69 ウラカルの憂鬱6
情報屋から人形姫の住所はすぐに割れた。それよりもエクスの居場所を教えてくれればいいんだが、エクスに出し抜かれたらしく分からないらしい。
で、向かってる最中、レンが何かに気付き耳打ちしてきた。
「ボス、あそこに落ち目と噂のゾンビーズのバッツとエルフマンがいます」
見ると、憔悴したゾンビーズがブツブツ言いながらふらふらと歩いている。
「「ボーナスタイム、ボーナスタイム」」
噂どおり魔剣すら帯剣していない落ちぶれっぷりだし、何より強そうなドワーフがいない。
「シメるぞ」
わざとバッツに近付いてどんっと肩をぶつけて、尻ポケットから財布をスる。楽勝っ。
「痛っーてえな、てめー殺されてぇーの・・げっ、ウラカル」
バッツの顔が恐怖に染まる。
敵対チームは潰す。
「ハゲ。黙らせろ」
「任せろ」
ブンッとクソ遅いパンチがバッツを襲う。なぜ魔法を使わねえと嘆きそうになったが、遅いパンチをまともに食らったバッツはぺぎゃっと地面に昏倒した。
先月までならここで奴らのシンパが邪魔しにきたが、落ち目らしく誰もかれも見ないフリして通り過ぎていく。
「バッツにいきなり何をするんだ。うぐっ」
唯一、抗議してきたエルフマンが悶絶して沈んだ。
おいおい、エルフママンになったら、どーすんだ?と、金的攻撃をしたレンを信じれない顔で見つめると、もじっと恥ずかしそうにして誤魔化しやがった。
「大丈夫ですか?」
しかも、自分で蹴り倒しておきながら、介抱するように倒れたエルフマンをさわさわと触りだしたレンにドン引きする。いや、この手口を教えたけどよ。
「行くぞ」
「はい、ボス」
しばらく歩くと、レンがもじもじしながら財布を差し出してきた。
「ボス、どうぞ」
エルフマンの財布を手に入れた!
そこに最初にバッツの尻ポケットからスッた財布を合わせると、そこそこな臨時収入に。カードに入った金には手を出さず硬貨だけ抜き取り、ポストへ返却。
捕りすぎない。
それが狩人のルール。
「良くやった。ほらよ」
「「ボス、ありがとうございます」」
分け前を少し渡して、ルカの工房へ到着。
ベルを鳴らしてみるが、留守か居留守か反応はない。手で合図を送ると、大男がノブに魔法を唱える。
『アンロック』
ガチャッと音が響いた。
「行け。今回はターゲットがいても殺すな」
こくんと頷いたレンが先行し、大男のハゲが続くと、ウラカルは入口付近の物陰に隠れて耳を澄まして周囲を警戒する。
10分後。
どたんっという大きな音が部屋から響いた。続いてごろごろという音がする。あんのハゲッ何やってんだ!
ぐっと我慢する。
お前だけが頼りだぜレン。「きゃっ」という声が聞こえた。続いて暴れるような音がして「ボス、罠で。むぐっ」でそれっきり。
「マジかよ!?」
しくじりやがった。
熊の縫いぐるみに注意しろって伝えた方が良かったか。
「クソッ待ち伏せてやがったのか。だがよ、その慢心が命取りだぜ」
遅れて、第3の刺客ウラカルは仲間を救出するべく窓を静かに割り緊急参戦っ。
すぐに縛られた大男を発見。
周りにはうさぎの縫いぐるみがこれみよがしに置いてある。
(誘ってるのか、悪趣味だぜ。それより熊の縫いぐるみは何処だ?)
罠の臭いがぷんぷんするハゲをスルーして次の部屋に。
天井も確認。
熊は、いない。
(いたっ!レン。・・・お前、なんて格好を)
これまた糸で縛られて、素敵なオブジェになってやがった。周りにはウサギの縫いぐるみが沢山。熊は、いない。
観察していると、ウサギが動き出した!
(が、知性は感じられない。こいつはブラフだ。我慢比べかよ。本体の熊はどこに隠れてる?)
痺れを切らしたウラカルは、隠れているだろう熊に注意を払いつつ、レンに接近してナイフで口枷を切った。情報が欲しい。何があった?
「ボス、ウサギがっ!」
「はあ?ウサギ。うぐっ」
残念ながら忠告は遅く気付いた時には、ウラカルの首に紐がかけられた。
咄嗟に指を間に入れて気道は確保したが、腕と胴体をぐるぐる巻きにされてしまい、そのまま押し倒される。
「ぐえっ。くそっどこに隠れてた!?」
「貴方で最後かしら?」
妙齢の女の声が響く。その声の正体を見て愕然とするウラカル。
「うさうさ、うさぎが喋ってるーーー」
「目的を述べなさい」
情報屋め、殺してやるっ!
「熊じゃねえのかよっ!?」
「あら、あの裏切り者の事?それより早くして」
キリキリと指と首の後ろに容赦なく紐が食い込む。
紐の先を見ると何匹ものウサギが綱引きみたいに可愛く引っ張ってやがる。
「はあ?くっくそっ。エクスの行方を追って来ただけだ」
「あら?利害が一致したわね。私達を隣町のシープタウンまで連れて行きなさい。私を置いて行くなんて許せない」
エクスは街の外に出てたのかよ。なんでそんな事が出来るんだ!?
「くそっ取引は成立だ」
「物分りのいい子は好きよ」
こうしてウラカル精鋭隊は、覚醒したマザーラビットの軍門に下った。
エクス追撃に思わぬ王手。







