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115 魔人フール3


 フールは無造作に体に刺さった剣を抜いて捨てた。


「なんで殺さないのー?」

「ゼノ。これはエクスの獲物だ。本人が殺さなければ復讐は果たせない。スターバレット!」

「ぐおおおおおお」


 狂気をはらんだ顔で笑ったかと思うとさっきまで自分が座っていた仲間のジェネラルオークを力量を見せつけるためだけに大量の石礫で叩き潰した。


「何をしている?こうなりたくなければ早く脱げ」


 イゼル達は引きつった顔で狂人を見た。

 何をされるか分からないが、圧倒的な戦力差の前に降伏を選んだイゼルが1番に鎧を脱ぎだすと、しぶしぶと皆も続きだす。


「フール殺そうよー」

「いいやゼノ。お楽しみはこれからだ」


 フールは浸食度4で虚ろの影響を強く受けている。虚ろは感情を糧にしているため、これから起きるイベントにフールは舌なめずりした。


 お目当ての魔物が寄ってきた。

 ゴブリン。

 魔物は劣化した武器を持っている事が多いが、それは全て冒険者の落とし物である。だから、隊員が外した無造作に転がる新品の武器に興味を惹かれて、まずはゴブリンがおそるおそる寄って来た。ベテラン隊員のピカピカ輝く剣に汚い手で触ろうとする。


「さ、触るな!俺の剣に」

「ぐぎょ!?」


 びぐっとゴブリンが震えたが、フールは文句を垂れた隊員に近づくと肩を抱き、優しくゴブリンに語りだす。


「いいぞ、好きなのを持っていけ。お前もそれでいいよな?」

「頼みます。見逃してください。その剣は金貨5枚もしたんですが、いいですぅ」


 フールが肩にガッと力を入れると隊員の声は消えそうになって意見を翻した。

 魔人のご機嫌を損ねようとする馬鹿はここにいない。だったら降伏なんかしないし。


「ぎょっぎょぎょー!」


 ゴブリンが嬉しそうに重い剣を引きずりながら森の奥へと消えていくと、大切な剣をゴブリンなんかに盗られた隊員がたまらず泣き出す。

 もわっと溢れ出た黒い感情を吸い取ったゼノがびくびくと羽ばたきなが身悶えした。


「美味ちい。敗北の味!おいちいいいいい」


 二番手はオーク。

 きょろきょろと捨てられた装備を物色。


「ぶひっ」 

「おいっお前にはその鎧は着れないだろう」


 どう見てもサイズ違いのオークが鎧に興味を示した。相当ダイエットしないと無理そうなのだがお洒落さんは諦めない。あぁ、そんなに無理するとほらビキッと留め金が壊れてしまっただろう。しかしながらそれで満足なのか彼女は壊れた鎧を見せつけるようにくるりとターンした。


「ぶひん♡」

「ぬわああああ。糞が!俺の鎧をっ」


 戦々恐々と己の愛する装備の行く末を見つめるが、全て下級モンスター達に略奪されていく。

 残りの商品も少なくなってきた。

 最後に残った大盾に目をつけたのはハイオークの兄弟。


「なあ!その盾はローンが残ってるんだ。頼む。見逃してくれ!どうせ使わないだろ」


 残念ながらモンスター達に泣き落としなんて通用しない。

 ニヤニヤ笑った兄が大楯を構えると、弟がメイスを握った。


「ぶもっ!」

「ぶふーーっ」

「や、やめろ~」


 兄の合図で弟が踊る!彼らは音楽家になろうとしている。2人はコラボレーション。


 ゴワァーーン!

「うぁあぁぁぁーーーー俺の盾がああああ」」


 兄の大楯に弟のメイスが叩きつけられると勝利の銅鑼と悲しみの絶叫が森に鳴り響いた。これは森林警備隊の完全敗北を告げる音色。 


「これで満足か?」


 イゼルが不貞腐れ気味に問うと、ゼノが不満げにぱたぱたと飛び回った。


「こいつ臭いのー」


 イゼルは妙な容疑をかけられて何とも言えない顔をしたが、もちろんそれは体臭ではないらしい。

 フールの顔が歪む。


「女神の加護か。不愉快だ。潰しておこう」

「ま、待て!止めろ。ぐはっ」

 

 おもむろに近づくとイゼルの体に呪いをつけると顔が黒くなり、あっさりと豪運を消失。

 加護の喪失により、隠し持っていた約束された勝利の魔石をぽろりと落とした。


「やはり豪運は臭い。こんなものを隠し持っていたとはな」

「こやつ、儂の豪運を!」


 魔石をごくんと飲み込むフール。

 目が爛々と光り出す。


「あぁ美味い。力が漲る。さて、惨めに尻尾を巻いて戻って罪を償ってこい。この町から出たら私が惨たらしく殺してやる」


 しっしっと犬を追い払うような仕草をされるとイゼルが吠えた!


「逃げも隠れもせん。必ず後悔させてやるわ。覚悟しろよ魔人フール!」


 中指を立てながら帰る森林警備隊達に威厳は無い。


「美味ちいいいい!」

「エクス君、はやく会いたいよ。俺たちはきっと分かり合える」


 切なげな表情のフールに悪魔は問う。


「フール?エクスがあいつらを許したらどうするの?」

「そんな奴は仲間じゃない。その時は街と一緒に消してやる」


 もう狂っているのだ。

 魔王を殺した時か?裏切りの姫を殺めた時か?民衆を皆殺しにした時か?

 いつか分からないが、取り返しのつかないぐらいに彼は狂っていた。 


 スタンピードまであと少し。




感想欄で疑問を頂きましたので、作者が気付かなかった書き込み不足の部分について補足させてください。


○「エクス」

命題 効果時間延長

犠牲 初級魔法しか使えない。(才能、成長制限)


○エクス以外の魔導師(ルカ、マーラ、フール、ワールドサーチ)は、上級魔法が使えます。また肉体制限も緩めです。


○40話でシロンとエクスの会話の中で「意味のわからない犠牲を」とシロンが驚いたのは、魔導師のくせに上級魔法(中級魔法も)を手放した事の驚きになります。


○「特級魔法が存在します」

※命題になります。

エクスの延長

ルカのホロウフレンド

老人のワールドサーチ

マーラの超効率化

フールの再生


○「氷の魔法の場合」

初級 飛ばないアイスボール。

   (へろへろ投げるは可)

中級 飛ぶアイスボール

上級 巨大な氷塊が飛ぶ

特級 辺りを凍てつかせる


○「ルカとエクスの出会い」

①ルカが仕事で呼ぶ。

②くま吉喋りだす。

③仲良くなる。

ルカの対人恐怖症の限定解除は、虚ろが鍵になります。


○「ルカの過去」と、「ルカとエクスの出会い」については、明日発売の書籍のQRコードでダウンロードもしくは、ファミマで印刷できるA3用紙1枚の特別SSをご用意致しました(本編には関係ないので読まなくても問題はありません)


○マーラはこれから書いていきたいと思いますので、お待ちください


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― 新着の感想 ―
[一言] ああ、豪運先生が…なんてむごい……まあ、別にいいっか、イゼルですしw フールさんはエクスと分かり合いたいw
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