俺にべったりとくっついていた。


「サラマンダーさん、熱いんですが」


(えーーフーたんとあーしの仲じゃん。それに、もっと仲良くなっておきたい的な♥)


 恐らく、いくら言っても多分聞かないので飽きるまで好きにさせてやることにした。俺の胸元にある緑の石の中でおとなしくしているシルフからの視線が怖いのだが。

 それとしてふと思った事がある。それは、サラマンダーの前の主人の事だ。どういった人が好かれていたのか気になる。


「サラマンダーの前の主人は誰なんだ?」


(何で元カレの話するのよ)


 サラマンダーが膨れた顔をする。


「いや、君は力が強い人が好きで、唯一言う事を聞いていたって言ってたからどんなすごい人なんだろうなって思ってさ」


(うーーん。まあ、元カレってより女だから元カノなんだけど。そいつ魔人なのよ)


 サラマンダーの言葉でここにいる全員が反応した。さっきまでの和みのある雰囲気は一気に緊張感へと変わる。


(ん? ん? え? ちょみんな? どしたの?)


「サラマンダー、その魔人っていうのは何て名前だ?」


(え?あーー、ロノウェーザって言う”A級モンスター"エキドナの魔人よ)


「君はどうして捨てられたんだ?」


(捨てられたっていうか、忘れられたっていうか。話少ししか聞こえなかったけど、ウォルターっていう人間と戦って、そいつの力でここへ飛ばされてきて一一水に落ちた時に元マスターのペンダントが取れて、そのまま流れて行っちゃったのよね)


 ウォルターと戦ったということはビフロンス湿地に居たということになる。つまり、サラマンダーの前の主人はパルバドスの手下である魔人に違いない。


「他に知っていることはあるか?」


(うーーん、でもあーしただそいつの魔力が欲しくて居ただけなんだよ。だから、そいつの生活とかまったく興味なくて、呼び出されるまではずっと寝てたんだよねーーあはっ★)


 となると、これ以上サラマンダーから話を聞いても情報は出てこないだろう。


(でも、そのおかげでフーたんと出会えたんだけどねーー♥って、みんなどったの? 怖い顔して?)


「実はな、君の元主人と俺たちは敵対してるかもしれないんだ」


(どゆこと???)


 俺はこれまでに起こっていることをサラマンダーへ話した。


(なんそれーー!! え!? フーたん達超可哀想!まじぴえん通り越してぱおんなんだが!? 会ったら絶対あーしがぼこぼこにしてやんだから!!)


「助けが欲しいときは言うよ」


(うん! いつでも言ってねフーたん♥ダーリンの方がいい?)

「......フーたんで」


(だーめ♥どっちも♥)


 俺に元から選択権など無かったようだ。宙に浮いているサラマンダーが後ろから強く抱きしめてくる。豊満な胸を押し付けられていて窮屈だ。更に胸元の緑の石の中に居るシルフさんの視線が怖い。本当にうまくやっていけるのだろうか?


「きゃあああぁーー!!!!」


 心配している矢先、どこからか女性の悲鳴が聞こえてくる。これは仲間のものではない。


「フールさん! 向こうから悲鳴が!!」


 ルミナが指さす方向は俺たちが進む道の先である。


「行こう!」


 俺たちは足場の悪い道をできるだけ早く駆け走った。道の奥の曲がり角を進むと、そこにはマーフォーク2体の背中が見える。


「またマーフォークか!」


 この数ならすぐに倒せる。そう思った時だった。


(よっ!)


 俺たちが攻撃を始めるよりも先にサラマンダーが指から火の矢を2本生み出し、マーフォークのこめかみへ2体同時に打ち抜いた。

 マーフォークが振り返る頃にはそのまま意識を失い、その場に倒れる。


(にへへ、倒したよダーリン♥)


 やはり、サラマンダーを仲間にしてよかったかもしれない。

 マーフォークの死体の先には腰を抜かせている修道服を着た女性が小刻みに震えていた。

 顔は黒いベールで口を隠しているが、目元を見るだけでも相当な美人だった。


「大丈夫ですか?」


 俺が声をかけると女性は跪き、手を組んで祈り始めた。


「ああ、神よ。等々我らの安息の地すらさえも脅かされる時が来たようです。どうか、私の命はどうなっても構いません。ああ、どうか神よ、最後のお救いを、迷える者たちへお与えください」


 涙ながらに祈る女性の身体は震えている。もしかすると、何かこの修道女は勘違いを起こしているのかもしれない。


「ちょっと待ってくれ。俺たちは別に貴女に危害を加えるつもりはない」


「では、どうしてこんな誰も寄り付かない下水にいるのですか?」


「俺たちは……訳ありなんだ」


「訳あり、ですか」


 修道女は立ちあがり、手を伸ばすと俺の頬に当てた。


「暖かい……」


 それから女性は仲間達一人一人に輝に手を当てる。全員終わると修道女は頭を下げた。


「申し訳ございません。私は勘違いをしておりました。城の関係者が来てしまったと思っておりました。大変なご無礼をお許しください」


「いや、気にしないでくれ。俺はフールって言います。こっちは俺の作間たちです」


「ルミナでーーす!」

「ソレーヌって言います」

「パトラだぞ!」

「私はアル!」

「…..イル」

「シュリンよ」


 気が付いたら、サラマンダーはいなくなっていた。


「大所帯ですことね。私は地下水道で修道女をしております。エミーリアと申します。ここでお話もあれですから、私たちの教会へ案内いたします」


「地下水道に教会?」


「ええ、私たちも()()()なのです。助けて頂いたお礼をしなくては。お急ぎでなければ、どうぞこちらへ」


 セシリアのもとへ早々と向かおうと思っていたが、エミーリアの言葉が少しだけ気になった。訳ありという言葉はいったいどういうことなのだろうか。

 あまり長居をしないことを考慮して、地下水道の修道女エミーリアが導く場所へ行くことにした。

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