Episode19-7.どうやら文化祭らしい。
「えー、今年の文化祭は大成功って事で、みんな、乾杯!」
「かんぱーい!」
美咲の音頭で俺達はグラスを合わせる。
文化祭も無事終わり、放課後は打ち上げをする事になった。
クラス全員35人も入れるスペースなんて無いのでグループ毎でって事になり、メンバーは俺と美咲、レオの3人。
そしてさらにそこにC組と同じ方式で打ち上げをする事になったB組のうち、タマとマユミ、さらに選挙の日にタマの周りにいた女子2人……えーっと、小さくて元気な子がミクって呼ばれてたかな?あと1人、タマ程では無いけど少し背の高い、ミクにツッコミを入れてた大人っぽい子の4人が俺達に合流する事になって、計7人で打ち上げをする事になった。
場所は駅前のファミレス。こう見ると今日は打ち上げをしている生徒が多いのか、うちの高校の生徒が結構いるな。
「えっと、一応自己紹介しとくね。私、生桑 未来。ミクって呼んでね!で、こっちが……」
「大井出 琉花。ルカで良いよ。私もアルくんって呼ばせてもらうからさ」
2人が自己紹介する。するとレオもおずおずと立ち上がった。
「あ、で、僕が……」
「うん、知ってる。レオくんだよね?えーっとマユミの……」
「ミクっ!」
ミクが何かを言いかけてルカに止められる。まあ何を言いたかったのかだいたいわかるけどな。
「で、私がC組のクラス委員長をしている佐藤美咲ね。よろしく~!」
って事でそれぞれの自己紹介が終わった。
タマって友達がほぼいないイメージだったんだけど、案の定マユミを含む3人は2学期からタマと話すようになったんだとか。
それまではタマ本人から話しかける事も無かったし、タマの重そうな髪型と瓶底メガネで周りもちょっと話しかけ辛い。って感じになり、もしかしたら友達とかいらない人なのかも?って思われてたそうだ。
そしてタマが2学期デビューを果たし、マユミが勇気を出して話しかけたのがきっかけで、ミクやルカ、そしてクラスのみんなとも仲良くなったらしい。
そう考えると夏休みにタマを変身させてくれたクリスと、ヘタレな癖に勇気を出してタマに話しかけたマユミには感謝だな。
「まあ実は最初タマの事、転校生かな?って思ってたんだけどね。まさかこれほどの変身を遂げるなんて思わなかったんだもん!」
ってそっちかよ、マユミ。まあそれでも感謝しとこう。
取りあえずいつものメンバーにミクとルカの2人が加わったけど、みんな仲良く盛り上がった。
この2人なんだけど、ミクは賑やかし役、そしてルカは行きすぎたミクを制止する役割としてバランスがとれてる。
タマも良い友達を持ったものだ。
「それにしても、今年はレオくん、ベストカップルを獲得出来なくて残念だったね」
ミクが呟く。出来たらその話題は避けてほしかったんだがな。
どうやら俺とレオが去年ベストカップルになった事は学校中に知れ渡っているらしい。
「僕はホッとしてるよ。だいたい去年も何かの間違いだったんだからね」
レオは烏龍茶を飲みながら不機嫌そうな表情。
俺もその点に関してはレオと同意見なんだがな。
「でもアルくんは2年連続だもんねぇ。すごいじゃん。しかも去年と相手が変わるなんて、もうこれは女の敵だね!」
そうなのだ。俺は今年もベストカップルに選ばれてしまった。
まだ男同士ではないのが救いなんだけど……。
ちなみに俺の相手はもちろんタマ。
夕日が差す駅までの帰り道で、俺とタマが手を繋いで帰っているところを去年同様に後ろから盗撮されていたのだ。
何だか芸術作品を思わせるような、そんな写真だった。
それにしても、いつの間に撮られたんだ?
学校から駅の間で手を繋いだ事なんて1度しかない。
記憶の少女の事をタマに打ち明けた時だ。
去年のあの写真もよく撮れてたけど、まさか俺にストーキングしている奴でも……?
俺はハッとして美咲の方を見る。
美咲はタマと談笑していてこちらを気にする様子とか無い。
……まさかな。
「あー、楽しかったぁ。アルくん、今度は2人っきりで遊ぼうね!」
「そんなのダメに決まってるでしょ!」
別れ際、ミクが大きく手を振って改札に入っていく。
あの2人はこの駅に乗り入れている、小さな鉄道会社の電車で帰るようだ。
「さて、俺らも帰るか」
「うん、じゃあ、また来週ね!」
大きく手を振って美咲は帰っていった。
そして俺達は改札を通る。
「じゃあね、マユミちゃん。また明日」
明日って事は園芸部の当番の日なんだな。
「うん、レオくん、タマ、あー、あと、ついでにアル。バイバイ!」
俺はついでかよ!
そしてマユミと別れた俺達は電車に乗り、桜台団地の駅へ向かったのだった。
駅を降り、まずはレオの家に向かう。
この時期は19時になるともう真っ暗だ。
やっぱりこんな道、タマ1人じゃ歩かせられないな。
そんな事を考えていたら、レオの家に到着した。
「じゃあね、2人とも、また来週!」
レオが大きく手を振って家へ入っていく。
そしてここからの300メートルの距離を俺とタマ、2人手を繋ぎ並んで歩く。
「あのさ、今更だけど、歌、感動した」
「あ、ありがとうございます……」
タマが照れくさそうに礼を言う。
「あの……アルくんが出るように言ってくれましたから……優勝はアルくんのお陰なんです。最近、本当に私、充実してて……体育祭でも……全部全部、アルくんのお陰なんです」
そう言ってタマは俺の方を見上げてきた。
そして俺もタマの視線を感じて照れくさくなってくる。
でも体育祭はともかく今日ののど自慢は間違いなくタマの実力だ。
タマも色々経験してきて多少は自信がついてきたと思うんだけど、それでもいまいち自己肯定感が足りてないような気がする。
どうにかタマが自信をつけてくれるような事を言えないものだろうか……?
「えっとな……。俺は間違いなくタマが優勝すると思ってた。だから推したんだ。もしかしたらみんなに知ってもらいたかったのかもしれないな……。俺の彼女って実はすごい奴なんだぞって事をさ。どうだ?今のところ上手くいってるだろ?」
俺がおどけて見せるとタマはプッ!っと吹き出す。
「けどさ、これは俺の力でも何でもない。これは今までタマが頑張ってきた結果だ。俺は迷ってるタマの背中を軽く押しただけだからさ。だから自信を持って良いと思うぞ」
するとひとしきり笑い終えたタマはいきなり背伸びをして俺にキスをする。
さすがに今回は届く。って言うか、首に手を回されて俺の頭も自然と下がった。
以前に比べると随分とタマの中でのキスのハードルが下がったものだ。
唇を離し、そして微笑みながら、タマは俺を見上げる。
「あの……それでも私はアルくんがいたから頑張れたし、アルくんがいたから勇気が出たんです。もう私、アルくんのいない生活なんて、考えられません」
そうだな。俺もタマのいない生活なんて考えられない。
もしタマまで俺の前から去っていったら、俺はおそらく抜け殻のような、そんな日々を送る事になるんだろう。
そんな事、想像もしたくない。
俺は周りに誰かいないか、それさえも確認せずに、衝動的にタマに抱きついてしまった。
タマの細身の体を包む腕の力をグッと込める。
「あ、アルくん……ちょっと苦しいです……」
タマが少し息苦しそうな様子で声を絞り出す。
「悪い、タマ、ちょっと我慢してくれ」
いつもならば苦しいって言われた時点で俺は力を緩めた事だろう。
だけど俺にはそれが出来なかった。
この感情は、タマに対する愛情なのか?
それともタマが居なくなる恐怖なのか?
今の俺にはわからない。
俺はそんな複雑な感情が湧くのを感じながらもしばらくの間、タマをギュッと抱き締めていたのだった。
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9月も最終日。先ほど思いつきで短編をあげて、そこでも触れたのですが、季節の変わり目ですので、体調にはお気を付けて皆様お過ごしください。
その9月なんですが、前作で4ヶ月目に達成した、月間6000PVを今作では3ヶ月目で達成致しました。
もちろん個人としての成長が数字に出たようで嬉しくもあるんですが、前作のキャラクター達に「人気、出せなくてごめんよ?」って謝りたくなる気持ちもあったりします。
前作は私の処女作ですので思い入れがありますしね。
さて、次回なんですが、Chapter3の最終話となります。
ウジウジ悩んでたアルくんもどうやら吹っ切れるみたいですのでお楽しみに。
それではまた♪




