116 新しい朝
一方、エクスの日常もあの日から少し変わってしまった。
ぼっちのルカに初めての友人が出来て、別館にライ姉とニトラを連れ込んだからだ。
そんな訳で、誰もいない静かな本館の一室に朝日が差し込みベッドから飛び起きる。
「よっと」
実は今日ちょっと秘密の計画があってわくわくしてる。
夜中まで二軍うさぎと鬼ごっこをしてたのか遊び疲れてすぴすぴと幸せそうに寝る僕の虚ろを起こさないようにカーテンを閉めて静かな部屋を抜け出して、顔をじゃぶじゃぶと洗って髪をセットしたら着替えて一人で出かけよう。
目指すは朝市。
美味しい朝食のために少し早起きをした。
果物丸かじり生活とは今日でさよならするつもり。
秘密の作戦スタート!
市場に近付くにつれ、がやがやと喧騒が聞こえてきた。
「うわぁ~!」
見慣れない景色にテンション上がる!店を広げたり早朝の競りで仕入れた品物を運んだり市場は活気に溢れている。
あの辺のはずなんだけど…
どこだ?あっ!約束した場所で眠そうにうとうとしているスラム街の太った少年を発見して合流。
「おはよう」
「ようアニキ。早起きだな。ふわぁぁ」
寝癖がぴんぴんしてる。
「一人?」
「悪い。あいつらはまだ寝てて。わふ。でも店はバッチリ押さえた。で、今日のターゲットは?」
えーと、彼はリーダーのロイ。
「全部だ!全部貰おうか」
「さすがアニキ!」
ロイが満面の笑顔になった。
今日は、彼らに朝市の屋台飯の案内を頼んでる。朝食の残りは彼らの昼ご飯になる約束をしてるから注文が増えて彼のやる気もアップしたみたい。
あぶく銭が入り、財布のヒモが緩々になって噂に聞いてた貴族流の食べ方に初挑戦。
「アニキ、着きました。まずは一軒目はここ」
「あら?いらっしゃい。ごめんねぇ店はまだ出来てなくて」
「気にしないでください。僕らは開くまでここで待ちます」
「嬉しいね」
「さすがアニキ」
この店は支度中だったけど、市場の端にあるため最初にした。
急いでくれたらしく少し待ってるとチチチッと熱くなった鉄板の上で卵が踊り出し、そこへ刻んだ香草と肉片を入れるとジューッという音といい香りが立ち昇る。傍らでひっそりと一緒に焼いていた薄いパンのような物で挟めば完成だ。
「はいよ。一番乗りだからサービスしといたよ」
「ありがとうございます」
熱々で凄く美味しそう。空中に浮いた保温ボックスに入れてすぐに食べたい気持ちを我慢我慢。
「次!」
次々と効率よく事前にセレクトした屋台を回って食べ物を手に入れていく。森の香草のサラダ。黒蜥蜴のソテー。オークのスタミナ焼き。
ごめん。フレッシュジュースだけは誘惑に負けて飲んでしまった。
目が覚めるようにスッキリしてそれでいて甘い。
「アニキ!ここで最後」
「5つください」
「なんだ?坊主。その魔道具は?いったい誰のお使いだ」
宙に浮かんだ保温箱を見てびっくりした顔の店主にロイが胸を張って答える。
「俺は大魔導師さまのお使いなんだ」
「ええ。美味しいものを探してまして」
「へへっ。こりゃ負けられねえな。坊主達、大魔導師さまによろしく」
僕がその大魔導師なんですが?
ロイがそんな僕を見てゲラゲラ笑った。
よし、お土産に一つマスタード入りを仕込もう。
「今日はありがとう」
「いいよ。あー今から昼飯が楽しみだ!」
ふと、人だかりがあった。
今までで一番多いかもと、ロイを見ると首を捻った。
「ええっと、おかしいな。あれー?昨日はあの辺りに店なんてなかったはずだけど?」
「人気店かも!見てくる。ここで、ちょっと待ってて」
「えっ?アニキっ」
どんな店なんだろうかとわくわくしながら列に並んでると、なんだか物騒な会話が聞こえてきた。
「号外!号外!森林警備隊の損壊。原因は魔人フール」
「大丈夫なのかよ?何やってんだイゼル達は」
なんだこれ?変な空気だ。
「王都へ救援を打診中です」
「ちょっと、それで王都からの援軍はいつ来るの?」
人垣を抜けると、予想とは違って新聞を配ってるみたい。
「はぁ、あの僕は……。うわわ」
くるりとターンして戻ろうとしたら後ろに並んだ人に押されるように先頭へと流れ、
「援軍は現在依頼中!続報を続報をお待ちください。どうぞ号外です」
「どうも」
新聞員から勇者新聞を獲得。
いらない。
ようやく行列から解放されたら、僕を待ってたロイが戦利品に興味を示した。
「あれ?アニキそれは?」
「ゴミだった」
戦果を掲げるとやれやれって顔で見てきた。ぐぬぬ。
「なら早く行こう。ところで余りは全部貰っていいんですよね?」
「うん」
「ひゃっほーう。アニキ、早く早く行きましょう」
現金なロイを見て呆れる。
さて、帰ってルカ達をびっくりさせてやるんだ。







