Episode10-3.どうやら俺と彼女はただならぬ関係らしい。
「も、もう、いきなりなんて、びっくりしちゃいます」
タマは俺に非難の言葉を浴びせるが、その表情はどっちかって言うと怒ってるってよりも照れているように見える。
「もしかして嫌だったか?」
するとタマはただでさえ赤い顔をさらに赤くして俺を上目遣いで見てきた。
「い、いえ……あ、あの……むしろ嬉しかったって言うか……」
最後はごにょごにょ言いながらまた俯いてしまって何を言ったのかがよく聞こえなかったけど、別に嫌がっている様子はなさそうだ。
「まあこれも治療だと思えば良いんじゃないか?」
何だかんだでタマからの追求をキスする事で誤魔化した俺は、もう一度レオと委員長の遊んでる方を見る。
あれ?少し目を離した隙に知らない男が2人に声を掛けている。
「なあ、タマ。あの2人、もしかしてナンパされてんじゃね?」
すると俯いていたタマも顔を上げ、2人の方を見る。
「え、ええ、十中八九そうですね」
タマもそう言った雰囲気を感じ取っているようだ。
「あのさ、タマ。ビーチにいる間、ずっと一緒にいるって約束だったけど……」
するとタマは笑顔で俺を送り出す。
「はい、あの2人を助けに行ってあげてください!」
「悪い。じゃ、行ってくるわ」
そう言って俺はビーチパラソルの下にタマを残し、ナンパされている2人の元へ向かったのだった。
「もう、2人ともかわいくて、アイドルかと思っちゃったからさ。ね、いいじゃん!一緒に遊ぼうよ!」
ああ、なんてテンプレなセリフでナンパするんだろう。
もし俺だったら……ダメだ。ナンパなんてしたことがないからわからん。
まあチラッとレオの表情を見てると困ってるのがわかったから、俺も2人に声を掛けるか。
「レオ、委員長、どうした?」
俺が声を掛けるとレオと委員長がパァッと顔を輝かせる。
そして俺とは身長差が20センチ程だろうか?あまり身長は高くない。
茶色く染まった髪の毛に小麦色の肌をした、レオと変わらないぐらい華奢な男に俺は声を掛ける。
ああ、緊張するな。だいたいこんなシチュエーションなんて、初めてなんだ。
どうにか俺を見るだけで引き下がってくれると助かるんだけど……。
「あの、俺の連れに何か?」
おお、ナンパするだけあって結構イケメンじゃないか。
俺がナンパ男の顔を興味深く見ていた1秒後……。
「ひゃぁぁぁ──────!!ご、ごめんなさいぃ──────!!」
すごい勢いで逃げられてしまった……。
俺で膝丈ちょい上ぐらいまで水があるのにすごい速さだ。
って、これからどう話して引き下がってもらおうか、色々と考えていたのに、いきなり逃げるなんて、なんて失礼な奴なんだ。でもちょっと助かった。
そしていつもの事とはいえ、少し悲しくなってくる。
「あ、ありがとう、アルくん!あの人しつこくてさ」
レオが俺に感謝を述べる。
「いやーあの人、レオくんが男だって言っても全然信じてくれなくてさ。いやぁ、助かったよ。ありがとう、アルくん!」
委員長はもしかするとナンパされ慣れてるのかな?
レオよりは落ち着いて見える。
「レオ。今度からナンパされた時はチ○コ見せたら良いんじゃないか?」
「絶対にヤダ!こんなところでチン○なんて絶対出さないからね!」
レオが真っ赤な顔をして自分の股間を隠すかのような素振りを見せる。
「もうっ、2人とも乙女の前でチンコチンコ言わない!あ、そろそろお昼じゃん」
委員長は腕に付けていたウォータープルーフのケースに入っているスマホを起動して時間を見る。
「じゃ、そろそろお昼にしようよ!」
そう言って俺たちは一旦ビーチパラソルに戻りタマを連れて海の家に向かったのだった。
「いや、まさか2人がキスしてたのを見てたらいきなりナンパされるんだもん。もう2重でびっくりだったよ」
しっかり委員長とレオに見られていたらしい。
レオはその時の事を思い出して、赤くなって俯いている。本当にレオって純情だな。
そしてレオと同じく真っ赤になって俯いている人がもう1人。
タマもまさか見られていたとは思わなかったのだろう。
「でもさ、私、2人の馴れ初めを聞いたときは、もしかしてすぐに別れちゃうんじゃないかって心配してたけんだけど、良かったじゃん、2人とも。ね、レオくん!」
「あ、うん、僕も嬉しいよ。良かったね、アルくん、タマちゃん!」
2人から祝福された上に食事まで奢ってもらった。
こりゃ委員長とレオには後で何かお返しをしなきゃな。
「でもキスかぁ……。タマちゃんの男性恐怖症もほぼ完治なんじゃない?」
委員長はそんな事を尋ねてくる。
実際にどうなんだろう?
だいたいタマの周りの男って、慣れてる俺と、男に見えないレオしかいないんだもんな。
「なんならさ、タマちゃん、2学期になったらアルくんやレオくん以外の男子に話し掛けたらどうかな?それで話ができるようになってたらすごいんじゃない?」
委員長の提案にタマは最初、戸惑ったような表情を見せたが、すぐに表情が変わる。
「はい、あの……私、頑張ってみます」
そう言ってタマは意気込む。
そして俺はタマのそんな姿を見て、心の中で「頑張れ!」とエールを贈るのだった。
昼食を終えて俺達は海に出る。
午前中はあまり遊べなかった俺とタマは浮き輪を1つ借りて、タマと2人で遊泳可能エリアギリギリまで沖に出る。
これぐらいだったらメガネを掛けていても楽しめるだろう。
浮き輪はタマに使ってもらい、俺はそれを泳いで押す感じだ。
ちなみにレオと委員長の2人は何故か波打ち際で砂のお城を作っている。
このビーチはかなり遠浅なんだけど、ここまで来るとさすがの俺も足は付かない。
どれぐらいの深さかは想像つかないけど、少し潜るとキラキラと太陽の光が差し込む透明の海中に魚が泳いでいるのが見える。
本当、委員長は良いビーチを選んでくれたものだ。
タマにもこの光景を見せたいな。きっと感動するだろうに。でもさすがにメガネをして潜らせて、メガネが流されたりしたら大変だし。
だいたいタマって今年、4月にメガネをひとつ壊してるし。
そう言えば、あの時の右手の傷はどうなってるんだろう?
一度海面に出る。
タマは上がって来た俺の方を見て、微笑んでいる。
「タマ、ちょっと浮き輪に入れてくんね?」
「え?えーっと。こうですか?」
タマは俺のする事を察したのか、浮き輪にぐっと自らの背中を押し付ける。
そして俺は一度潜水し、そして海面の浮き輪の隙間目指して浮上した。
「よっ」
俺が海面から顔を出し、右手を軽く上げて挨拶すると、何かが可笑しかったのか、タマが声を上げて笑う。
「悪い、ちょっと胸に引っかかっちまった」
むちゃし過ぎたかな?俺はタマの決して小さくはない胸の圧力に阻まれながらも、何とか両腕を浮き輪に通す事が出来た。
「もうっ、無茶し過ぎです」
「まあちょっと休憩したかったしな」
今日の海面は穏やかに上下し、俺達は波に乗りゆらゆらとまるで木の葉のように揺れる。
お互いの顔がかなり近い。
先ほどのビーチと違って、無茶してこんな沖まで来たのは俺達2人だけのようだ。
俺がタマの顔を見るとタマも何をしたいのか察し、そして目を閉じる。
そして俺は片手でタマの頭を支えつつ、お互いの少し塩っ辛い味のする唇を重ね合わせたのだった。
唇を離してまたお互い顔を突き合わせる。
「タマ……当たってる」
浮き輪に入った時点からタマの胸が当たってるのはわかってたんだけど、一応それを伝えておく。
そんなタマはあまり余裕がないような表情で、俺を見ている。
これ、俺って抑える事ができるんだろうか……?
俺はそんな心配をしつつ、同じ浮き輪の中でお互いの体を密着させつつキスを何度も繰り返すのだった。
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