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テトの冒険  作者: ともピアノ
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剣士と魔導師

朝日がまだ登らない、静かな明け方の中。


牛舎の中からそわそわと、さする音がする。


時折、会話や泣き声が聞こえる。


「オジィー、はあっはあっはあっ、どう」


「そうだな、・・・もう少しかな」


テトはナミーのお腹をさすりながオジィに聞いていた。


それから、一時間程過ぎた頃。


「オジィー、そろそろだねー」


「んー、・・・始まるな、テト、水を入れ換えて来てく


れ」


「産まれるの、オジィ、バア」


それから、一時間程過ぎた頃。


「オジィーーーー、体が出て来た、・・・どこー」


「頭だ、そうっと、そうっと、触るんだ」


「ナミー・・・がんばれよー」


「テト、そうっと、そうっと、触るんだ、産まれるぞ、半


分は出てるぞ」


「ナミーがんばれよー、がんばれよー」


「テトーーー」


「オジィーーー、バアーー」


「産まれるぞーーー、後は前足だけだーーー」


「産まれる、産まれる、産まれるぞーーーーー、オジィ、


バア」


ナミーの体から産み落とされた子牛は、ドロっとした液体


まみれだった。


「産まれたーーー、産まれたーーー、産まれたーーーー」


「うーまれーたーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ー」


テトは両腕を曲げて脇を締めて、渾身の叫びをした。


「テト、産まれたーーー、良くやったぞー、なぁー、バ


ア」


「そうだね、テトは良くやったね」


「テトーー、子牛の体を拭いてドロドロしたのを取るぞ


ー、急げよ、ここが一番大事だぞ」


「オジィ、分かった、やる」


三人で子牛の体を濡れた布で何度も気をつけながら拭いて


いた。


「ヨシっ、ドロドロを拭き取ったぞ、・・・テト、後は手


を出してたらいけないなからな」


「あっ、そうか、さっき話してたね、子牛が産まれた後に


立ち上がるのを邪魔したらいけないんだよねー」


「うん、分かった、見守るよ」


ナミー、おめでとう、おめでとう、がんばった。


ナミー、おめでとう、おめでとう、がんばった。


ナミーーーナミーーー、良くやったよーーー。


「テトーーー、立つぞー」


「うん、身守るよ」


立て、立て、立て、立て。


「テトーーー、立つぞー」


立て、立て、立て、立て。


子牛が、二、三度体を揺すりながら身を起こそうするが、


なかなか、身を起こせず失敗する。


「テトーーー、立つぞー」


立て、立て、立て、立て。


子牛が、十回目に身を揺すりながら身を起こすとこまで出


来た。


「テトーーー、立つぞー」


よしっ、よしっ、立て、立て、立て。


子牛が、前足をゆっくり動かしながら立とうとするが立て


ない。


「テトーーー、今度は立つぞー」


よしっ、よしっ、立て、立て、立て。


子牛が、前足と後ろ足の両方に力を入れて、立ったが、直


ぐに崩れた。


「テトーーー、今度こそ立つぞー」


よしっ、よしっ、立った、立った。


あー、おしい、あー、おしい。


がんばれ、がんばれ、がんばれ。


子牛は身を揺すりながら身を起こし、前足と後ろ足に力を


入れて、一気に立ったが、崩れそうになる。


崩れそうになりながら、何度も何度も体を動かして。


立った。


「たーったーーー、たったーーーーーーーーーーー」


テトは、オジィとバアと抱き合って喜んだ。


「テトーーーーーー、バアーーーーーー、やったなぁーー


ー」


「そうだねー、頑張ったね、皆んなで」


そして、朝日が昇って、一時間が経った頃。


ヒナがテトの家にやって来た。


「テトーーー産まれた、子牛・・・んー名前は」


「産まれた、産まれたよ、産まれたんだーーーんー名前」


家から出て来たテトに、ヒナが抱きついた。


「な・ま・えーーー、・・・名前か、まだだーーー」


「まだか、・・・子牛見せて、子牛」


「んー、でも、・・・そうっとだよ、そうっとだよ、約束


して、ナミーが疲れてるだろうし」


二人で、牧場の牛舎に向かった。


色々な泣き声が聞こえる。


ナミーは、眠ってるようだ。


ナミー以外の動物たちは元気に餌をたべている。


オジィとバアは、元気に餌をあげたり、掃除したりしてい


た。


名前か、名前か、・・・ヒナに言われるまで、思いもしな


かった。


んー、んー、どんな名前にしようか。


あーーー、おす、めす、・・・どっちだろう。


えーっと、えーっと、思い浮かばない。


やっぱり疲れてるな、頭が働かない。


ふらふらする。ふらふらだ。


「テトーーーーー」


「何、ヒナ、どっ、どうしたーー」


「テト、ぶつぶつ、ぶつぶつ、ぶつぶつ、何、考えてる


の」


「名前だよーーー、子牛の名前、思い着かないよー、くら


くらだ」


テトは、ふらふらして、倒れそうになる。


ヒナに、もたれ掛かった。


「テト、名前はもういいから、子牛を見せて」


「うん、子牛を見よう」


「んーーー、可愛いねーーー可愛いねーーー可愛いねーー


ー」


「そう、そう、可愛いんだー、可愛いんだー、もう立てる


んだよ、すごいんだ」


子牛が、ふさふさの寝所に静かに寝息をしながら寝てい


る。


「立てるのーーー、立てるんだ・・・寝てるね」


「そう、寝てる、寝てるよ・・・疲れてるんだ」


「ナミーが、すごいすごいすごい、頑張ったんだ、そし


て、子牛も、すごいすごいすごい、頑張ったんだ、ヒナに


見せたかったよー」


「テト、見たかったよーーーー、・・・見たかったよーー


ーー、残念」


「テトーーー、・・・テトっ」


テトはヒナに持たれながら、静かに寝息をして眠ってい


た。










































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