171 かくれんぼ3
ルカが期待するような目で見上げてきて、むずむずと勇者病の血が騒ぐ。
「任せて、ソナー」
瞼の裏に広がるのは、夜の空。
生命が輝きとなって三次元的に散らばる様子は星空のようだ。
家の門には大勢の人が集まっていて、隣の澄んだ一等星はルカ。
「エクス、見つけた?」
「待って探してる… 見つけた!3階だ」
上を見ると強い生命反応を観測。
「さすがっエクス」
「付いてきて」
ふふっ今日の僕カッコイイかも。
「エクス。だめっ」
ルカの悲痛な声が聴こえた時には僕は見えない何かにつまずいてすっ転んだ。
この魔法、障害物がいい意味でも悪い意味でも消えてしまうんだっけ。
「痛てて」
「おいおい相棒、大丈夫か?」
ふるふると首を横に振る。
「手をだして」
「ありがとうルカ」
ルカに手を引かれて立ち上がる。
「この魔法はどうやら僕には向いてないみたい。だから」
「いいえ、いい方法があるわ」
威勢のいい声とは裏腹にルカの魂は不安そうに揺れていて、本音では僕に肯定して欲しいって言ってると分かった。
「ルカにお願いしようかな」
「仕方ないわね。私が貴方の目になってあげる!」
グッドコミュニケーション!
ルカの魂が強く輝いた。
·····どうやらこの魔法は延長すると心を覗き見するヤバい魔法に化ける。
「ルカ、三階に連れて行って」
「わかった。任せて」
腕を絡められた!?
ちょっ、高い体温を感じてドキドキ。
歩きながらルカは平気なの?と、ちらりと心を盗み見ると同じくドキドキしているようでハートの形になった魂がキラキラと燐光を放っている。
「エクスどうしたの?」
「いや、綺麗だなと思って」
あっ…まずい。
ルカの魂が明滅し始めた。
「あ、当たり前じゃない。けど、ありがとぅ」
尻すぼみな声で言ったルカがほかほか発熱してきてピンクのハートが大きくなる。
うぅー、なんかむずむずしてきたよ。
ニトラ探しに集中集中。
やはり三階にいるようで、今度こそチェックメイトだ。
「え!?」
「相棒、急に止まってどうしたんでい?」
「なっなに?」
今、ニトラの光が急に上へと移動したよな。
「あぁ! そういう事かっ、そりゃ見つからないよ」
「どっどうしたんでい」
「エクス、なんなの?」
ルカの心臓アイコンが大きくなったり小さくなったり忙しいので、落ち着かせるようにトーンダウン。
「あーごめん。ニトラだけど、僕らの気配を感じながら移動してるみたい。たぶん窓から外に出て壁を登り、今は屋上にいる」
「え?」
「相棒! へー、あの娘っ子は以外と賢いんだな」
僕も脳筋だと思ってた。
くすくす笑いながら逃げてるニトラが思い浮かぶ。
参ったなぁ。
考え事をしてたら、つつーっと反対の手で掴んでる腕を触られた。
「ひゃう! な、なに?ルカ」
「時間無いしさっさと終わらせましょう。このまま3階まで上がって、次は屋上へ」
「え?それだとまた逃げられない?」
ルカが仕事モードに入ったのか澄んだ青に輝く。
「私は3階で待機するから」
「あー、その作戦で」
3階に着いて、「ここにもいない!屋上だっ!」と叫んでくま吉を肩に乗せて屋上へ走ったら「にゃ!?」と建物の外から拘束魔法に掛かったニトラの声が聞こえた。
問題児、確保。
作戦タイムだ。