75 テント生活4
その噂のウラカル達は、何故か・・シープタウンで観客に囲まれていた。
観客を掻き分けて、好奇心旺盛な子供に手を引っ張られた親子が加わる。
「わー。ママ。ウサギちゃんが縫い物してるよ」
「あら本当?縫いぐるみなのに凄いわね」
こうなってしまったのは、エクスを商業ギルドの前で待ち伏せしていたら、手下ウサギが勝手にいつものように縫製を始めてしまったからだ。
今では、常連さんまでいるし。
「どういうトリックだ?糸が見えない。今日こそは暴いてやるぞ」
ウサギがため息をつき、ウラカルがニヤつく。
「どうして、こうなったのかしら」
「くくく、いいじゃねえか」
その会話を聞いた子供がさらに目を輝かせて人差し指をさす。
「ねーねー、お母さん。今、あのウサギちゃんがお喋りしたっ」
「まー本当に凄いわねえ」
「ウサギちゃん欲しい。買って買ってー」
ただ会話しているだけなのに大道芸扱いをされて、ウサギちゃんは耳をへにょんとした。
対照的にウラカルはニッコリ。
だって。
「ボス、こんなにお金貰えました!」
レンが客から集めた硬貨がずっしりと入った帽子を嬉しそうに見せてくるからだ。腕がぷるぷるしてる。
「良くやった。レン」
「えへへ」
お金は嬉しい。
ウラカルがニヤついていると、ウサギちゃんが耳でぺしぺしと叩いてきた。
「それより、エクスさんを探して。早くしないと息子に縄をかけるわよ」
脅されて、ウラカルの息子がキュンと縮む。俺は可愛くねえんだ。そんなの地獄だろ。
「ひいっ、止めろ。レン頼んだ」
「了解ですボス」
レンが、腕を振り凛とした声を張る。
「皆さーん、私達はエクスという少年と、熊の縫いぐるみを持ったゴスロリ少女を探してます。どちらか連れてきてくれた人には、この非売品の縫いぐるみをプレゼントします。それでは、お待ちしておりまーす」
魂の入っていない急拵えの縫いぐるみを掲げると、何人かはエクス捜索隊に加わってくれたようだ。
「・・・それにしても見つからないわね。いったいどこにいるのかしら?」
その頃、エクス達は絶妙な場所で無自覚に引きこもり生活を送っていた。見つかる訳がない。
おまけに、怪しげな城に近付く者は、武器を持った乗組員に警告される万全なセキュリティ態勢。
例えるなら、公園で隠れんぼをしていて鬼が数を数えている間に、友人の家に遊びに行きボードゲームをするような鬼畜プレイ。
いや、ちょっと違うか。
エクスは、隠れんぼをしている自覚が無いだけ。
「くかか、この城はええのう」
「アミン様のおかげですよ」
城の中で演者の歌声を聞きながら、飛行船より移動したソファーに3人は仲良く座って楽しんでいた。
ルカもご機嫌そうだ。
端っこに座っていたルカだが、日に日にエクスとの距離が近付いているような気がする。







