剣士と魔導師
朝日の登る、町の東側の高台付近にテトの家はある。
ブロック建てで壁をしっくいを塗った二階建てである。
一階は部屋が二つに応接前、風呂場にトイレ、炊事場はと
あり、二階には部屋が三つと言う感じである。
裏には倉庫屋と牧場に続く道沿いに五メートル四方の畑
が、四つほどある。
牧場で牛が二十頭、馬が二頭養っている。
その牧場で、テトは手伝いをしている。
マナ、トミ、マカ、サハは、今日は元気に食べてるな
いっぱい食べろよ。
テトは声かけしながら餌をあげている。
モリ、ちょっとフンを取るよ。
テトはフンの掃除をしている。
モナは太り過ぎでないか。
マッチ、クッチは運動が必要だな
テトは体をさすりながら声かけしている。
そうやってテトは、上着が、ドロドロになりながら、一生
懸命に労に励んでいる。
「テトー、皆んなの名前や顔を覚えたんだな〜」
「そんなの分かるようにオジィー、皆んな鼻の形や口の形
耳に眼も違うもん、もう皆んなカワイイーーー」
「オジィー、オジィー、ナミーの様子が少しおかしいよ
いつもなら、元気に、ウモウーーーと早くフンを処理しろ
とうるさいのに、今日は静かだ」
「どうだ、見せてみろ」
・・・こりゃ、私とした事が、・・・そうか
「大変だーーー、テトー」
「バアを呼んでくれー裏の畑にいるから」
「あららら、こりゃ、今夜辺り、産まれるね〜」
「バアー、やはり産まれるか」
「テト、産まれるぞー、今夜だ」
「オジィ、バア、産まれるんだね、今夜」
「テトーーー、今日は三人で交代してナミーの様子を見よう」
産まれるだ、産まれる、・・・ナミー、がんばれ。
まだ、子牛が産まれるのは見た事ないが・・・何をどうす
ればいいか、・・・不安だけど一生懸命やるぞー。
がんばれナミー、がんばれナミー、僕がついている。
僕がついてるんだから。オジィに、バアだっているんだか
ら。
安心さ。・・・早く早く産まれないかな〜。
あっそうだ、名前ー。なんにしょう。・・・
明日でいいか。ナミーがんばれ、がんばれ、がんばれよー。
テトは家の庭で剣の練習をしている。
エイっー、ヤー、トウー、エイっー、ヤー、トウー
突き突きに右払い左払い、上段上段、下段下段と剣を振っ
ている。
今日は気合が入るな。産まれる、産まれる。
「テトー、ぶつぶつ剣振って、ダメじゃん」
ヒナがスマホでTikTokを操作してテトの練習風景を動画で
撮りながらしゃべっている。
産まれる、シャッ、産まれる、シュッ。
産まれる、産まれる、産まれる。
ダメだ、剣に集中できない。
ヒナに話そうか。ヒナは他人だし。これは、僕んちの話だ
し。
「テトー、ぶつぶつ、ぶつぶつ、練習しないのーーー」
「テトー、テトー、テトー」
今までは、危ないから剣の練習中は近づかないのに
テトの顔が見える所まで寄って来た。
産まれる、産まれる、産まれる、産まれる。
「はぁって、何、ヒナ、練習中は危ないよー」
「だぁって、テトが、ぶつぶつ、ぶつぶつして集中してな
いから」
「ほらっ、見てよーーー」とヒナはスマホをテトに渡し
た。
動画には、剣を振るかと思えば、ぶつぶつ、剣をかまえ
て、ぶつぶつ、腕を組んで、ぶつぶつ、と剣の練習してい
るとは言えない映像が映っていた。
「えーーーーーー、何、これっ、俺、何、これっ」
「何、これっ、じゃないよテトどうしたの」
ヒナに、言う・・・、ヒナに言わない・・・
「ヒナっ・・・」
「何、テト、んー」
ヒナ、怒ってる。ヒナ、怒ってる。
「ヒナ・・・怒ってるか」
「怒ってないよん、んー」
ヒナに言おう、ヒナは大事な友達だ。
「ヒナ、実は今夜、産まれるんだ」
「う・ま・れ・るー、・・・何がー」
「産まれるんだよ、子牛が、今夜」
「子牛ーーーーーーーーーーーーー」
ヒナに子牛が産まれると言ってもピンと来ないか。
産まれる、産まれるんだけどな。子牛だよ、子牛だのに。
「子牛かー、・・・今夜、テト、無理だね、私の家はすご
ーく厳しいもん」
やっぱりダメじゃん。ヒナんち厳しいの知ってるのに。
子牛にも、興味なさそうだし。意味ないじゃんか。
言ってそんしたな。
産まれるのに、産まれるのに、産まれるのに。
子牛だよー、子牛だよー、子牛だよー。
「テト、ぶつぶつ、ぶつぶつしてるよ」
「えっ、あーぶつぶつな、だって、ヒナ、子牛に興味無い
見たい出し、子牛は、もういいか」
「そんな事ない、テトの意地悪・・・明日、産まれたら
教えて、すぐ見に行くから」
「分かった、ヨシっ、練習する」
エイっ、ヤー、産まれる、産まれる。
エイっ、ヤー、産まれる、産まれる。
トウ、トウ、産まれる、産まれる。
上段上段上段上段上段上段上段上段上段
産まれる、産まれる、産まれる。
上段上段上段上段上段上段上段上段上段
産まれる、産まれる、産まれる。
「テトーーーーーーーーーー」
「テトーーーーーーーーーー」