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第105話 協会の今後の行動について

 一方で、皆が寝静まったウッサゴの国の中にある聖騎士協会の建物内の一室にて、ぼんやりと周囲を照らすランタンの火を4人の騎士達が囲んでいた。

 それはウォルター、アイギス、パウロ、そしてクラリスの聖騎士協会ウッサゴ支部を支える4人である。

 ビフロンス湿地からアルの力によってウッサゴへと戻ってきてから騎士団達は休まずに仕事をしていのだ。パニックになっていた街の沈静化と整備、倒壊したフェルメル城の周辺調査、負傷した騎士の救護申請やビフロンス湿地についての報告書作成などを今まで行っていたのである。

 ビフロンス湿地にて、多くの仲間を失った騎士団だが悲しんではいられない。聖騎士協会の騎士は仕事で命を落としていく者たちは珍しくない。だからこそ、残された者たちは国の為に仕事を全うすることこそが死んでいった者たちを称える行動となるという考えで動いている。

 そんな多忙な騎士達でさえも身体は人間だ。無限に歩いたり、仕事をしたりすることができる生き物ではないので、夜になれば身体を休ませる。しかし、そんな人間の生理に反して仕事する者たちがここへと集まっている。いや、()()()()()()()()()()()()()()()()()()状況だから仕方ない。これを残業と言う。

 4人が今から行うことは2つのテーマに沿った議論であった。

 1つ目は明日からウッサゴの国民に対してどう説明この騒動をどう説明すべきかと言う事。2つ目はフールたちとの今後の在り方である。


「夜も更けてきて、皆疲れがあると思うが今後についての話し合いを行う前に今日の出来事をまとめる」


 ウォルターの一声で、ウトウトしていたクラリスが起き上がる。


「今回起こった騒動についてだが、騎士団員の誘導によって町のパニックの沈静化は成功したとパウロから報告があった。獣人の少女の力による四神の力の暴走によってウッサゴを牛耳ってたフェルメルの消息および倒壊したフェルメル城の調査については……アイギス」


「はい、私が身辺調査を行ってきましたがフェルメルおよびその側近と思われる者たちは瓦礫の下敷きにされ死亡が確認されました。そして、不思議なことにフェルメル城の倒壊した土地の一部分だけ綺麗に瓦礫が積まれていない場所があったので、そこを調査したところ……地面から隠し扉が見つかり、地下室を発見しました」


「その地下室の件について話してくれ」


「私とクラリスのみでその地下室を調査したところ、何やら研究室のような場所が広がっておりまして。そこでは、非合法な薬品の数々に加え捕らえられた獣人を複数名確認したため、保護した後、救護室で治療を施しました」


「その者たちから話は?」


「いえ、保護したのは良いものの正常に話せる状態ではありませんでした。医療騎士(メディカルナイト)が検査をした結果、薬品の過剰摂取による中毒症状によって精神が崩壊している状況で、いくら中和剤や解毒薬を使用しましたが精神回復することはありませんでした。つまり、何も情報は得られることはできなかった……って結果になってしまったわ」


「……そうか」


 ウォルターとアイギスの間で報告を聞いてたクラリスが重い表情で口を開いた。


「あんなに苦しそうにしてた人を……私は初めて見ました。戦闘で怪我をした人は何度も見てきましたが……薬漬けにされた人は……とても可哀そうでした。どうして……あんなひどいことを私たちと人族ができるんだろうと考えても分かりません」


 クラリスの言葉に、ウォルターが一息置いてから答える。


「分からない君は正常と言う事だ。分かった瞬間、君は人の成りをした悪魔と同じになると言う事だ。クラリス、君は苦しんでいる彼らを見て可哀そうに思ったのだろう? ならば、騎士としてその言葉を忘れるな」


「は、はい!」


 クラリスはウォルターに向けて綺麗な敬礼を取った。

 クラリスの純粋で真っすぐな正義感は騎士団全員が見習わなくてはいけない。それが例え、どの地位についたとしても、とウォルターは思った。

 しかし、そんな綺麗事を嫌う人間もいる。それを体現するような態度でパウロが口を開いた。


「けっ、でもこれでわかっちまったじゃねえか。人々の秩序を守るべき聖騎士協会が、裏では全ての権力を奮って世界を牛耳ろうとしている魔人達に加担しているということがよお」


 そう、パウロの言う通りだ。今回の件で聖騎士協会の|聖騎士協会総取締役会長グランドクロスギルド総取締役会長(グランドマスター)であるバルバドスがフェルメルと共同して人類を四神に変える恐ろしい計画を企てていたことが明らかになったのだ。これが世界に知られれば聖騎士協会全体の信用の大幅な低下が予想される。

 本来なら、騎士団にとって大きな打撃を受けることだが、ウォルターにとってはこれは大きなチャンスだった。実はウォルター自身、聖騎士協会が裏でこのような計画を行っているというのは前々から察してはいたのである。それは、聖騎士協会内の上層部たちの動きが不可解な点があったからである。

 すべてはあの奈落ノ深淵(アビスフォール)の調査で起こった事件以降から聖騎士協会全体はおかしくなった。純粋な正義を持つ騎士団員は自ら聖騎士協会を辞めていくか、正義を振りかざそうと行動を行おうとしている最中に何者かに消されるかだ。過去に仲間だったカタリナもあの事件を忘れるために騎士団から離れて、ギルドへと移転した。

 俺も本当は純粋に正義を全うしたいが為に騎士団に入ったのだが、腐りきった今の騎士団には嫌気がさしていたのだ。いつか必ず、真っ当な正義を奮う事ができる騎士団に直したいとチャンスを作るために、ウォルターは敢えて上層部からの監視の目から逃れるためにウッサゴ支部の騎士団長に自ら志願したのだ。例え、それが昇進の道が遠くなったとしてもだ。

 今まさにその思惑が報われようとしているのだ。この真実を大々的に公表し、一度現在の聖騎士協会を壊滅させるのだ。それこそ、本当の秩序を取り戻すことにつながる可能性がある。


「ああ、しかしパウロ。これこそチャンスだとは思わないか? 俺たちがどうしてわざわざこのウッサゴへ来たのか。本来ならば俺たちの実力ならばバルバドスの国の本拠地で良い地位にでもなれるはずだが、それを捨てでも来たのには理由があっただろ?」


「ああ、分かってる。お前の言っていた聖騎士協会の闇を暴く証拠を手に入れる為だろ?」


「分かってるじゃないか」


「はぁ……最初、お前と会った時はそんなでたらめあるわけねぇって思ってたが、蓋を開けてみたらここまで闇だらけだったとはな……」


「ショックか?」


「少しな……」


 パウロも同じ考えを持った騎士の一人で、荒っぽい口調とは裏腹に騎士団に従順で、真っすぐな正義を持つ人間なのだ。その性格を見込んでウォルターはこの大隊に引き入れたのである。

 最初はウォルターの陰謀論を馬鹿にし、ウォルターを気に入らなかったパウロも真実を知っていくうちに段々とウォルターの事を信用するようになっていた。

 今回の件で、パウロもひどくショックを受けたはずだろう。あの信じていた聖騎士協会に裏切られたのだから。


「で、騎士団長? 報告は以上なのだけど、早速本題に入らないかしら? 今後の動きについて」


 アイギスはにこやかに、そしてどこかワクワクとした様子でウォルターに告げる。


「実はもう決まっている」


「あらあら、じゃあ聞かせてもらおうかしら」


「今後についてだが、これまでの真実をウッサゴの国民全員に伝える。俺たちが行おうとしていることも全てだ。そして、フールについてだが……今後もフールとの協力関係は崩さない。お互いに最後まで戦い抜くことを誓おう」


「うふふ、だと思ってました♪」


 アイギスは弾けた笑顔になって両手を合わせた。

 このチャンスを逃すまいと決心したウォルターの行為は聖騎士協会に反逆する行為に勿論、不安を抱く者が2名いた。


「でも……そんなことしたら……四大天(ケルビム)達が黙ってないのでは?」


「そうだぜ!! 四大天が動き出したら俺たちは……」


「あわてるな、2人とも。もしも、俺たちが国民に真実を伝えなくても俺たちが消されるのは時間の問題だ。それに、俺たちには()()()()()が増えたではないか」


「だ、だけどよ……」


「パウロ、お前はこのまま間違った正義を説く堕天使たちに縋るか……本当の正義を勝ち取るために戦うか……お前が成したいのは後者ではないのか? 俺たちは勝ち取るためにここに集まったのではないのか!!」


「……ああもう! 分かったぜ!! どうせ殺されるなら好き放題たたかってやらぁ!!」


 パウロは頭に血が昇り、スキンヘッドの頭が赤くなっていた。


「うふふ、これで決まりね♪ クラリスもそれでいいわよね?」


「怖いです……私、殺されるの……」


「うふふ、大丈夫よ何かあったらみんなで守るもの。私が必ず死なせない。だから、頑張って副団長」


 アイギスの一瞬生まれた真剣な瞳を見て純粋なクラリスは無意識に敬礼していた。


「が、頑張ります」


 こうして、全員が今後の方針について全会一致となった。

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