第四話 「だってゴリラに激似だから」
※この小説はほぼ会話文にて構成されております。
登場人物
エイジ / 図書委員
カナ / 風紀委員
「桜の花が舞っている……もう、そろそろ散ってしまう時期になってしまったんですね」
サッサッサッ
「やはりあたしは桜が散っていくより、満開で咲いている方が好きですね。散っていく姿は、どこか悲しいですから」
サッサッサッ
「……で? なにをやっているんですか先輩。ほうきとチリトリ持って」
「なんだよ。野球やっているように見えるか?」
「あなたならやりかねないのが怖いところですが――まあ、今回は掃除をしているように見えますね」
「そう。掃除だ。俺はこれまでとは心機一転。真面目に心を入れ替えることにしたのだ」
「心機一転とか言うわりに、やっていることがごく普通の掃除とは……一年生の頃がどんな感じだったのか想像するのが怖いです」
「黙らっしゃい。それに、ここの掃除をすれば、前回桜の木の下に仕掛けた罠事件の反省文を書かなくていいっていうからさ」
「完璧にそれが目的じゃないですか」
「まぁな。あの後、なんやかんやで二枚だった反省文が四十八枚まで増加してしまったからな。さすがにやってられん」
「ある意味すごいです先輩……でも、いいんですか?」
「なにが?」
「ここの掃除って多分終わりませんよ」
「はあ?」
「だって、ここの掃除って桜並木の掃除でしょ。見てください」
桜並木(桜の木大群) → 大量に舞う桜の花びら → 掃除する → 掃除している最中も舞い散る花弁 → 掃除終わった所に積る花弁 → 掃除 → orz
「なんじゃこりゃあああああああ!?」
「まあ、これを言いつけた人は皮肉のつもりだったのでしょうね。もしくは『そこで哀れな豚のように春が終わるまで掃除していろという意味だった説』もありますが」
「ちくしょおおおおお。なんか反省文から救ってくれるわりには、ニタニタ顔だったのが気になってはいたが……」
「その時点で気付きましょうよ。どの先生なんですか?」
「姫崎」
「あー、あの化学担当の。でも、あの先生美人じゃないですか。うちのクラスにも何人かいますよ。姫崎先生狙っている人」
「興味なし。俺カナ好きだし」
「えっ、先輩。田村好きなんですか?」
「違ええええええええよっ!? てか、田村って一年の男性体育教官じゃねぇか! 知ってるんだぞ。一年生の間で『ウッホ』って呼ばれてるの!」
「だってゴリラに激似だから」
「それを俺の好きなやつに当てはめるな。てか、お前は出会って四日間。俺から何を聞いていたんだよ」
「え………………戯言?」
「俺の告白は戯言ですか!?」
「はいはい。分かりましたから、さっさと掃除なり反省文なり済ませましょうよ。あたしも手伝いますんで」
「え、マジ? 手伝ってくれるの?」
「ま、今日はちょっと嬉しいことがあったんで特別ですかね」
「おやつがプリンだったのか?」
「真面目な顔して何を言っているんですか? ブッとばしますよ。ふざけたことばかり言ってると、あたしは即帰りますからね」
「ああ。ありがとう。カナ……結婚しよう」
「嫌です」
「ああああああ!? カナが競歩選手もビックリの速度で帰っていく。待ってえ待ってくださいいいいい! 置いてかないでー!!」
「……まったく」
桜が舞ってもふたりは仲良し。