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180 スタン6 走れエクス


 ルカを抱えて走るエクスの顔に水滴が当たる。


「雨?」


 拭おうとして視界が黒に。


「うわっ!?なに?汚ぁっ」


 たまらず屋根下へと避難し、ルカを降ろす。


「クリーン」

「ありがとうルカ」


 突然、ぼたぼたと降ってきたのは黒い雨。

 雨足は次第に強くなり、不快な雨は街を黒く穢していく。


「フール」

「相棒、それにしても汚ねえ雨だな。いってえ何の嫌がらせでい」


 おそらくは魔王の天候操作系の魔法で、天を睨むエクスに迷いが走る。


「分からないよ魔王の考える事なんてっ。ええと、ルカはここにいて。ニトラをここに連れてくるから」

「だめ!」


 行くな?それとも連れて行け?どっちのダメだろう。僕だけなら濡れても構わないけどルカを無理に連れて行くのは。


「ええと…でも」

「もっと私を頼りなさい。レインコート!」


 ルカが黒い雨の中に飛び出した!


「ルカッ!?」

「さぁ、行きましょう。案内して」


 それはエクスの知らない魔法。

 貴族に秘匿された魔法の傘は、黒い雨をも弾く。

 絶対汚れない女は、黒い雨の中はしゃぐように踊り手を差し伸べた。


「うんっ!最高だよ」

「へへっ、こうなると黒い雨も悪かねえや」


 黒く汚れた街の中を、白く輝く2人は手を繋ぎ、ばちゃばちゃと水飛沫を駆け出した。

 はしゃぐくま吉がぽんぽんと肩を叩いてきて、遠くに目を凝らすと、


「おっと、お客さんだぜ」


 ゴブリンがいた。

 魔石になってないのは、今日初めて。

 エクスの初級魔法の射程まではまだ遠い。


「アイスニードル!」


 先手を取ったのはルカ!

 速い氷の槍が突き刺さり、魔石に変えた。

 人々が恐怖で家に閉じこもっているせいで、いつもより動きやすいのは皮肉なところ。


「ナイス! ルカ」


 パンッとハイタッチ。

 足は緩めないが、空を見上げるエクスが首を捻った。


「なんだろうあれ?」

「クイーンが戦ってるのかしら?」


 目的地の上空に浮かぶバチバチと光る球が浮いている。

 そして、輝きはみるみると小さくなっていき消えた。


「なんだったんだ?」

「行けば分かるぜ」

「そうね」


 現場に到着したがフールはすでに立ち去っていて、弾むように走っていたルカの足が震える。


「酷い」


 汚れたうさぎ達が、ごろごろと転がっていたからだ。

 綿がはみ出た奴もいる。

 一体を拾い上げる中、視界の端でエクスはどこかに駆け出して行った。


「ニトラッ!」

「うううう」


 抱き抱えてルカの元へ。


「ルカッ」


 ニトラの惨状を初めて見たルカの顔が強ばるが、すぐに立ち直った。


「エクストラヒール。レインコート。クリーン」

「あぐぁっ」


 ニトラから回復の白い煙が立上り回復痛に顔を歪め、黒い雨を弾き、ボロ雑巾のような体を泡が包み込み黒い排水を流して、ニトラがぐったりと完全復活。


「ありがとう!ルカ」


 エクスの笑顔にルカが落ち着く。


「それにしても良かった。フールと交戦して生きてるなんて、まるで奇跡だわ」

「え? 奇跡じゃないよ」


 ルカが固まり考えるのを拒否する。

 いや拒否したいが、明晰な頭脳は正解を導きだす。

 サポートワン。

 考えたくはないけれど·····擬似的に永遠に延長された生命1は、効果中ならそれを下回らないのでは?


「相棒、すげえじゃねえか!」

「まあね。でもニトラに痛い思いをさせるなら先手を打つべきだった」


 そんなの理不尽だ。

 と考えて、真理に触れる。


 魔法とは理不尽。


 思わずステージが上がりそうになってぶんぶんと首を降った。

 私はまだ人間でいたい。

 

「ルカ?大丈夫?」

「ええ。うんっ」


 そんな中、異様な光景を見せつけられてステージが上がった者がいる。

 レビジョンだ。


「奇跡、まさに奇跡。これこそが真の勇者ッ!」


 歓喜の涙を流して拍手する、いきなり絡んできた黒く汚れた怪しい人物にエクス達の不審の視線は突き刺さった。



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