63 テント生活1
ルカにもう一つランタンを作って貰い、夜道に困ってる御者さんにプレゼント。
「良かったら、この灯り使ってみませんか?」
「いったい何ですか?この灯り!?古代遺物ですか?」
馬車のランタンと交換すると、光の道が出来た。
「いえ、ルカと作ったんです。1ヶ月持ちますのでプレゼントします」
「良いんですか!?ありがとうございます。この仕事受けて良かったなあ。これは走りやすい」
地面さえハッキリ見えれば夜でも馬は駆け出せる訳で、あっという間に小高い丘に着くと、そこからはシープタウンがよく見えた。
ルカをエスコートして、町を眺める。
乱立した色とりどりのテントが沢山光っていて、とっても幻想的な夜景。
「綺麗ねエクス。ここに連れてきてくれて、ありがとう」
「後悔しなかったでしょ?さっそくテントを立てようか?」
こくんと頷いたので、御者さんに教えて貰いながらテントを立てる。
ペグという、地面とテントを繋ぐ釘を小さなハンマーで打ってる時に指を叩いてしまったけど、ソロテントが1つ完成。
ちょっと指先がジンジンするけど達成感に満たされた。
「教えてくれて、ありがとうございました」
「いえいえ。私は少し離れた所に立ててくるので、残りは頑張ってください。後で色々と野営について教えてあげますよ」
頼りになるなぁ。
「はいっ!」
御者さんが嬉しそうにネオランタンを持って離れていくと、猫を被っていたルカが息を吹き返し、ぷるぷるとした唇からは不満が漏れた。
「エクス、これ小さくない?」
「そうかな?」
怒ってるのかな?と思って顔色を伺うとどうも違うみたい。なぜか恥ずかしそうにもじもじしてる?
「これだと凄く密着しそう。わ、私は良いけど貴方は大丈夫なの?」
「ルカはそういうの嫌かな?気に入らないなら、大きいのを借りに戻るけど」
配慮が足りなかったのか。
「嫌じゃないけど・・・その。急だったから」
ざざっと風で下草が揺れた。
ルカが変なテンションで見つめてくるせいで、僕の心まで揺れる。顔が火照ってきたので、隠すように作業を再開っ。
「それなら良かった。さーて、これからルカのテントを立ててあげるからね」
よーしっ頑張るぞ。
一人で完成させたら、エクス凄いって言ってくれるかな。
なのに。
座って新しいテントを広げたら、いきなり背中を蹴られたのか地面とキスをした。
うぐっ・・・草の味がするんだけど?
ルカ容疑者を問い詰める。
「ルカ・・もしかして蹴った?」
「旅行に来て、別々の所に泊まるなんて信じられない」
謝りもせず、ぷいっと横を向いた。内弁慶が過ぎる。
振り返った瞬間、くま吉に動きがあったので犯人はくま吉かも。それよりも。
「いったい何が気に入らないの?」
「全部よ」
ちょっと僕もカチンときた。
こんなに頑張ってるのに。
「ルカは大きいテントも気に入らないみたいだし。なら、どうしたいの!」
ルカはふふっと笑った。
あれ?
「あら?もう忘れたの。私は、貴方がいれば無敵なの」
「無敵??」
意外な反応に思わぬ肩透かしを食らって戸惑う。どういう事?
「見てなさい。本気の私が思い出させてあげる」
ルカが魔法を唱える。
『キング・ゴーストクロス』
アイテムバッグから、布が波のように吹き出てきた。そして薄く引き伸ばされるように拡がっていく。
空は布に支配された。
布で光が乱反射され、夜の平原は昼間のように輝く。
「『キング・ソーイングマスター』格好いい所を見せて、クレイジーベアー」
「がってんでい!」
巨大なハサミをくま吉が振り回す。
さっき作った三角帽子みたいに何かを作ってるらしい。だけど、規模が違う。
瞬く間に、何も無かった平原に巨大な建造物が出来あがっていく!はああ?
そして、目の前には。
「お城が現れた?」
「エクス・・早く」
「相棒、さっきの一丁頼むぜい」
ルカが、集中力の限界って顔で助けを求めてきた。
『シールドエンチャント?』
布で出来たお城を固定化!
たった数分で城が完成した。
ルカがやりきった顔をして、倒れ込んだので慌てて支える。
自信に溢れた瞳。
その瞳の先を追うと、やはり城。
豪邸ぐらいの大きさだけど、城みたいな外観。
ヤバいヤバいヤバい。
何してるの?
ルカがにっこりと笑った。悪戯っぽい顔をしてる。
「私の王子さま」
「え?」
くま吉が追従してくる。
「王様、いちゃいちゃしてないで、さっさと城の中に入ろうぜぇ」
僕は、ゴーストクロス城を手に入れた。







