46 バフ魔法2
「少年、会いたかったぞ!」
誰だ?
ジャンキーに知り合いなんて。
あっ。1月前にバフ魔法デビューしたお姉さんかな?あの時は、もっと余裕のある人だったような。
「お、お久しぶりです」
「早くサポート1を掛けてくれっ」
いきなり肩をガッシリと掴まれた。
目がギラギラして、正気じゃない。
どうも何日も寝てないっぽい。
サポート1はヤバい魔法だったのかよ。
「い、嫌です。それに少し休まれては?お身体を大事に」
「幾ら払えばいい?お告げがあった!私には少年のアレ(バフ魔法)が必要だっ」
ざわりと通行人が反応した。
ち、違うよ?
「えっと、お告げとか迷惑なので」
「あれから他の人のも試した。だけど、君だけが特別だった。私に、アレ(バフ魔法)をもう一度だけ掛けてくれっ!」
何やったのコイツ?と通行人の目が痛い。
冤罪なのに。
「いや、ちょっと」
「金。いや、身体で払おう。どんなプレイでもいいぞ。お姉さんはそこそこモテる。だから頼む」
これは、暴漢に襲われるヒロインみたいになってないか。
「止めろ、エクスを離せっ!」
ついには、ヒーローまで現れてしまった。
なんてこった。
声の方向には、逆光の中、巨乳の長身な女性がいた。たしかあのシルエットはS級冒険者のマーラさんかな?
守って貰って乙女のようにトゥンクする。
「断る。少年は渡さん」
流れで、悪役堕ちしたお姉さんに抱き締められたら、ふわりとあの時のいい匂いがしたが。
「助けてください」
なんとか誘惑に勝ち、ヘルプを求めると、こくんと肯いてくれた。
良かったぁなんて考えは甘く、太陽が曇り逆光でよく見えなかったマーラの表情が明らかになると、戦慄がはしった。
「その通り、エクスにアレして貰うのは私の方だ!」
くそっ。コイツも目がヤバい。
「マーラ、お前もか」
僕のバフ魔法中毒患者。
「シャドウバインド」
マーラの黒い影がまるで生き物のように襲いかかり学者だけエロく縛りあげると、拘束が弱まった。
「行かないで、少年ーっ」
「おっと」
僕は学者から解放されて膝をつく。
脱出成功。
かくして僕はジャンキーの手から解放され、ニュージャンキーの手に渡ったのだった。
あれ?なにも変わらなくない?
「ふふふ、見せてやろう。これが恵まれた者の包容力だーー」
ドヤ顔マーラの巨乳が顔面を襲う。
んあっ・・この感触。
スライム枕を超えてる!
癒やされるううううーーー。
スライム枕=睡眠。
そんな条件付けのせいか。
襲ってきたのは眠気の波。耐えようとするが、引き波の力が強すぎて意識がぐわわわっと何度も夢の中へと持っていかれる。駄目だっ、こんなの耐えれないよぉぉぉ。
すやぁ・・・・
「え、エクス!?」
「しょ、少年ぇぇーーーん!」
なにか声が聞こえるけど、僕はもう限界なので。
・・お休みなさい。