表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

125/207

125 看板娘


 上機嫌で向かった先は定食屋。

 ルカは朝ごはんを食べすぎて、お昼はいらないって言っていたので気兼ねなく。


 あれ?店内に入ると誰もいない。

 休みかな?とざわざわした気分で奥の席まで行くと店員さんの声が聞こえてきて、ひと安心。


「店長ー。やる気が、でーまーせーん」

「うるせええええ」


 もしかして揉めてる?

 空いてる席にちょこんと座り、静かに待ってると気配に敏感な店員さんが気づいたのか厨房から出てきた。


「お客さん?あっ!エクス。いい所に、聞いてよー」

「はいはい」


 どうも、いつもより元気が無さそうな気が。


「店長が」

「あの、何かあったんですか?」


 まさかケンカでもしたのか?奥から出てきた看板娘が不機嫌そうに厨房を睨む。


「店長が賄い作ってくれなくて」

「え?」


 呆気に取られて、僕も厨房の方を見ると嘆き声が聞こえてきた。


「ぉぉおおお、違うぞ。食材がねえんだよおお」


 思わず、じとっとした目で犬娘をロックオンすると、容疑者は恥ずかしそうにもじもじ。


「な、何かな?そ、そんなに見つめられるとお姉ちゃん照れちゃうなー」


 ははーん。分かっちゃった。


「この事件の犯人が分かりました」

「え?」


 惚けても無駄ですよ。

 名探偵エクス君が指を突きつけビシッと解決!


「ずばり! 犯人は、貴女だ! 犯行動機は、お腹が減り過ぎてお店の食料を全部食べ尽した。 違いますか?」

「.......」


 あれ?まさか違うのか。

 怖い笑顔で、突きつけた指先に優しく触れてくる。そっと握られてドキドキが止まらない。

 うあああ、この笑顔は。

 心臓が痛いよ。

 そして悪い予感どおり、ぐにっと捻られた。

 

「痛たたたた。ギブギブ。ごめんなさい」

「もうっ全然違うぞ。最近、地元の食材が手に入らないんだ。お姉ちゃんは食いしん坊じゃないんだから」


 指がじんじんする。

 こういう中途半端な痛みは慣れてない。


「ううっ、そうだったんですね」


 くそう、名推理だと思ったのに。


「ぉぉおおおい。出来たぞー」

「はーい、店長ー」


 まぁ、僕くらいになると注文せずに出てくるらしく、店長に呼ばれて料理を取りに戻った背中を見ながら、今日の心意気は何だろうかと気持ちを切り替える、わくわく。


 ええ?

 ところが、出てきたのはスープ1品のみ?


「貧民スープ、お待ち」

「え?」


 疑惑の目で見ると、品定めするような目で見返してきた。

 ほほぅ、その挑戦乗ってやりますとも。

 目を瞑って神経を研ぎ澄まし、騙されたと思って1口飲む。

 美味っ.......くはないし、不味くもない。物足りない味わいで思わず首を傾げる。うん。騙されたな。


「どう?」

「えっと、美味しくないです」


 ありのまま答えると興奮しだして、うわっ!?う、うるさい。


「て、店長ー。不味いって!エクスが味の分かる男になってました」

「うおおおおぉ。さすが俺!坊主の味覚は俺が育てた」


 耳がキーンってするから、いきなり大声をあげるのはやめて欲しい。

 確かに、贅沢に毒されたのかも。2人のやり取りを聞きながら、二口目。


「良かったですね店長」

「よおっし、今夜はお祝いでスペシャル賄いで優勝すっぞ」

「店長ー!」


 やはり、満足できなくなっている。

 自分の欲望が怖い。

 裏切り者めっと喜びでぶんぶん揺れる尻尾を羨ましく見てしまう。


「あぁ、森林キノコも無いんだった。やっぱりさっきのは無しで」

「そんなっ!?店長ぉ」


 尻尾がへにゃへにゃに。

 前言撤回、同志よ。と涙目の犬娘を優しく見守った。


 現状を変えるには、どうすればいい?

 よしっ決めた。

 スープを飲み終わり、カチャンとスプーンを置いて決意を告げる。


「森林キノコは僕が何とかします」


 その言葉に振り向いた店員さんが、予想と反して獣耳がピクピクと不快そうに動くと叱られた。


「駄目だぞ、エクス。今の森は危険で、犠牲者も数年ぶりに出てるんだぞ」

「えっと、僕なら大丈夫です」


 あー、信じられてない。


「ゾンビを倒したからって、危ないのはお姉ちゃんが許しません」

「はい」


 言い争うのを避けると、ニパッと笑って抱きついてきた。尻尾がぶんぶんしてる。


「素直な子は好きだぞ。うりうり~」

「ふあぁ」


 うっ、慌てて抱きつきから逃れる。

 一瞬意識が飛びそうに。


「どうしたんだ?エクス」

「ご、ご馳走様でした!」


 怪訝な表情で心配そうに見てくる店員さんを振り切って、食堂を後にした。

 眠気に耐えれたけど、意外と凶器だったな。

 

 いけないと、気持ちを切り替えたけど、もやもやする。限定とか食べれないとか言われると気になってしょうがない。

 

「あー、駄目だ。心意気定食が食べたい」


 明日の昼までに、どうにか食材を手に入れたいところ。

 


「漫画3-1 バフ魔法はいかが」は、もうお読みになりましたか?


最高でした。

エクスが可愛いし、店員さんも可愛い。ポンコツなセーラさんも。♡支援宜しくお願いします!


挿絵(By みてみん)

ガンガンONLINE

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 「よおっし、今夜はお祝いでスペシャル賄いで優勝すっぞ」 ⇒「優勝」ってドーユー事なんでしょうか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ