72 褐色幼女アミン2
飛行船の主。褐色のロリ女王は、ルカの作る鞄の購入権を獲得して歓喜に震えた。男の僕は、たかが鞄なのに?と思ってしまう。
「して、妾に何を望む?当然、彼氏であるお主にも権利はあるのじゃ」
ひょえ?完全に他人事だったのに、急に話を振られて戸惑う。おまけに、ルカまでこくこくと頷いて同意を示してくるし。
「えっと、僕は辞退致します」
「天晴なのじゃ!しかしのう。妾の沽券に関わる。クレイジーベアー殿、知恵を貸してくれぬか?」
「任しときな。相棒、証明書を作って貰おうぜ」
くま吉の発言にアミン様は驚いた。もっと言えば、ここに連れてきた乗組員さんが一番びくっと反応してた。たしかに今の僕は無職で宿屋に仮住まいしてる不審者でしたね。
「持っておらんのか?」
「いえ、以前は冒険者ギルドカードを持っていたのですがギルマスに破棄されてしまって」
憐れむような目で見られたし。
「あい分かった。これをやろう。しかも、これはのう・・・素晴らしい特典がある」
「特典?」
なんだろうと渡されたメダルを見る。
「神職人メダルじゃ。聞いて驚くがいい。なんとっそれを店で見せれば酒代が無料になるのじゃ」
自信たっぷりに薄い胸を反らしたロリを、ついガッカリした目で見てしまった。
「はぁ、どうも」
「なんじゃその薄い反応は?ドワーフだったら泣いて喜ぶというのに」
お酒は飲まない僕には、これはガッカリメダルです。
ルカが、くいくいと裾を引っ張ってくるので、見たら嬉しそうに同じメダルを見せてきた。
「エクス、お揃い」
「うん。ありがとうアミン様」
お揃いメダルに昇格。
お礼を言うと、アミン様は笑顔になり、予想外なお誘いをしてきた。
「ところで2人はこの後の予定はあるのかの。どうじゃ、良ければここで一緒に音楽を聞いていかんかの?」
「この船の中で?聴きに行くんじゃなくて??」
特殊な魔道具でも使うのだろうか。
「何を言っておる?妾が、わざわざ出向く理由がまるで分からんのじゃ。ここに呼べば良かろう」
「ぐっ、これが金持ちの発想か」
でも、ルカと音楽を楽しめるなんて思って無かったので、結果的には感謝。僕は国の資本力の前に屈する事になる。
「ついてくるのじゃ」
後方のデッキに移動すると大きな空間になっており、長いソファがでんっと置かれて特別ステージになっていた。
「えっと、ソファーは1個しかないの?」
「妾は小柄じゃから何の問題もないぞ。はよう座れ」
テトテト歩き、端っこにちょこんと座るアミン様。僕も反対側の端っこに座ろうとしたら、人見知りのルカに取られた。
なので、僕が残った真ん中に。2人の女子に挟まれて少しどぎまぎする。
乗組員が、ワゴンで飲み物と軽食を運んでくれたので、なんかお昼ごはんはこれで良さそう。
「じっくり楽しもうぞ。乾杯っ」
「乾杯!」
年齢詐欺のアミン様が火酒で、僕らがフレッシュジュース。甘い爽やかさが喉を駆け抜ける。これ、高いやつだ。
フルートを持った女性が現れた。
「一年ぶりですねアミン様。と、初めましてお友達の方々。まずは一曲目、月下の華。では、お楽しみください」
次々と演者が変わり音楽や大道芸を披露してくれる。合間に挟まれる軽妙なトークを聞いて笑っていると、あっという間に時間は過ぎていた。
「本日、私達がどうやら最後の演者のようです。また来年、お会いしましょう」
一礼した最後の楽団を拍手で送ると、静けさが訪れた。世界は夕暮れに染まる。
楽しかった〜!じんわりと今日の興奮が体の芯に残ってる。
「今日は楽しい時間をありがとう、アミン様。そろそろ僕達はテントに帰ります」
「ん?泊まっていかんのか。遠慮はいらんのじゃ。粗末なテントより、妾の飛行船の方が、よほど居心地が良いぞ」
その提案に、くま吉が噛み付いた。
「てやんでい。馬鹿言っちゃいけねえよ、相棒のテントはここより凄えぞ」
「なんじゃと?」
「いやいや、普通ですよ。それに、街の外に立てましたし。くま吉、ちょっと黙ろうか」
あのゴーストハウスの中身は、安宿と一緒だからたいした事ないのに。
「くぅ。どちらもサーチライがまるで効かぬ。これだから天然は困るのじゃ。ルカ先生どちらが正しいのじゃ?」
ルカが得意げに頷いた。
判定は・・・
ハアア?僕をそんな目で見ないで。くま吉に信用度で負けるなんて。そういえば、くま吉の商業ギルドカードにお世話になったんだっけ。
「くかか、どうやら飛行船の出番のようじゃの。空から送ってやるから妾の手配したテントより凄いテントとやらを見せて貰えんか」
ルカがこくりと頷くと、慌ただしく準備が始まった。
キリッとしたオペレーターの声が伝声管で艦内に響く。
『これより離陸を開始します。総員、近くの何かに捕まってください。3、2、1、アンカー切断ッ』
次の瞬間。ふわりとした感覚が襲う。
バツッとアンカーが切れる音がすると、床が大地と切り離された!どんどんと床と大地が離れていく。
「うわあああ!楽しいっ」
「相棒、サイコーだぜっ」
僕はくま吉と大はしゃぎして、ルカは怖いのか真っ赤な顔して僕に抱きついてきた。
「これが、ドワーフの技術力じゃ」
満更でも無さそうなアミン様。乗組員も誇らしげな顔をしてる。
「凄いですね、アミン様」
「ふふふ。ドワーフのモテ要素は顔でも金でも無く技術力じゃからな!ジャガイモ野郎でも、優れた魔道具さえ作れればドワーフ女はイチコロなのじゃぞ」
フラグを立てるアミン様。
飛行船のサイドはガラス張りになっていて、お祭り色になった町が上からよく見える。
この景色をどれだけの人が見たのだろうか?空から見る地上の色とりどりのテントの灯りはとても綺麗だった。
ゆったりと夜に沈んでいく町を空からクルージングする。流れるのは静かで豊かな時間。
先程の感動体験と混ざり心地よい余韻に浸っていたのに。
ピー!ピー!ピー!
警報が鳴り、ルカと一緒にびくっとした。
『警戒レベル3!総員、戦闘態勢に入れ。繰り返す、警戒レベル3!これは、訓練では無い。アミン艦長!至急、操舵室へお越しください』
艦内放送が流れ、慌ただしく人が走る音が聞こえてきて緊迫した空気に包まれる。
走り出すロリの背中を追って一緒に操舵室へと入った。緊迫した会話に耳を澄ませる。
「何事じゃ!?」
「アミン様ッ。前方に所属不明の魔王城を発見しました!」
「ぐっ、魔王め。ここは他国の領空じゃが、素通りは出来んぞ。敵影は?」
「敵影は現在無し。不気味に沈黙しています」
あっ・・・
あれは。
「すまぬが、予定地点には降ろせぬ事になった。お主らのテントはあの魔王城に呑まれたのかもしれん」
「船体へシールドエンチャント急げ」
お腹がキリキリしてきた。
でも、言わないと。
「あのー。すみません。あれが目的地の僕らのテントなんですけど」
「なんじゃって???」
ぎょっとした顔で見られた。
うわっ。艦内の視線を独り占めする。
空気が凍る。
「えーと。ルカとくま吉が作りました。僕も少し手伝ってます」
「ルカ大先生ッ!・・・・服飾と革細工だけに飽き足らず、たった数日で築城されたとは、なんという技術力ッッ」
アミン様と乗組員さんが畏敬の念を込めてルカを見た。跪いてる人までいるし。
あうあうと困ってるルカを、ほっこり見守る。
『戦闘態勢解除。前方の所属不明物体は友軍のものと判明したので、現時点を以って通常航行へと移行せよ。オーバー』
ハリボテ城とゴーストハウスの隣りに、飛行船で着陸。
ただいまー。







