表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/207

4 最後の仕事(元ギルマス)


 ベッドで寝るという小さな目標を果たし、少し仮眠が取れたので活動を再開する。

 昨夜はポーションで傷口を治したけど、破れた服まで治らなかったので慣れない裁縫をしていたらギリギリの時間になってしまった。結局焦って上手くいかなくて穴開き部分ごと半ズボンみたいに切って誤魔化した。


 最後の指名依頼先の酒場に着くなり筋肉ムキムキの店主からいつものように罵声が飛ぶ。

 さらに物理的に飛んできた食器が顔面に当たり砕け散ったので、どうやらいつもよりお怒りみたい。


「エクス!いつまで待たせるんだ、営業が始まるまでにさっさと仕事をしやがれ。貴様は給料を貰ってる自覚があるのかっ」


「すみません。すぐにやりますので。ハウスクリーン、アイスボール、ファイヤーボール、ウォーターボール」


 小さな妖精が一人現れて、汚れた皿と散らかった店内を少しずつ掃除していく。冷蔵庫には、溶けない氷が入った。厨房では炎が燃え続け、水瓶からはこんこんと水が湧き続ける。

 身体から魔力がどっと抜けてヘタリ込んでしまった。どれも業務用の火力で1か月ぐらい持つように魔改造をしているせいか消費魔力もそれなりに増えてる。


「初級魔法ごときで疲れやがって欠陥魔法使いが。そうだ!遅れた罰として今日の依頼料は無しだからな」


「はい、分かりました」


 反論する気力すら残ってなくて、無茶苦茶なペナルティを言われるまま受け入れたら、酒場の親父のご機嫌は回復したようだ。


「分かってるじゃねーか、エクス。俺様の指導で少しは冒険者としての自覚が芽生えてきたか。でも来月は遅れんなよ。少しでも遅れたらまたタダ働きになるんだからな。これはお前の為に言ってやってるんだ」


「はい。もう来月からは来ませんので、その心配は無用です」


 次の瞬間。ゴミを見るような目で見下されて、カッ!と火がついたように真っ赤になった店主から、パンチが飛んできたので、ヘッドスリップで慌てて避けた。 

 危なかった。

 すごく疲れてたけど、うっかり避けないで頭で受けてしまうと相手の拳を砕いてしまうかもしれなかったから避けれて良かった。


「てめえ、ゴブリンも満足に狩れないくせに偉そうな事を言いやがって。哀れに思った俺様の親切心を踏みにじりやがるとは。良いか、よく聞け!冒険者をやってる限り俺様の指名依頼からは逃れられるとは思うなよ」


 あーあ。結局怒られるなら今日の安い依頼料を無料にする意味はなかったな。


「あのー。冒険者は引退しましたので、今までお世話になりました」


「い、引退だと!?」


 ペコリと頭を下げて一方的に帰宅する。

 遅れて罵声が聞こえてきたけど、彼とは今日で契約が切れたから無視で良いよね?それにしても断れない指名システムは糞すぎると思う。


 どうにか積み上がった全ての依頼を終わらせた。


 終わった。ついに、終わったよ。

 奴隷生活が。

 冒険者なんて糞だ。


 僕を縛っていた鎖はバラバラに砕けた。

 足取りは軽い。


 大通りで人目も憚らず僕は叫ぶっ!




「ああああああ。僕は自由だーーーー!!!!!」


 元E級冒険者エクス。

 無職←NEW。


 今なら空も飛べるかもしれない。

 そんな浮かれた気分。



挿絵(By みてみん)

ガンガンONLINE

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 主人公が回復魔法を使えるかどうか。 [一言] ……まあ、仮に使えたとしても、その結果がコレなんですけどね! (ポーション使ってたらしいから、少なくともまだ使えないか、即効性がない……)…
[良い点] 先日無職を選択した身としては、なんだか読んでて目頭が熱くなる展開です。これからどう無職ライフを送るのか、ドキドキワクワクさせて頂きます。
2021/07/22 18:38 退会済み
管理
[良い点] おめでとうございます、エクスさん、今日からゆっくり休もう…… [一言] たとえどんなに可笑しい状況でも、最初からずっと続いてたら、それが可笑しいと気付かないものですよ…… ええ、よくわかり…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ