79 テント生活6
亜人の年齢は判りにくいから、幼女に見えるアミン様の肌はしっとりしていて僕よりたぶん年上なんだろう。
「エクス先生、妾の国に来んかの?」
「どんな場所なんですか?」
身体を預けて見上げてくるロリババアはニヤリと笑った。
「酒は毎日飲み放題。ミスリル鉱山も徒歩5分。好きなだけ採掘して最高の鍛冶場に入り浸りの気ままな洞窟暮らし。どうじゃ?」
「・・・遠慮しときます」
熱いプレゼンだったけど全然響かないよ。なんだか鉱山奴隷みたいで種族の壁を感じてしまう。ぐでっとしたアミン様が残念そうに呟く。
「お主が来てくれたら、ルカ大先生も来てくれるかもしれんのに」
「危なっ。騙されるところだった。それより遊んでばっかりでいいんですか?」
アミン様がニヤニヤ笑う。
「何を言うとる。これが妾の仕事じゃ」
「なん・・・だと」
心臓がバクバク音を立てた。
僕はまた知らない内に仕事をしていたのか。そんな心配をしていると、呆れた目で見られた。
「他の誰でもないドワーフの女王じゃから仕事として成立するのじゃぞ。これは広報活動を兼ねておっての。将来的なドワーフの作品全体の価値を高めておるのじゃ」
良かった。
勘違いだった事が分かって胸を撫でおろす。というか、世の中にはこんな仕事もあるのか。
「待って、それこそこんな姿勢で聴いてたらイメージ的に不味くない?」
「そうです。女王、お戯れが過ぎるのでは?」
さすがに船員さんもそう思ったらしく、一人が近づき苦言を呈してきた。背が高くスタイルのいい褐色の女性の眼鏡が光る。
「くかか。妾は遊びも仕事も本気なのじゃ」
「うーん」
「しかし、女王ともあろう方がキャバクラみたいな事をされては困ります。そういうのは我々の仕事ですので、代わってください」
キャバクラ。
・・・そういえば転生者が作った大人の酒場だとか聞いた事があるような。
「甘いのう。この席は譲らんぞ」
「ケチ。エクスさん、良かったら後で私の部屋に」
「何しやがんでいっうわわ」
アミン様がくま吉を投げつけてセクシーお姉さまを撃退した。なにがなんだか。
「全く油断も隙も無い。どれ、お前さまよ、やんごとなき妾の虜にさせてやるのじゃ。特製の水割りを作ってやろうて」
コップに氷を入れてお酒と水を注ぎマドラーで混ぜるとカラカラといい音が響く。
その様子を見ていたら、ルカがチョコレートを僕の口に突っ込んできた。甘いっ!
もぐもぐ。
これが、キャバクラか。
僕は大人になった。
もちろん出された水割りにも口をつける。大人だからね。
グビッ・・うっ。
「あー、これはもういいや。下げてくれるかな」
キリッと決め顔で言ったら、げんなりされてしまった。
「このまま続行するのじゃ!次の者ーー」
カラカラと水割りを弄びつつ次の演者を待つ。知らない人から見たら、僕が王様みたいに見えるかも。
そんなカオスな状況の部屋に、呼ばれて入ってきたのは綺麗な女と、強面のボディガード2人だった。
その女の人だけど、僕を見るなり嬉しそうに興奮して小さく跳ねた。
あの・・誰かと勘違いしてません?
僕は、王様じゃなくて、巻き込まれたただの一般人ですよ。
「ボス!見つけました」
「こいつがエクスか。こんな所に隠れていたとは。くくく、やるじゃねぇか」
へ?
予想外の反応。
見覚えはないけど、向こうは知ってたどころか僕の事を探してたらしい。
投げ飛ばされたくま吉がむくりと起き上がり、ぶんぶんと手を振ってここにいるんだと床からアピール。
「性懲りも無くまた来やがったのか。てめぇらに、ハニトラはぜってぇ無理だ。確かによ。俺っちがいっぺん出直せって言ったけど、本当に出直すヤツがあるかい」
女の人がビクンと怯える。
ハニトラ・・・?
あっ!あの時の人か。
目付きの鋭い男が口を開く。
「なんだあ。聞いてた以上に口の悪い熊じゃねぇか。スラム帝国のウラカルに舐めた口利いて、命が惜しくねぇのか」
「べらんめえ、てめぇら如き怖くないぜ」
熊の縫いぐるみと真面目に言い争う大人を見てほっこりする。
「詫び入れるんなら今の内だぜ。思い出せよ、お前の咎を」
「てやんでい。お天道様に誓って疾しいことなんか1つも無えぜ」
ネズミのような男の目が暗く光り指揮者のように指を上て合図すると、大男が頷き謎の箱を構える。
検品されてるから危険物じゃない筈なんだけど、謎の箱からはヤバい空気がするらしく、くま吉が後退った。
「くくく、これでフィナーレだ。頼んだぜ、ウサギ様」
箱がパカリと開き中から両手を組んで仁王立ちしたウサギちゃんが現れた。ルカがガクガク震える。
「私達を置いて、遊びに行くなんて良い度胸じゃない?」
あっ・・・覚醒したんだ。







