Episode0.どうやら俺の幼なじみで血の繋がっていない姉と妹が俺の彼女のストーキングをやめてくれないらしい。
皆様、ご無沙汰しております。
初めての方ははじめまして!前作も読んだよって方は、また来てくれてありがとうございます!
それではオープニング!スタートです♪
「えーっと鏑木玉三郎、通称タマ、16歳、高2、身長は高め、体型は痩せ型。メガネ女子、見た目はお淑やか系美人、成績は下の下、運動は超苦手、部活は帰宅部、交友関係は狭くて浅い、彼氏がアル、趣味は……」
「あのさぁ、チコ。これってただのストーキングじゃね?」
2階と3階の階段にある死角にそのちびっこい体を隠した少女、”チコ”こと『桐原アンディーヴ』がメモ帳とペンをポケットに入れて、人差し指を口の前に持っていく。
「シーッ!アル、シーッ!シーッ!あっち行けー!」
チコが必死で俺を追い払おうとする。
兄ちゃんに対してその態度はどうかと思うぞ?
ちなみにこいつは俺のひとつ下で家が隣同士……だったけど、今は同居している幼なじみ。
フランスかぶれのこいつの親がアンディーヴって長くて訳わからん名前を付けたもんだから、俺が小学1年生の時にチコってあだ名をつけてあげたんだけど、そのあだ名が世間一般で利用されるようになり、こいつの親でさえこいつの事をチコって呼ぶようになった。
やっぱ長くて面倒だったんじゃん。
ちなみになんでチコになったかって言うと、フランス語でアンディーヴは英語でチコリ。あの美味しくて可愛らしい、白菜にちょっと似た野菜から取った名前だ。
「どうしました?アルくん。あ、チコちゃん、こんにちは!」
俺とチコとのやり取りに気付いたタマが近くまできて隠れているチコに気付く。
ちなみに俺はこの女の子、”タマ”こと『鏑木玉三郎』と付き合って現在1ヶ月。
なぜ俺の彼女がこんな男みたいな、しかも歌舞伎役者みたいな名前になったかって言うと、タマが生まれた日に遡る。
タマが生まれた病院で出会った占い師の女性と彼女の親が意気投合。
タマがちょっと未熟児気味だったって事もあって、その占い師さんのアドバイスで、男の子のように逞しく育つようにと願いを込めてこの名前になったんだとか。
ちなみに玉三郎って男っぽいし長いからって事で、幼稚園に通ってた頃の友達に『タマ』ってあだ名をつけられたらしいんだけど、そのあだ名が世間一般で利用されるようになり、タマの親でさえタマの事をタマって呼ぶようになったんだとか。
やっぱ名付けに後悔してたんじゃん。
「か……鏑木玉三郎……先輩!お、覚えてろよーっ!!」
え?何もされてないのにいきなり捨て台詞?
タマに見つかり階段から転げ落ちるような勢いで……いや、実際に転げ落ちながら脱兎の如く逃げていくチコ。怪我してないと良いんだけど。
「えっと私、チコちゃんの事、ちゃんと覚えたんですけど……」
タマはタマで捨て台詞だという事にも気付いていない。
ちなみにチコの逃げた先は3年生の教室しかない2階。
そこにチコの知り合いなんて……そう言えばひとり。
チコの姉でもうひとりの幼なじみ、そして同居人の、”アン”こと『桐原アブリコット』がいる。
フランスかぶれのアンの親がまるでペットのように名付けたもんだから、俺が小学1年生の時にアンってあだ名をつけてあげたんだけど、そのあだ名が世間一般で利用されるようになり、こいつの親でさえこいつの事をアンって呼ぶようになった。
やっぱペット感覚だったんじゃん。
ちなみになんでアンになったかって言うと、フランス語でアブリコットは日本語で杏子。あの桃に似てかわいい形をしたオレンジ色の果物から取った名前だ。
桐原家の親ってやっぱりぶっ飛んでる。
いや、親だけじゃないか………。娘の2人も……。
「鏑木玉三郎、通称タマ、16歳、高2、身長は私よりもちょっと高め、体型は痩せ型だけど何だか着痩せするタイプっぽい。メガネ女子、見た目はお淑やか系美人、成績は下の下、運動は超苦手、部活は帰宅部、交友関係は狭くて浅い、彼氏がアルちゃん、趣味は……」
妹同様、3階と4階の間にある死角に平均よりかなり小さい体をさらに小さくしたアンがメモ帳とペンを持ってこちらを窺っている。
「何してんだよ、アン。そんな堂々とストーキングしなくても……」
だけど隠れきってないんだよな、妹と一緒でさ。
「あ、アルちゃん、ちょっ!わ、私を見ないでぇ~」
いや、そっちが見てたんじゃん。
「あ、アン会長、こんにちは。今日は何かご用ですか?」
タマがアンに普通に挨拶をする。
「あ、こちらこそ……って、か、鏑木玉三郎……さん!お、覚えてなさいっ!!」
いや、だから何もされてないのに何故捨て台詞?
アンが脱兎の如く階段を1段飛ばしで駆け上がっていく。
えっと、確かアンって運動神経あんまり良くなかったよな?
あ、階段を登りきったとこで足を軽く挫いたのかケンケンに切り替えてる。
あんまり大事に至らないと良いけど……。
「私、アン会長の事、ちゃんと覚えてるのに……」
タマはタマで何だか残念そうな表情でそう呟く。やはり捨て台詞だって気付いてない。
ちなみに4階は1年生の教室しかないんだけど、アンは一体何をしに行ったのやら。
シュポッ!シュポッ!
ん?ポケットに入れてある俺のスマホから通知音が2回。
《アル!今晩、アルの部屋に行っても良い?あと、教室にお姉がいないんだけど、どこにいるかわかる?》
《アルちゃん!今晩だけど、お部屋に行っても良いかしら?あと、教室にチコちゃんがいないんだけど、どこにいるかわかる?》
俺はこの2人からのメッセージを開く。
こういう時はしっかり既読だけつけて無視を決め込むのが一番だ。
「ふふっ、アルくん、じゃ、一緒に教室に戻りましょうか?」
タマは何故か含みのある、意味ありげな笑みを浮かべる。
「いや、それ以前にタマ、B組、俺、C組。一緒には帰れない」
「ふふっ、それじゃ、途中まで一緒に戻りましょう!」
そうやってタマは先に歩き出すんだけど……。
俺は知っている。何だか裏のありそうなミステリアスメガネ女子、鏑木玉三郎。
こいつはただ単にミステリアスを気取っているだけで、別に秘密も何も無いって事を!
そう、これは俺、”アル”こと『山田有真人』と俺を取り巻く者達の物語。
ここまで読んでくれてありがとうございます!
※この小説は1話辺り2000~5000文字、平均3000文字程度で連載していく予定です。
※直接的な性描写はありませんが、それを想起させるような描写があり、R15とさせていただきます。
※登場人物紹介は随所に挟んでいく予定です。
改めまして、『小糸味醂』と申します。
前作『僕とメイドと従姉妹とメイドと~Bahasa bunga "jepun"~』のフィナーレから約1ヶ月半。
その間、今作を70話程書き溜めしてまいりました。
初回は本日から明日にかけて、15話程投稿する予定です。
それでは今回もよろしくお付き合いください♪