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テトの冒険  作者: ともピアノ
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剣士と魔導師

ヒナの家は、テトの家の隣にあるが、微妙な距離である。


そして、テトの家の五倍くらいある。


高さが十メートルの頑丈な岩壁に覆われている。


二キロくらいあって、家を取り囲んでいる。


回廊もあり、入り口まで続いている。


花壇も、幾つもあって、庭師が手入れをしている。


池もあって、高そうな鯉が沢山泳いでいる。


土地も広くて乗馬で駆けっこが出来る。


家は大理石で作られている。


ヒナはこの国の王女だった。


「セバス、ちょっと、テトの家行って良いかな」


「ダメです。夜は外には出かけては行けません」


ヒナが、ひつじのセバスにテトの家に行きたいと頼んでい


る。


「セバス、ねっ、ちょっとだけ、ちょっとだけ」


「ヒナ様、今日はどうしたんですか、いつもは、寝てるの


に」


「セバス、セバス、産まれるんだよ、産まれる」


「う・ま・れ・る・・・」


「そう、そう、そう、産まれる、産まれる」


ヒナはひつじの袖を掴んで頼み込む


「何が、う・ま・れ・るー、んー」


「子牛が、子牛が、産まれるだよ、だから、さー、テトの


家へ、ねっ、ねっ、ね〜」


「子牛、子牛ーーーーーーーーー」


「そう、そう、だから、・・・ねっ、一緒に、一緒に行こ


う、そうそう、一緒なら良いでしょ」


「・・・・・・・・分かりました、でも、ちょっとだけで


すよー、約束して下さいねー」


セバスは腕を組んで応えた。


テトの家では、バアとテトが、子牛の様子を気にしてい


た。


「テトー、大丈夫か、無理しちゃ駄目だよ」


「はあはあっ、はあはあっ、・・・はあはあっ、はあはあ


っ」


「んー、はあはあっ、はあはあっ、大丈夫だよ」


「ほらっ、ストーブにあたりな、身体冷えただろう」


「僕、やっぱり見に行って来る」


「そうかい、無理するなよ、ほれっ、コート持って行き


な」


「うん、ありがとう」


バアには悪いけど、ナミーが気になってしょうがないん


だ。


今もナミーは痛みと喜びと戦っているんだ。


僕は、嬉しいよ、あのウモウー、ウモウーと泣いていたナ


ミーが。


よく、フンの掃除しているのを何度も邪魔して、笑ってる


のか〜なんて、思わせて。


餌をやっても、やっても、やっても、止まらない食欲なナ


ミーが。


頑張ってるんだ。頑張ってるんだ。


ナミー、ナミー、ナミー、ナミーーーーーーー


がんばれ、がんばれ、がんばれ、がんばれーーーーーー


テトはこぶしを振り上げて、上段上段上段上段上段上段と


剣を持つ仕草で素振りをした。


「テトー、テトーーーーーーーーーーー」


「ヒナー、ヒナーーーーーーーーーーー」


テトがヒナの声に振り返る。


「ヒナー、どうしたんだ」


「テト様、今晩わ」


「セバスジィー、今晩わ」


テトが、頭を下げて二人を見る。


「産まれた、子牛」


「分からない、さっき見た時は、まだまだのようだった」


「そう、少しだけ見たいな」


「うん、行こうヒナ、はあっはあっはあっ」


「テトー大丈夫ーーー」


「テト様、肩を」


セバスがテトに肩をかす。三人は牧場の牛舎に向かった。


「はあっはあっはあっ、はあっはあっはあっ」


「テト、・・・無理するなよ」


「オジィー、ナミーは、どう、」


「まだまだだな、・・・ヒナお嬢様、どうして、こんな夜


に」


「テトから聞いたの、ナミーの子牛が産まれるって」


「そうですか、ご苦労様でございます」


「はあっはあっはあっ、はあっはあっはあっ」


「テト、こっち来てナミーをさすってくれ」


ヒナとセバスは、ナミーの所から少し離れて見ている。


「がんばれ、ナミー、がんばれ、ナミー」


少しだけ、呼吸が、落ち着いて来た。


ナミーがんばれよー、ナミーがんばれよー。


どうだ、お腹苦しいか、ここはどうだー。


テトが、さすってるのに応えるかの様にナミーは、軽く後


ろ足を蹴る仕草をする。


ナミー、そうか、分かるか、分かるか、無理するなよ。


大丈夫、大丈夫、後少し後少しだ。


聞こえるかー、ナミー、いつもなら、皆んな寝てるのに


マナ、トミ、マカ、サハに・・・たちがナミーを泣きなが


ら応援しているぞ。


がんばれ、がんばれ、がんばれ、がんばれ。


テトは、優しくナミーのお腹あたりをさすっている。


ナミー覚えてるか、僕が、何度もナミーをマナとか


トミとかマカとか間違えていたのを。


間違えるたんびにナミーは、首を横に振ったり、耳を


動かしたり、前足を軽く上げたり、その大きな眼をピクピ


クする動作したりと。


本当に分かってくれてるんだと感じたよ。


ウモウー、ウモウー


そうか、そうか、無理するなよ。


ウモウー、ウッ


もう泣くな、大丈夫、大丈夫、テトは側にいるよ


オジィにバアに、ヒナとセバスジィも皆んなナミーの事を


思っているよ。


「テト、変わろう、こっちで休め」


テトは二時間も、ヒナをさすっていた。


「うん、そうする」


「ヒナ、セバスジィ、ありがとう、ナミーも喜んでる、疲


れた、ふうー」


「ヒナお嬢様、もう、後は二人に任して帰りましょう」


「テト、オジィ、後は任せる、明日また来るね」


「オジィー、どう」


「そうだな、まだまだ掛かりそうだ、んー、今日は徹夜だ


な」


「うん、・・・バアと交換する」


テトは無念な思いで家へ向かった。


ナミー、がんばれ、がんばれ、がんばれ、がんばれ。















































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