Episode4-1.どうやら俺には助っ人が必要らしい。
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それでは第4話、スタートです♪
それはレオとタマを送っていった、翌日の事だった。
「アルくん、わざわざ手伝ってくれて悪いねぇ」
「いや、これぐらいならいつでも付き合うよ」
俺と委員長は2限目終了後の化学室で実験器具の後片付け。
本来だったらこれって日直の仕事なんだけど、次の授業は歴史の授業。
担当教師の姉ちゃ……芹澤先生は自分では持ちきれない程の資料を駆使して授業を進めるスタイルで、日直は社会科準備室にその資料の数々を取りに行かないといけなくなる。
って事で、委員長と俺が日直の仕事を一部引き受けたのだ。
こんなテスト期間中に、実験をするか?普通。
俺達は何とか2限目終了時間の1分前に片付けを終えて化学実験室から出る事ができた。
「ごめんね、アルくん、貴重な休み時間が削れちゃった」
委員長が帰り道に手を合わせる。
そんな仕草の1つ1つが何だか女の子らしい。
実は委員長ってレオ以外に話しかけてきてくれる唯一のクラスメートだったりする。
そんな委員長なんだけど、見た目は普通にかわいい系。クリックリの大きな瞳に髪の毛は肩ぐらいの長さのボブって言うのかな?
明らかに髪を留める為って言うより飾りの意味合いの強いヘアピンがよく似合っている。
動きが直線的で途中の障害物を蹴散らしながら進む、重戦車のようなパワー系女子なんだけど、体型は結構細身だったりするのが良い意味でギャップになっている。
「どうせ早く帰っても、レオとだべってるだけだろうし全然問題ないよ」
そう言って委員長のフォローをしてたら授業終了のチャイムが鳴ったのだった。
「あっ、アルちゃーん!」
アンのクラスも移動教室だったのか、俺を見つけたアンがその小さい体で大きく手を振って駆けてきた。って、生徒会長が廊下を走るなよ……。
「あ、こんにちは、会長」
委員長がアンに挨拶をする。
「あっ、美咲ちゃん、お久しぶり!」
えーっと……美咲って……?
「美咲ちゃんって、今年はアルちゃんと同じクラスだったんだね!」
「ええ、仲良くしてもらってます」
委員長が笑顔で対応する。
って、もしかして美咲って名前、委員長の名前か?
俺はてっきり生まれたその瞬間から委員長だと思ってたよ。
「じゃあね、2人とも、勉強、がんばってねぇ~!」
お前がな!って心の中でツッコミを入れる。
まさかアンにそんな種類の激励をされるなんて、思いもしなかった。
アンがまた大きく手を振ってクラスメイト達の中に入っていく。
やっぱり生徒会長だけあって人気あるんだな。
「じゃ、私達も教室に戻ろ?」
そう言って委員長は眩しい笑顔で俺を見上げるのだった。
「そう言えば、委員長ってなんでアンと知り合いになったんだ?」
「委員長会議で知り合ったんだよ。会長も出席してたからね」
化学実験室のある特別校舎から、俺達2年生の教室のある本棟校舎までは結構距離がある。
無言だとそれはそれで気まずいので、先程の出来事を俺は話題にした。
「それにしても委員長が美咲って名前なの、初めて知ったよ」
「ええー!?それちょっと酷くない?私にもちゃんと名字も名前もあるんだよ?」
委員長が不機嫌そうな顔をする。
ヤバい。あまり想像はできないけど、委員長を怒らせるとそのパワーに任せたパンチが飛んでくるかもしれない。
パワー系女子の委員長の事だ。タマの繰り出すメガネパンチとは破壊力が異なる事だろう。
「もしかして、アルくん、私の名字も知らないとか?」
「そ、そんな事……」
実は大いにある。
2年生に進級した時、最初のロングホームルームでひとりひとり自己紹介をしたはずなんだけど、俺は自分が何を話そうか必死になっていて、他人の話なんて聞いてなかったんだろうな。
「じゃあさ、私の名字、当ててみてよ!制限時間は教室に戻るまでね!」
委員長が悪戯っぽい表情で俺に催促してくる。
って、もうあんまり距離ないじゃん!
「えー………っと、さ、佐藤……さん?」
もちろん当てずっぽうではあるんだけど、日本ではこれが一番の正解率を誇るはずだ。正解率は約1.5%だけど……。
「なんだ、知ってんじゃん……。ってどうせ当てずっぽうだろうけどさっ!」
「ぐはっ!」
そう言って委員長は俺の背中を叩く。
いや、多分軽く叩いたつもりなのかもしれないけど、口から内蔵が出てくるかと思った。
つまり、委員長のフルネームは『佐藤美咲』か。
うん、でもこれから先も委員長だな。
そっちの方が呼び慣れてるし。
んっ?でも待てよ?
何だかその佐藤美咲って名前、聞き覚えではなく、見覚えがあるぞ……?
……そうだ。この学校では定期テストの結果が出る度に、上位10名が張り出される。
何とも古臭い風習だと思うけど、テストに対するモチベーションアップに繋げる為にしているって事だ。
そして俺は入学以来ずっとトップ。
そしていつも俺の後ろにいたのが……。
「佐藤……美咲……!」
「はいっ!?」
いきなり俺に名前を、しかもフルネームで呼ばれて驚いたのだろう。
委員長はビクッと肩を震わせて俺を見上げる。
俺はそんな委員長の正面に立ち、彼女の両肩に手をのせて懇願する。
「委員長、ちょっと俺の頼みを聞いて欲しいんだが!」
「は……はぁ……」
俺のその必死な様子に驚いたのだろう。
俺を見上げる委員長の表情は驚きと戸惑いの表情に満ちていたのだった。
「って事で、明日!土曜日!俺んちで1日掛けて勉強会を開催する!昼食も出すからタマとレオは強制参加なっ!」
放課後の教室で俺はタマとレオの2人を横に並べてそう告げる。
今回は俺に優秀な助っ人が付いてくれた。その名は”委員長”こと佐藤美咲!
頭脳明晰、成績優秀、運動抜群、眉目秀麗、筋力充実、実績充分!
こんな完璧超人がまさか身近に存在するなんてな。
「ふふっ、あなたに私の成績を上げる事なんて、できるのかしら?」
初対面で緊張してるからって、タマがまた含み笑いをする。これって予備知識無しで聞くと結構失礼だよな。
「へぇ、アルくんの言ってた通りだね。無意識に出ちゃうんだ」
良かった。委員長は誤解しなかったみたいだ。
事前にちゃんとタマの特性を言っとかないと、アンやチコ、奈緒のような被害者が出てしまう可能性があるもんな。
「へへっ、私、C組のクラス委員長をしてる、佐藤美咲!よろしくね、タマちゃん!」
「よ、よろしくお願いします……」
委員長の差し出した右手をタマが掴む。
その気さくな態度に緊張感も多少薄れているようだ。
「へえ、僕、委員長のフルネーム、初めて知ったよ!」
レオ、お前もか……。
そんなこんなで土曜日は1日使って勉強会って形になった。
そして土曜日。
待ち合わせは駅コンコース内にあるベンチ。ひとりで占有するのは心苦しいけど、それ以前に誰も俺に近付こうとしないのがちょっと悲しい。
時間は9時40分頃。
タマとレオの2人は9時53分着の電車で来る予定だ。
「やっほー、アルくん、待った?」
「いや、今来たところ」
そしてまるでドラマのワンシーンのようなやり取りで俺と委員長は落ち合う。
実は委員長、校区は違うんだけど、俺んちのご近所さんだった。
線路を挟んだ反対側だから、学校から見ると俺んちよりはほんのちょっと遠い程度の場所に住んでいる。
考えてみれば、委員長の私服姿って初めてだ。
何だか動きやすそうな、大きめの白いプリントパーカーに黒いスキニー、そしてスキニーと同じ色のスニーカーの、気楽ながら結構垢抜けた出で立ち。
シーンにしっかりと合わせている感じがして好感が持てる。
「アルくんの私服って初めて見るけど、やっぱり背が高いしスタイルが良いからかっこいいね!」
しかもしっかりと褒めてくれる。委員長、やはり出来る女だ!
「もうすぐ2人も来るだろうからさ、待ってようか」
「うん、そうだね!ね、隣、良い?」
「ああ」
おそらく委員長はタマに気を使ったんだろうが、別にそれは関係ない。
俺とタマは付き合ってはいるが、別にそこに恋愛感情なんて存在しないのは俺の周りの人間ならみんな知っている事だ。
「で、どう?タマちゃんだけど、男性恐怖症は治りそう?」
「そうだな。俺には結構慣れてきたとは思うんだけどさ。けど、タマはそれ以外にも成績だろ?あと、緊張しやすい部分も何とかしなきゃならんしな。まだまだ時間が掛かりそうだ」
「ふーん、そっかぁ。でも、アルくんってすごいよね。いきなり見ず知らずの女の子に妙な告白されて、普通だったらその場でバイバイするとこでしょ?どれだけ面倒見が良いのよ?って思ってさ」
まあ、確かに。
委員長には……って言うか、記憶の少女の事は誰にも話してはいない。
何も事情を知らない周りからすれば、俺がすごく妙な事をしているように映るのかもしれない。
「ま、その面倒見の良さもアルくんの良いとこだとは思うけどね。私、知ってるよ。いつも授業とかでレオくんのサポートしてるよね?本当、それってすごい事だと思う」
委員長は俺の事を買い被りすぎだ。
レオは俺に出来た初めての男友達だから……。
多分レオが俺から離れていくのが嫌で、ついつい面倒を見ているんだと思う。
それに、もしタマに記憶の少女の面影が一切なかったら、俺は付き合う事も、今みたいに世話を焼く事もなかっただろう。
結局俺は俺に利益が無ければ動けない人間だ。
だけど委員長はその部分を勘違いしているんだろう。
「私はさ、自分に何かしらの見返りが無いと動けない人間だからさ。だからアルくんみたいな人って、やっぱりすごいと思っちゃうんだよね」
俺の隣に座った委員長は、まるで遠くを見るような、だけどどこを見ているのかはっきりしない視線を前に向けて、まるで独り言のように呟く。
「委員長だって今日は協力してくれるじゃないか。別に報酬なんて出ないのにさ」
俺がそう言うと、委員長はクスッと笑い、隣の俺を見上げる。
「報酬はね、うん、しっかりもらう予定だから!アルくん、覚悟、しといてよねっ!」
そう言って委員長は右手を目一杯伸ばし、俺に軽くデコピンをして悪戯っぽい表情で笑う。
さすがはパワー系女子。
委員長から食らったデコピンの軽い痛みはその後も十数秒ほど疼痛として続いたのだった。
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