163 スラムドッグス1
なんだか家に帰ったら色々あって、僕は今ふかふかタオルを持って、スラムの人たちに開放している馬小屋のお風呂の前で待ちぼうけ。
仲良くなったスラム街の少年たちが満足そうに出てきた。太っちょ、のっぽ、小柄な3人組のスラムドッグス。
「兄貴、温かい水はうめぇな。げふっ」
「サイコー」
「ありがとうございました」
あー。
どうやら、またお風呂のお湯を飲んだらしい。
「はい、タオル」
「サンキュー。うへえ。ふかふかだあ」
「気持ち良い!」
「ありがとうございます」
湯気が上気した顔で嬉しそうに、渡したふかふかタオルをすりすりしている。
分かるよ。僕もそれ気に入ってるヤツだし。
「それは、あげるよ。天日で乾かさないとふかふかにはならないけど」
「うおおおっマジか!」
「さすが、兄貴」
「ああああありありありがとうございます」
見た目は同じだけど年齢が離れてるせいか、ちょっと距離感はある。
「今度は、一緒に家の大きなお風呂に入ろうよ。遠慮はいらないから」
「勘弁してくれ!姐さんにバレたら殺される」
おっと、年齢は関係無かった。
「あー、うん」
「で、なんで。呼んでくれたんだ?」
実はプレゼントがあってね。
そう、こんなよく分からない状況になったのを説明するには色々の部分を振り返る必要がある。
あれは持ち帰った夕食を皆で食べ終えた時だったか、くま吉が近付いてきた。
「相棒、浮かねえ顔だな?」
「別に。大した事じゃないよ」
彼は魂の色を見ているので隠し事は出来ないなと内心で降参していると、ルカが勢いよく椅子から立ち上がった。
「話しなさいエクス。私が聞いてあげる」
無い胸を張るルカ先生。
隣にいたライ姉が真似して、実力差が顕に。ニトラは満腹になったのか、ふにゃっと机に突っ伏してすやすや。
「えっと?」
「何よぅ私じゃ不満なの?」
「旦那様、話すと楽になりますよ」
「そうだぜ、俺っちをバーンと頼りな」
みんなの優しさが嬉しい。
「分かった。ありがとう。実はさ、スラムの子達が残飯漁っててさ」
「え?」
「普通では?」
「そいつの何が問題なんでい?」
ううっ。
「なんか将来が不安で助けてあげたいなと勝手に思ってて」
「エクス!優しい」
「あんなやつほっとけば良いんですよ」
「へへ、任せな」
ルカが目を輝かせ、ライ姉はそっぽを向いて、くま吉は乗り気と三者三様。
「何かいいアイデアがある人?」
「相棒、俺っちに任せな」
もふもふな手がびしっと上がる。
「くま吉、どうぞ」
「ようは金がいるんだろ。だったら、作ったらいいんでい。相棒の炎で銀を溶かして、固めれば出来るはずだぜ。なっ主?あれ?」
ルカが頭を押さえた。
「却下。ルカは?」
ふふん。と笑った。
「エクス、スラムの人と私たちの違いは?」
質問返しをしてきたルカ先生のドヤ顔に思わず見蕩れ···じゃなくて。
「お金?」
「惜しい」
「なら、家?」
「旦那様、家はあります!」
食いついてきたのはライ姉。ええっと、ライ姉も先生役をやりたいお年頃なんだろうか?
「ごめん。そうだったね。降参。答えを教えて」
そのままライ姉に聞いてみると、自信がみるみる消えていき首をぶんぶん横に振ったあと気まずそうに、ルカにバトンタッチ。
「奥さま·····」
「答えは、服よ」
「う、うーん?服ぅ??」
ルカは不敵に笑うけど、そうかなぁ。
「まぁ見てなさい」
「分かった。僕は何をすればいいの?」
甘えるように上目遣いで見てきた。
駄目だ、この信頼された瞳に僕は逆らえない。
「その子たちの採寸をお願い」
「了解、任せて」
よく分からないけど、回想終わり。
「アニキ?」
「あっごめん。実はプレゼントがあってね」
「「プレゼントぉ??」」
驚く少年たちは、喜んでくれるだろうか。
「期待して待っててね」