第112話 今の私が居る
こう言う話が好きなの!
セシリアはワンピースについている小さなポケットから白いハンカチを取り出して、ルミナの涙を拭う。
「なんでないてたの?」
「......こわくて」
「こわい? なにがーー?」
「わたし、みんなとちがうから......でも、おかあちゃんをたすけなきゃって……でも」
ぼろぼろと涙を出しながらルミナは言葉を絞り出す。
途切れ途切れな内容で、お世群にも内容を理解できるものではない。しかし、セシリアはすぐに話の意図を捉えていた。ルミナが持っているにG の入っている袋と汚れたメモが入っていることからお造いを頼まれたのだろうとすぐに分かった。
「どこかおかいものいくの?」
「うん、でもこわくて」
「じゃあ、わたしとおはなししながらいっしょにいこう!」
セシリアはルミナの手を握ると、ずいずいと手を引いて歩きだす。
少し強引な行動にルミナは少し驚いたが、その撮られた手の暖かさが不安な心が浄化されていくような気持ちになった。
それから2人はお店に向かう間、色々な話をした。
仲間外れにされていること、母親が体調を崩してしまったこと、ないてしまったこと、ルミナは初めてあったセシリアにたくさん自分の事を話す。
「だから、わたし、なにもできないなって」
自分の事を話して、最後そんな言葉を思わずこぼした時、セシリアは突然立ち止また。
「セシリアちゃん?」
ルミナが声をかけたその時、セシリアが振り向いてセシリアを抱きしめる。
突然の出来事にルミナは呆然としていた。
「ルミナ! ルミナはできてるよ!! だって、ルミナはこわくてもおかあさんのためにおそとにでて、ここまでがんばったんだよね!! すごいよ!!」
ルミナは自然とまた、涙が溢れてくる。
「そして、いまからおかあさんをたすけるんだよ!! ルミナはつよい!! すごいの!! だってどんなにこわくても、ひとたいせつなひとをたすけるんだもん! まもるんだもん!! だから、すごいんだから、わらってよ!!」
「セ、セシリアぢゃん……」
「だめ! ちゃんづけきんし!! わたしたちはもうおともだちなの!!」
「じゃ、じゃあ、セシリー!」
「うん!!」
「ううぅ……うわあああああああん!!!!」
ルミナはセシリアに抱き着いたままおいおい泣いた。
今まで差別を受けてきたルミナにとって、唯一寄り添ってくれた存在はとてもとても嬉しかったのだ。
そんなことがあり、2人は親友となりいつも遊ぶようになった。セシリアと出会ったおかげでルミナも明るい性格になり、自分から外へ出るようになった。
そんな2人は17歳になると、セシリアがアガレスギルドの冒険者になるという話をルミナは聞いた。実はセシリアは孤児でアガレスギルドのギルド長に引き取られ、生活している。成長したセシリアは育ててくれた恩義の為にギルドに入って冒険者の一員になり、貢献しなければならないと言っていた。だから、ルミナもセシリアと同じ冒険者になることを決めた。もうすでに、なりたい職業は決まっている。
私ができることは誰かを助け、守ること。どんなに恐ろしくとも他人を守り抜く盾となる。
親友が教えてくれたのだ。私の強みを。
こうして、ルミナは『盾士』としてギルドに所属することにしたのだ。
「――と、いうことがあったわけ。あの時のセシリーはかっこよかったなぁーー(今では立派な女の子だけどね)」
ルミナはまるで我が娘を自慢するかの如く、ドヤ顔をしていた。
「ルミナにそんな過去があったなんてな。でも、良かったな。セシリアと出会えて」
「ええ、本当に。セシリーが居なかったら、今ここでフールさんのパーティとも出会わなかったわけだし」
「俺もセシリアと出会ったからこそ、俺の今がある。セシリアが居なかったら、俺はそこらへんで野重れ死んでたよ」
「そんなことない。だってフールさんは強いじゃないですか!」
「俺の力は仲間が居て発揮する力だ。ましてや、単体回復魔法しか使えなかったんだ。【魔力無限】の力を持っていたとしてもいつ死んでもおかしくなかった」
「……」
ルミナが黙り込んでしまった。ルミナの方を見ると少しだけ手が震えている。
「フールさんみたいにどんなに強くても死んじゃう時は死んじゃう。でも、セシリーは強い子だから大丈夫。大丈夫。大大……夫だよね?」
先ほどまで元気だったルミナは口調が変わる。もしかすると、ルミナはずっと心配していたのかもしれない。ずっと元気を装っていたのかもしれない。
大丈夫と、俺の為に、周りの為に。なんて、仲間思いなのだろう。
俺は思わずルミナの頭を無でた。
「フールさん?」
「確かにルミナの言う通りだ。あいつは大丈夫。きっとうまくやる。セシリアの一番の親友が言うんだからな。そうだろ?」
「......当然です!」
ルミナの顔がまた笑顔へと変わった。ルミナと話して肩の荷が下りたのか突然、目眩がし始め、そのまま倒れそうになる。
「フールさん!?」
ルミナが慌てて俺の身体を支え、俺はルミナに覆いかぶさるような態勢になる。
身体を上げようにも力が入らない。どうやら、等々疲労が蓄積された身体が限界を迎えたのだろう。ルミナは慌てて馬を止めた。
「フールさん大丈夫ですか!?」
「すまない、流石に限界がきた」
ルミナの体温が俺に伝わってくる。女の子の体温って結構高いんだな。
その心地よさから、俺はそのまま気絶するように夢の中へと入った。
ルミナは俺が寝てしまったのを確認すると俺を操縦席で横にする。
そして、ルミナは俺の頭を太腿へと乗せる。
「ゆっくり、休んでくださいね」
ルミナは優しく俺の頭を無でる。
フールが眠ってからルミナはゆっくりと荷馬車を再び歩かせ、街道から離れた休めそうな場所で再び馬車を止めた。一息ついたところで、眠るフールの顔を見る。
気持ちよさそうに眠っているのを見て、ルミナは優しくほほ笑む。
「セシリーだけじゃない。あなたも居てくれたから、今の私がある。あなたの事は私が守ります。だから、セシリーの事、よろしくね」
ルミナは夜空を見上げる。
気が付くと、曇っていた空は晴れ、満点の星空が広がっていた。
「実は、私も眠れてないんだけどね……」
そう言いながら、ルミナも瞳を閉じた。
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