49 敗走のゾンビーズ2
エクスの手痛い反撃に敗北したゾンビーズのリーダーであるバッツは悪態をついた。
「ちっ。あんな小物が逆らってくるとかマジで終わってんな。後で仲間と一緒に泣くまでボコってやらねーと」
バッツは喧嘩はよく売るが、一度もした事がない。なぜなら反撃しない相手を選んでいたからだ。
エクスに敗北しイライラしていたバッツの耳に、エルフマンより朗報が入る。
「バッツ、森林警備隊の討伐報告が出たぞ!」
来たか!と喜んだ。これが彼らの待ちに待ったボーナスタイムの合図だから。
いつものように魔除け香に浸したシャドウローブを被り、わくわくしながら大森林へと足を踏み入れた。
「ぎゃはは、今月も荒稼ぎするか」
「がはは。いい事を言った」
「同意である」
――3時間後。
エクスの恩恵を失った彼らは思い知らされた。モンスターから逃げ回り泥まみれになった彼らからは英雄らしさは感じられない。
なぜか今日は、魔石は無いし、モンスターも生きていた。おまけにドワーフは逃げ遅れて帰って来ないし、エルフマンは恐怖のあまりびちびちと漏らしてしまう不様を晒す。
このまま手土産も無く無策でギルドに帰るのは不味いだろう。そんな事をすれば、一瞬で奪われる側に変わってしまう。悩んでいたバッツは、名案を思い付いたらしくニヤリと笑った。
「良っしゃ!行くぞ。ウンコマン」
ビビリのお漏らしエルフマンは唇を噛んだ。
ゾンビーズが、ギルドに報告に行くと、笑顔の受付嬢と、ぞろぞろと物欲しそうなゾンビのような冒険者仲間が群がってきた。
いつものように熱烈な歓迎だが。
「お帰りなさいっ!ゾンビーズさんっ」
その期待の眼差しが、バッツには痛いようで目を逸らした。
「悪りぃー。今月は戦果ゼロだ。実は、ドワーフに裏切られて魔石を全部、持ち逃げされてしまった」
ざわっ
と、どよめく。
信じがたい事に、仲間の名誉を嘘で傷つけて己が助かる道を選択。まさにこの男、クズの鑑。
ゾンビーズに対立しているセカンドは噛み付いた。
「バッツ、失敗したんだろ?」
正論で斬られ、バッツは顔を真っ赤にして、この挑発を買った!
「ああん?教えて欲しいのか?俺の魔剣の切れ味を」
予想外の反応に、挑発したセカンドも引けなくなってしまう。
「なっ。知りたいねー」
引くに引けなくなった両者の間の人が割れて、死の花道が出来た。
先に仕掛けたのは、
「てめぇ、ぶっ殺っ!?」
バッ・・・
いや、バッツは動かない。
剣を抜くかどうか迷っているのか?
いや、よく剣を観察すると鞘が凍っている。
エクスの優しい魔法は、魔剣を冷たい棒に変えていた。
状況を把握したセカンドは、堪らず両手を上げて降参した。
「ぶはっ。くくくっ。参った!ゾンビーズのバッツさんは、いったい俺に何を教えて戴けるんで?カーッ駄目だ、これは戦えねぇよ」
煽られて、剣を抜こうとするが。
抜けない!
「バッツさんを馬鹿にすんな!」
冒険者の助っ人が現れて、バッツの顔が喜びに染まる。感極まった彼から漏れたのは、感謝では無くさらなる要求。
「あぁ、やっぱ野次馬共とは違ぇーよ。これが仲間だ!あとよ。来月払うからさ。定食屋のカネ立替えといてくれねぇか?」
ちょっとしたお願いをしたバッツには絶対の自信があった。なぜなら助けに来てくれたのはいっつも宴に最後まで付いてくる舎弟みたいな奴で、相当奢ったし、腰に差してる剣もバッツのお下がりだったから。
「えっと、その・・・貯金無くて」
が、断られる。
「はあ?何で、そんな嘘つくんだよ!家買うためにカネ貯めてるって言ってたじゃねーかッ。なあこの前の聞いてたよな、皆?」
バッツが助っ人を批難して、同意を求めるように周りを見たら、集まってきた冒険者達がざざっと引いていった。
「嘘っだろ!?お前ら、何があってもバッツさんに最後まで付いていきますって昨日まで言ってたじゃねーか?何なんだよー」
それは、ただ酒の話だ。
この日を境に、ギルドの若き英雄ゾンビーズの名誉は失墜した。仮初の英雄の彼らに残ったのはツケ払い。
・・・・というか、エクスの倒した魔物の魔石を、拾い集めてイキってるヤツらだったので、これは当然の結果とも言える。
「ゾンビーズも終わったか」
ギルド栄光の時代は、誰かの呟きとともに泡のように弾けた。







