111 魔王フール1
ルカが気を許してほのぼのとなった空気を壊すかのように、すぐ近くで轟音と大きな揺れがしてトラブルは舞い込んだ。
「ひゃっ」
すっ転びかけてどこからか現れたニトラに助けられる。
「ありがとうニトラ」
「お兄さん何かきた!しかも近い」
毛は逆立ち相当に警戒しているようだ。
ルカもすぐに動き出して綺麗な声で中級魔法を紡ぐ。
「サーチ。怪しい気配は無いみたい」
「相棒、じっとしてんのは不味いぜ。ここは打って出るべきでい」
こくりと頷き、警戒しながら玄関扉を開けると轟音の正体が分かった。
庭に巨木が刺さっていて絶句する。天から落ちてきたのかと空を見上げたけど、さすがに意味が分からない。
「いったいどこから?」
ルカ先生にも分からないらしく、がくがく震えて首を振ってて怯えてる。反射的に僕の背中に隠れたから誰にも正解は分からないだろう。
代わりにニトラの耳がぴくぴくと反応。
「森がうるさい」
そう言われて森の方向を見ると上空には黒い塊のように鳥の大群が飛び立っていつもより騒がしいような気がする。何かが起きつつあるそんな不穏な空気。
「ファイヤーボール」
とりあえず招かれざる客の生木に火を付けるとバチバチと白い煙を上げて燃え始めた。生木はなかなか燃えないんだよね。
「え?エクスなんで燃やしたの」
「邪魔だったから片付けた?」
ルカの疑問に答えると、なぜかルカの震えがピタッと止まった。
「はぁー、怖がって馬鹿みたい。貴方がいるなら安心」
「やれやれ、動じない相棒は頼もしいぜ」
「……エクスさん」
あれ?引かれてないか。ライ姉がルカの言葉に興奮して喋り出し、ニトラは呆れ顔。
「そうです。ここには御主人様がいるんですよ。おおーいっ。もっと飛んで来なさい!」
「お兄さんこれじゃま」
「ライ姉も変なフラグ立てないで!?ニトラ違うからね。僕は無関係だよー」
場所を疑惑のフォレストエンドの奥地へと移すと、犯人が吠えていた。
「なぜ、街から出て来ない?臆したか、エックスゥゥゥ」
おっと犯人はエクスに恨みを持つ者か?関係あるじゃん。
どうやら巨木を適当に投げたのは、勇者新聞を読んでいた頭に角がある女のような細身の美丈夫のようだ。
NAME:フール
虚ろ:ゼノ(覚醒4)
命題:勇者
犠牲︰愚者
TITLE:魔王、元勇者
「くぷぷ、フール」
「笑うなゼノ!私の作戦は完璧だった」
ステージ4に進み魔人と成った元勇者は、制約で人間領へ入れない。
そこで、エックスの定期ルートで待ち構えていたが、なぜか今月はいつになっても現れなかったためついに先ほど我慢の限界を越えたようだ。
「フールは馬鹿。きっと気づかれてた」
「エックスの命題は延長だからそれは考えにくい」
悪魔は馬鹿にしたように笑う。
「くぷ、延長なんて命題は聞いた事がないし」
「なんだと?どういう意味だ」
元勇者を、挑発するように幼児のように背が低くい実体化した虚ろはふよふよと羽ばたく。
「延長なんて命題は虚ろの国でも聞いた事がない。おおかた敵は知能タイプだろう。支配か魅了か幻影か何かで誤魔化されてるんだよ。つまりこちらの動きがバレてて近づいて来ないのさ」
「貴様っ!」
怒りに任せて殴りつけるがするりと先読みして避けられた。
「くぷぷ、いったい誰なんだろうね?正義なんて気取ってる嘘つきは」
「くそっ、この世はずる賢い奴らばかりで腐っている」
フールからどす黒い感情が霧のように漏れると、ゼノが恍惚の表情で吸い取った。
「悪感情おいちいい!!そうだよもっと憎もう。で、次はどうする?」
「スタンピードヲ、オコス」
魔物で街を攻める事により領域を曖昧にして人間領へと侵入する作戦だ。
「フールと組んで良かったよおおお」
「準備するぞ、ゼノ」
多くの無辜の民が絶望へと沈むだろう。
ゼノは悪感情がたらふく食えるぞとボーナスタイムの予感に悪い顔をした。







