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Episode2-1.どうやら俺には血の繋がってない姉と妹がいるらしい。

 おはようございます!

 第2話、スタートです♪



 近所でも有名な前衛的なデザインのかなり大きな一軒家。

 それが我が家、1級建築士でわが父、山田(やまだ) 優作(ゆうさく)がデザインした家だ。

 つい先々月まではまともな家の形をしてたんだがな。



「ただいまぁ」


「おかえりー、お兄、今日の夕食は何?」


 先に帰っていた妹の奈緒(なお)が俺を出迎える。

 奈緒は現在小学5年生。基本的に家族で一番最初に家に帰ってくる。


「ああ、魚正(うおまさ)のおっちゃんがサービスしてくれたんだ。今日はアジフライな」


「やったぁ!お兄のアジフライ、大好き!」


 ああ、奈緒はなんて素直で優しいんだ。

 俺のもうひとりの妹とは全然違って見える。

 ちなみに魚正とは、商店街にある魚屋さんだ。

 そこの大将とは子供の頃からの顔馴染みで、色々サービスしてくれたりする間柄だ。


「そう言えば2人はもう帰ってきてる?」


「アンちゃんはまだだよ。チコちゃんは帰ってすぐに部屋に行っちゃった」


 俺には最近、姉と妹が1人ずつ出来た。

 姉はアンこと桐原アブリコット、妹はチコこと桐原アンディーヴだ。

 そう、それはつい先々月、3月の中旬の事だった。






「私たち、結婚しました!」


 うちの父親とプリンセスキリハラの2人が手を取り合い、俺達2家族の前でいきなり結婚発表をする。


 って、「します!」じゃなくて「しました!」かよ!


 さすがにこの現実に対応できてるのは、元々何も考えてない楽天家の奈緒だけのようで、アン、俺、チコの3人は何が起こっているのか訳も分からないって顔になった。

 いわゆるポカーンって顔だ。


 そしてその結婚発表の日、アン、俺、チコの3人で話し合いを持った。


「えーっと……アルちゃん、チコちゃん、ママとおじさんの言ってた事だけど……多分何かの間違いよね?」


「ああ、さすがにこんな現実、おいそれとは認められない」


「うん、これはいわゆる明晰夢ってやつだね!」


 ちなみに俺達3人、アン、俺、チコは小学生の頃からの幼なじみ。

 俺が小1の頃、親が駅周辺の再開発で造成された団地で土地を買い、それまで住んでいた茨城県鹿嶋市から引っ越してきた。

 それと同時に引っ越してきたのが桐原家でお隣同士、今まで仲良くやってきたんだけど………。


「じゃ、じゃあ、こうしましょう!取りあえず一晩寝たら、何も無かったって事になるからね。そう、これは夢なの!」


 アンの提案にのった俺とチコは取りあえずその日の事は夢だったと結論付けて、取りあえず寝ることにした。




 そして翌日、それは現実だったって事を俺達はまざまざと見せつけられる事になる。




 その日が授業だった俺は、当時中学を卒業したばかりで、うちの高校への進学を既に決めていたチコからrineが来た。


《なんか家に重機が入ってきてアルん家とウチの間の壁を壊してるんだけど!》


 なんなんだ?それって器物損壊じゃね?

 だけど今は授業がある。

 心配だけど帰る事なんてできない。


 そしてその後も2時間おきぐらいのペースでチコからrineが送られてくる。


《今度はリビングに防護シートが張られて、何だかすごい音がしてる!》


《なんかいつの間にかアルの家と私ん家が繋がっちゃってるんだけど!?》


 何だか建築現場の実況を見ている気分になってきた。

 そして放課後……。




「あ、アルちゃ~ん!」


 教室の出入口付近で俺の名前を呼ぶ何とも情けない声。

 その声の主はアンだった。

 やはりアンのスマホの方にもチコからのメッセージが入っていたらしい。




 アンと一緒に急いで家に帰る。

 そして俺達が見たものは、今までの俺達の住んでた家とは大きく変貌したデザインの家だった。

 元々2つの似たようなデザインの家だったけど、それがめっちゃ雑にくっついている。





「すっごーい!家がめっちゃおっきくなってるよ!」



 先に帰った奈緒が喜んで大騒ぎしている。

 そして奈緒と並んで完成したリフォーム後の家を満足そうに眺める父さん、そしてプリンセスキリハラ。

 プリンセスキリハラの隣には、未だ現実を受け止め切れていないチコが憔悴しきった表情で突っ立っていた。


「おお、2人とも、おかえり」


 父さんがすっかり寂しくなった……って言うか、太陽の光を反射して光り輝く頭頂部の汗をタオルで拭いながら、変わり果てた家を見て呆然とする俺とアンを見る。


「やっぱり家族だし、一緒に住まないとってな」


 聞いてもいないリフォームのわざわざ理由をドヤ顔で語る。


「け、建築基準法……」


 俺が何とか声を絞り出すと、父さんは不思議そうな表情をする。


「アル、お前、案外難しい言葉を知ってるんだな。なんだ?それ?美味いのか?」


 って、1級建築士っ!


「あ、それとな、4人に言っとかなきゃいけない事があるんだ。な、(きさき)ちゃん」


「ええ、優作さん」


 実はプリンセスキリハラの本名が妃さんだって事を知ったのはこの時だ。

 父さんと妃さんはアン、俺、チコ、奈緒、ひとりひとりの顔を見る。


「私達、明日からハネムーンに行ってきます!」


 父さんとプリンセスキリハラは手を繋いでとても幸せそうな表情でそんな宣言をしたのだった。







「今ねー、パパ達モルジブだってー!スッゴいきれいな海だね!」


 奈緒がおそらく家族全員に送られてきたであろう、その現実感からかけ離れたような真っ青な空を映してキラキラと輝く海の画像を見て、その海と同じように目を輝かせている。


 ああ、もう、それは幸せそうで何よりだな!

 俺は下校途中で買ってきた鯵とキャベツを冷蔵庫に入れてバタンとドアを閉める。

 そして俺はもう一度あの日の出来事を思い出す。









「目的の無い旅、それは新しい自分探しの旅なのよ!」


 プリンセスキリハラが何だかうっとりとした表情で語る。


「その歳になって見つからない自分なんて、それはただの他人なんだと思う」


 すかさずチコが鋭いツッコミを入れる。言い得て妙だな。

 なんとこの2人、目的もなく世界中を回るのが夢だったらしい。


「パスポートが切れるまでには帰ってくるよ」


 そう言い残して2人は新品のパスポートと小さなスーツケースを片手に旅立って行った。

 まあ俺に預けてった生活費用の銀行口座には10桁程度入ってたから、家族4人でしばらくは生きていけるだろう。

 って言うか、父さん達いったいどれだけお金を貯め込んでるんだよ?

 いや、この金額にはかなりびっくりした。





 そんなこんなで山田家兄妹と桐原家姉妹の奇妙な同居生活が始まったんだけど……。


 そう言えば今日はアンから来たメッセージもチコから来たメッセージも両方既読だけ付けて無視してたんだった。

 このままじゃ2人ともへそを曲げてしまうな。取りあえず先に帰ってきてるチコの機嫌だけ取っておくか。

 そうして俺は増築された巨大なリビングを通り、旧桐原邸に向かう事にしたのだった。




 ここまで読んでくれてありがとうございます!




 ブックマークやご感想などはお気軽にどうぞ。




 それではまた次回♪

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