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第113話 バルバドス地下水道

 次に俺が目を覚ましたのは太陽が昇り始めてきた頃だった。陽の光が顔に当たったのを感じて目が覚める。ゆっくりと腹を開けると目線の先でルミナが眠っていた。

 頭には柔らかくて暖かい、どこか久しぶりな感触が伝わってくる。

 俺が頭を上げるとそれに合わせてルミナも目を覚ました。


「んんっ?あ、おはようフールさん」


「おはよう。えっと……」


 俺は思わず目線を下げる。勿論、俺の頭が置いてあった場所にはルミナの太腿があった。


「疲れは取れましたか?」


「え? あぁ、大分調子は良くなった」


「それは良かった。もう、しっかり休まなきゃダメなんですからね!」


「心配させてすまなかった。肝に銘じておくよ」


 起きてから、また俺たちは再び馬車を走らせた。俺の身体は昨日と打って変わって調子が良い。野宿でもうまく身体を休ませることができた。これもルミナのおかげかもしれない。でも、次からは身体を休むことも大事にするよ。

 荷馬車を軽快に走らせて数時間、日がまだ真上に来る前に大きな城壁に囲まれた巨大な都市が見えてくる。あれこそ、巨大都市バルバドスの国だ。


「こんな大きな都市を見るのは私初めてです!」


 ソレーヌは荷馬車の窓から首を出して、その大きな都に興味を示していた。

 でも、今日は観光に来たわけではない。

 このまま街道を進んでいけばバルバドスの国へ入るための城門があるが、城門にはもちろん門兵が居るため、お尋ね者の俺たちが正面から入ることはできない。

 そこで俺はウォルターから買ったスクロールを取り出す。そのスクロールには地下水道のマップと地下水道の入口を示すパルバドスの国周辺の簡易マップも書いてあった。

 マップを見るとバルバドスの国から少し離れた森林内に入口があると書かれており、そこへ向かうことにした。

 街道を逸れて、獣道だけの整備されていない道を荷馬車がガタガタと揺らしながら通っていく。これほど整備されていないということは長い間地下水道に来ている者が居ないことを表している。更に言えば、警備もされてはいないということだ。


「ゆぅ〜〜れぇ〜〜るぅ〜〜!!」


「……お姉ちゃん、ガタガタ凄いよ」


 アルは楽しみ、イルはアルにしがみつく。


「ぐわぁあぅあぅ!!とばしすぎなんだぞぉうぉうぉ!!」


 荷台から聞こえるバトラの文句を無視して、足場の悪い道を駆け走る。

 すると、石が積み重なってできた簡易的な壁と屋根に囲まれている地下階段を見つけた。

 おそらくあれが地下水道の入り口だろう


「みんな! 見つけたぞ!」


 俺は馬を近くに止め、特に声をかける。

 ソレースとバトラ、アルとイル、そしてげっそりとしたシュリンが出てきた。


「大丈夫かシュリン?」


「あなた達ねぇ、もう少し丁寧に移動できないのかしら……」


「ごめんねシュリン、私ったらてへっ★」


 一緒に運転していたルミナが悪びれもない様子を見せていた。因みにルミナはノリノリで運転していたよ。


 でも、何とか地下水道入口まで来られたので早速入っていこうと思うが、その前にみんなに渡すものがある。


「みんな、これを身に着けろ」


 ウォルターが俺たちにくれた黒いマントだ。これを着ていれば、幾分かは顔ばれを防ぐことができるだろう。

 全員がマントを羽織り、頭にフードを彼る。これで周りからはただの貧民に見えるはずだ、多分。


「よし、みんな入るぞ」


 俺は荷馬車に積んである松明に火を付けて、先頭を歩く。

 石づくりの階段をゆっくりと降りていくと分厚い鉄格子に差し掛かった。

 しかし、カギはかかっておらず、難なく入ることができた。

 よっぽど長い間誰も来ていないのだろう。来たとしていても、管理が杜撰すぎる。

 国の地下水道は近くに大きな川があり、水はそこから引かれており、川へと戻る仕組みとなっている。

 地下水道はバルバドスの国の地下全体に広がっており、パルバドスの国の水源はここに全てつながっている。その為、この地下水道全体はまるで迷宮のように入り組んでいる。だからこそ、ここを歩くにはマップが必須なのだ。

 俺が松明で辺りを照らし、バトラが地図を見ながらナビゲートをする。それ以外の仲間は周囲の警戒をしてもらっている。

 地下水道の道の真横に下水が流れており、周囲は湿っている。その為、ここも足場が非常に悪い。注意を怠らないためにも、こうして役割分担をして進むのだ。


「うう〜〜寒いぃ〜〜」


 ルミナがプルプルと震える。

 地下水道は地上よりも温度が下がる。

 陽も刺さなければ、明かりの火も無いのでしょうがないことではあるが体調を崩さないためにも早くここから出たい。

 滑って怪我をするのもないので走ったりすることもできないので、そこはみんなで耐えるしかない。

 幸い、マントが機分か寒さを和らげてくれているのが救いだった。


「うう……寒い」


「イル! ほら、こうすれば少しは!」


「お姉ちゃん……暖かい」


 イルが寒そうにしているところにアルが身体をすり寄せ抱きつく。ここが下水道で無ければどれほど愛おしい光景なのだろうか。

 そう思っていた時、パトラが驚き叫ぶ。


「ぎゃぁああああーーーー!!!! 下水の中に大きな陰が動いてるんだぞーー!!」


 そう言いながら、水から離れて、定位置であるソレーヌの頭の上に避難した。

 ソレーヌもパトラの逃げてきた先の水面に何か黒いものが蠢いているのを見つけ、魔導弓を構えた。


「フールさん!! 下水に何か居ます!!」


「みんな気を付けろ!!」


 俺が声をかけたとき、水しぶきと共にその黒い影が複数体飛び出してくる。

 現れたのは魚のようにえらの付いた顔、水かきが着いた手足と大きな三つ叉の槍、ギラギラと松明の光に反射する鱗の持ち主は水中に住むB級の魔物”マーフォーク”が複数体現れた。

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